紙の本
卒業は、新たな始まり
2019/07/04 21:56
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:たあまる - この投稿者のレビュー一覧を見る
福岡伸一『新版 動的平衡』によると、生命とは物質の流れの中の淀みのようなものだそうです。
細胞の内部の物質のレベルで考えると、昨日の自分と今日の自分は少し変化している。
今日の自分と明日の自分は、少し入れ替わっている。
でも、自分という存在はずっとつながっている。
その存在を少しでも高めるために人は努力する。
分子レベルでは常に入れ替わりながら、自分は続いていく。
それが生命。
それが、あなた。
一瞬ごとに古いものを捨て去り、一瞬ごとに新しいものを取り入れていく生命にも、いくつかの節目があります。
卒業も、そのひとつ。
卒業は、ひとつの終わりではありません。
卒業は、新たな始まりです。
新しく、さらに新しくなっていこう。
紙の本
生命とは
2017/10/31 11:08
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ぴー - この投稿者のレビュー一覧を見る
生命とは何か、改めて考えさせられます。さまざまな角度から生命を分析しているのがおもしろいと思いました。
紙の本
目からうろこが落ちるとはまさにこのこと
2022/02/09 00:49
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:とりこま - この投稿者のレビュー一覧を見る
動的平衡という概念について、様々な角度から例をもって説明され、目からうろこが落ちた。私達人間を含めて、自然界というのは絶妙なバランスで成り立っていると感じさせられる。
人間の体内にちくわを抱え込んでいるという例えはとても面白いなと感じた。
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ベストセラー『生物と無生物のあいだ』(2007年)を始めとする一般向けの科学書等の著者・翻訳家であり、雑誌や新聞の文化・読書面にも頻繁に登場する、分子生物学者の福岡ハカセが、自ら主著という2009年発表の作品を新書化したもの。新書化に伴い、生命科学研究の最前線の状況などについて大幅に加筆したほか、新章が加えられている。
本書の題名にして、ハカセが「私自身のキーワード」という「動的平衡」の表すものについては、言葉を変えて、繰り返し説明されているが、端的に言うと、「秩序あるものは必ず、秩序が乱れる方向に動く。宇宙の大原則、エントロピー増大の法則である。この世界において、もっとも秩序あるものは生命体だ。生命体にもエントロピー増大の法則が容赦なく襲いかかり、常に、酸化、変性、老廃物が発生する。これを絶え間なく排除しなければ、新しい秩序を作り出すことができない。そのために絶えず、自らを分解しつつ、同時に再構築するという危ういバランスと流れが必要なのだ。これが生きていること、つまり動的平衡である」ということである。
また、分子生物学の見地から、以下のような多数の興味深い示唆がある。
◆歳をとると1年が早く過ぎるのは、分母が大きくなるからではなく、自分の生命の回転速度(代謝回転速度)が遅くなるから。
◆人類は進化の過程で、生き残るために有利なように、ランダムなものの中に法則やパターンを見出す能力を高めてきた。
◆我々が摂取したタンパク質は、元の情報が自分自身の情報と衝突しないように、アミノ酸まで解体されて吸収される。よって、コラーゲンを食物として摂取しても意味はない。
◆生命は単なる部品の集合体ではなく、その成立には時間が関わっており、それが柔らかさ、可変性、バランスを保つ機能のような機械とは全く異なるダイナミズムを生み出す。
◆生命のプロセスに関わる時間を逆戻りさせることは不可能。よって、遺伝子操作や生命操作を用いた生命科学研究には懐疑的。
◆生命現象を支えるsustainableな仕組みは総合的なもの。よって、エイジングと共存するには、sustainabilityを阻むような人為的因子・ストレスを避ける、つまり「普通」でいることが一番。
そして最後に、「生命」について、「生命が「流れ」であり、私たちの身体がその「流れの淀み」であるなら、環境は生命を取り巻いているのではない。生命は環境の一部、あるいは環境そのものである」と述べているが、これはある意味、自らの死生観にも影響を与えるようなものである。
自ら主著という通り、福岡ハカセの主張・問題意識が網羅的かつコンパクトにまとめられた良書である。
(2017年6月了)
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面白い。著者の本は、何冊かよみました。
また、著者の本で有名な本だけど読めてない本
もあります。どれもなかなか興味のある内容であったり
面白い内容でしたが。今回の本はとても興味を引く
内容でした。
動的平衡の本質というか、その内容がわかりやすく
かかれてあると思います。この内容がわかれば
健康。ダイエット。長生き。病気などに対応する
本質がわかるような気がします。
また、その考え方が仏教の本質と相いれれてしまう
ところも多いと思ってしまいます。
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生物学は大好きだったが、ここまでワクワクする本には久しぶりに出会った。旧版が出た時に話題にはなっていたようだが、新版が出たばかりということで手に取ってみた。数々の興味をそそるエピソードを交えつつ、生命の本質に迫っている。面白い。本当に面白い本。
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もし衣食住事足りたら,金をかけるべきは食と教育だ,というのが信条だが,なぜ食が大事なのかを動的平衡という考え方は端的に説明している.新版で追加された動的平衡の数理モデルは,物理モデルとしては納得できるが,ベルクソンの円弧が回転する必然性が判らない(のでさらに面白い).今後の発展を心待ちにする.
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福岡伸一の科学エッセイは知的好奇心に対する刺激と、文学的な面白さ両方がある。他にこういうものが書ける人を他に知らない。
47
つまり、歳をとると1年が早く過ぎるのは「分母が大きくなるから」ではない。実際の時間の経過に、自分の生命の回転速度がついていけていない。そういうことなのである。
80
合成と分解との動的な平衡状態が「生きている」と言うことであり、生命とはそのバランスの上に成り立つ「効果」である
82
コラーゲンをいくら摂っても、それは体内のコラーゲンを補給することにはなりえないのである。食べ物として摂取したタンパク質が、身体のどこかに届けられ、そこで不足するタンパク質を補う、という考え方はあまりに素人的な生命観である。
90
アミノ酸は20種あるが、人においてはそのうち9種が必須アミノ酸、11種が非・必須アミノ酸である。
必須アミノ酸とは、動物が自分の体内では製造できないのは、非・必須アミノ酸は体内で製造できるものである。
113
スローフードは太りにくい
212
細菌には抗生物質
ウイルスにはワクチン
※伝達性スポンジ脳症(狂牛病)はどちらでもない何かが原因の可能性があり、未だ解明されていない。
238
(もともとミトコンドリアは)私たちの細胞に寄生した別の生命体だったのである。ミトコンドリアの体内にDNAが確認された。DNAを持っていたということは、それが独立した生物だったことを意味するのである。
248
ミトコンドリア・イブ
全ての人類が、アフリカにいた一人の女性のミトコンドリアDNAを継承している
274
人間の子供は七歳くらいまでに「他人にも自分と同じ心がある。しかし他人はそこに自分とは違う考え方を持っている」ということが理解できるようになる。
276
エントロピー増大の法則。エントロピーとは「乱雑さ」の尺度で、錆びる、乾く、壊れる、失われる、散らばることと同義語と考えてよい。
生命はそのことをあらかじめ織り込み、一つの準備をした。自らを壊し、そして再構築するという自転車操業的なあり方、「動的平衡」である。
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「生命はなぜそこに宿るのか」
本書は、2009年に刊行された「動的平衡」の新書版で、その後の急速に
進展した生命科学研究の最前線の状況を加筆されたものです。
「動的平衡」とは、合成と分解など相矛盾する逆反応が絶えず繰り返さ
れることによって、秩序が維持され、更新されている状況を指す生物学用
語です。
すなわち、「生命は変わらないために変わり続けている」ということ。
37兆個もの細胞から成り立つ人間の生命が、このダイナミックなしくみ
をベースに成り立っている。
「人間は考える「管」である」
「私たちが見ている「事実」は脳によって「加工済み」」
「歳をとると、一年が早く過ぎるのは、時間の経過に、生体時計の回転
速度が追いついていけないから」・・・
身近なテーマから「生命とは何か」という本質的な命題を論じていく、
知的好奇心が揺り動かされる書です。
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とても読みやすく面白い。
特に高校生で生物の授業を受けている最中に読んだらすごく楽しめると思う。
ただ、タイトルがおカタいせいで、手に取られづらいんじゃないだろうか…
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生物と無生物のあいだをよんでから福岡さんの二冊目。わかりやすくかつ専門的で、どの章も面白く、示されていたことは考え方として色々な分野に応用できると思った。
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‹内容紹介より›
「人間は考える『管』である」「私たちが見ている『事実』は脳によって『加工済み』」「歳を取ると一年が早く過ぎるのは、実際の時間の経過に、自分の生命の回転速度がついていけないから」などの身近なテーマから「生命とは何か」という本質的な命題を論じていく。発表当時、各界から絶賛されベストセラーになった話題作に、最新の知見に基づいて大幅加筆。さらに、画期的な論考を新章として書き下ろし、「命の不思議」の新たな深みに読者を誘う。
――――
人は(あるいは動物は)なぜ、他の動植物を食べるのか。
それはエネルギー(炭水化物≒ブドウ糖)を摂取するだけでなく、たんぱく質(アミノ酸)を摂取することが必要だからである。
なぜなら、常に生命は「分解」と「合成」を繰り返す「動的平衡」状態にあり、「合成」を行うためにはその材料であるたんぱく質を大量に摂取することが不可欠だからだ。
さらに言えば、「消化」というはたらきは単純に「効率的に栄養素を吸収」するためだけではなく、摂取した生物が保持していたDNAの情報を分解し、自身の生体情報と反目しあわないようにするという意義がある(アレルギーやアトピーなどの反応は摂取したものの生体情報と自身の生態情報がぶつかり合う反応のことである)。
他にも、「人間は『管』であり、消化管も「体の外」である」という主張や、先に述べた通り摂取したたんぱく質はバラバラに分解されて吸収されるため、「コラーゲン添加の食物を摂取しても、体内のコラーゲンを増加させることにはつながらない」などの主張は大変興味深い。
さらに、なぜ人間は太るのか、といった身近な問いにもわかりやすく解説を加えている。
人を「それぞれのパーツの集合体」としてとらえるのではなく、常に更新され続ける分子がゆるく集合しているもの、としてとらえる著者の生命観が論理的に紹介されており、とても面白い。
p.260-「動的平衡」とは何か
生体を構成している分子は、すべて高速で分解され、食物として摂取した分子と置き換えられている。身体のあらゆる組織や細胞の中身はこうして常に作り変えられ、更新され続けているのである。▽だから、私たちの進退は分子的な実体としては、数か月前の自分とはまったく別物になっている。分子は環境からやってきて、いっとき淀みとしての私たちを作り出し、次の瞬間にはまた環境へと解き放たれていく。▽つまり、環境は私たちの身体の中を通り抜けている。いや「通り抜ける」という表現も正確ではない。なぜなら、そこには分子が「通り抜ける」べき容れ物があったわけではなく、ここで容れ物と読んでいる私たちの身体自体も「通り過ぎつつある」分子が、一時的に形作っているにすぎないからである。▽つまり、そこにあるのは、流れそのものでしかない。その流れの中で、私たちの身体は変わりつつ、かろうじて一定の状態を保っている。その流れ自体が「生きている」ということなのである。…(中略)…私はこの概念を…(中略)…生命の均衡の重要性をより強調するため「動的平衡」と訳したい。…(中略)…▽ここで私たちは改めて「生命とは何か?」という問いに答えることができる。「生命とは動的平衡にあるシステムである」という回答である。▽そして、ここにはもう一つの重要な啓示がある。それは可変的でサスティナブルを特徴とする生命というシステムは、その物質的構造基盤、つまり構成分子そのものに依存しているのではなく、その流れがもたらす「効果」であるということだ。生命現象とは構造ではなく「効果」なのである。…(中略)…▽一輪車にのってバランスを保つときのように、むしろ小刻みに動いているからこそ、平衡を維持できるのだ。サスティナブルは、動きながら常に分解と再生を繰り返し、自分を作り替えている。それゆえに環境の変化に適応でき、また自分の傷をいやすことができる。▽このように考えると、サスティナブルであることとは、何かを物質的・制度的に保存したり、死守したりすることではないのがおのずと知れる。▽サスティナブルなものは、一見、普遍のように見えて、実は常に動きながら平衡を保ち、かつわずかながら変化し続けている。その軌跡と運動のあり方を、ずっと後になって「進化」と呼べることに、私たちは気づくのだ。
p.288
私は、『生物と無生物のあいだ』などにおいて、生命とは絶えずその中の物質やエネルギーや情報が通り抜けていく「流れ」だと言ってきた。通り抜けるという表現も実は正確ではない。なぜなら生命とは、通り抜けるものの「容れ物」ではなく、容れ物自体が流れゆく動的な存在だからである。多摩川を多摩川と呼ぶのは、多摩川が岸辺でもなく土手でもなく川底でもなく、あるいは地図上の青い線でもなく、絶えず流れゆく水の流れそのものだからである。▽生命の単位である細胞もまた、絶えず合成と分解、酸化と還元、結合と切断、生成と消失を繰り返す「流れ」そのものである。
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はい。なかなか難しい内容でした。
そういう事ね。と思ったのは、年齢を重ねるたびに時間経過が早く感じる理由。新陳代謝が遅くなっていき、体内時計もその分遅くなるから・・・なるほどなるほど。
タイトルはかっこいいですが、手にとって購入の決心まで時間かかりそう。素人的には、もう少しなじみあるタイトル(副題?)があれば良かったかなと。
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化学の本というよりは世の中のバイアスを見つめ直す新たな視点となる本
以下、抜粋メモ
人間は考える「管」である
たびたび登場する「ちくわ」の見立てが秀逸
事実は脳によって加工済み
記憶は想起した瞬間に作り出される何者か
鮮明な若い記憶は愛おしく繰り返し改変
記憶物質はなく情報伝達物質がある
年取って一年が早いのは
生命回転速度がついていかないから
GI値の低いスローな食べ物
デカルト
生命現象を機械に例えた
動的平衡
可変的なサステイナブルシステム
分解しつつ再構築する危ういバランス
絶え間ない
合成と分解、酸化と還元、結合と切断
有機的組織論
変わらず存在するために変わり続ける
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素晴らしい。器官は機械ではない。これに気づけなかったら、ダイエット用のドリンク、タブレットを一生買い続けていたと思う。