紙の本
吉本ばななはいつまでもばななです
2017/11/17 07:21
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投稿者:夏の雨 - この投稿者のレビュー一覧を見る
吉本ばななが『キッチン』で鮮烈なデビューを飾ったのが1987年。それから30年の時間が流れ、吉本ばななもこの作品のあ「あとがき」に記されたように「いつかはこの世を去っていくのだと、わかる年齢になってきた」が、作品に流れるものはけっしてそんなことはない。
いつまでも吉本ばななであり、どうしてこんなにもやさしい文章が書けるのかと感じてしまう吉本ばななに変わりはない。
これも「あとがき」にあるのだが、「決して驕ることなくこつこつと歩いてきた道は、振り返ればお花畑になっていた」、そんな作品を吉本ばななは30年かけて作ってきたのだ。
この作品はタイトルに「第一話ミミとこだち」とあるように、長い物語の始まりであるのだろうが、「海と山に囲まれた孤島のような」吹上町で育った二卵性の双子ミミとこだちは、両親の交通事故をきっかけにして18歳の時にこの町を出た。
父が亡くなり母はその血のせいで長い眠りについたままで、その母を助けると妹のこだちは行方がわからなくなる。
そんなこだちを探し出すためにミミは吹上町に戻ってくるのだが、そこで彼女が経験することはまさに「奇譚」であり「ホラー」で「ファンタジー」でもある。
豊富な世界の割には物語は淡々と進んでいく。
冒険小説にでもなりうるほどの展開だが、なんともいえない淡泊さはそれこそ吉本ばななの世界だといえるかもしれない。
第一話は物語の複雑さを裏切るようにあっさりと終わりを迎えるが、「命の水のようにしみこんで魔法」がやってくる今後の展開を楽しみにしている。
紙の本
不思議が残る土地
2018/02/10 19:36
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投稿者:咲耶子 - この投稿者のレビュー一覧を見る
姿を消した双子の妹の帰りを信じて待つ姉の不安と希望で話が進んで行くファンタジー。
「哲学ホラー」ってあるけど、そんなに怖くない。っていうか全然怖くない。
異世界・異次元とつながってた不思議な町ですが、言い伝えがたくさん残ってて、いまでも時々不思議が起こる、どっかにありそうな土地のお話しって感じ。
山も谷も特にはなく、姉のぼやきで終始してるけど、そこはばななさん、いろいろと考えさせられる要素を含んでます。
あ、哲学だ!
紙の本
ホラー要素ゼロ。YA作品のファンタジーですよ。
2017/12/27 22:20
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投稿者:たけぞう - この投稿者のレビュー一覧を見る
「キッチン」以来、久しぶりに吉本ばななさんの作品に
出会いました。本人はファンタジーというよりも
哲学ホラーと呼んだ方がいいとあとがきで書いています。
加えて、特に盛り上がることもなく、主人公たちが
ぶつぶつ言いながらなんとなく続いているとのこと、
確かにそうだよねと膝を打ちました。
吉本ばななさんの「王国」シリーズを
思い浮かべてもらえればとのことです。
わたしの印象では、ホラー要素はゼロで
普通にファンタジーでした。児童文学に分類されます。
文体がさらりとしているし、世界観も分かりやすいので、
大人も読めるYA作品の位置づけなのでしょう。
惜しいのはサブタイトルに第一話ミミとこだちとあることです。
頭の片隅に途中で終わる本という印象がついてしまい、
読後に小物感が残ってしまいました。
この情報がなければ、解かれなかった謎が続いて
欲しいという期待へつながった気がします。
この作品だけでも一つの話としてきりがついていますので、
あえて第一話と銘打つ必要はなかったと思います。
吹上町。東京から二時間で行ける特別な町です。
海と山に囲まれ、奇妙な言いつたえが残り、
ミミとこだちが育ったところです。
主人公はミミ。かけがえのない妹のこだち。二卵性の双子です。
物語はミミの視点で進んでいきます。
ミミにとって思い出すのもつらい町。
それなのに一週間前、妹のこだちが一人で帰省し、
そのまま実家から姿を消したのです。
ミミは吹上町にある虹の家を目指します。
何かを見通す力があると評判の占いの館です。
ミミとこだちの両親は十数年前に大きな交通事故に合いました。
父は亡くなり、母は寝たきりになりました。
母の遠縁で、吹上町で手作りアイスの店を営むコダマさんに
引き取られます。母は病院で眠ったままです。
そして二人は十八才で町を出て、東京に向かったのでした。
それ以来なのです。そして、まさかこんな形で戻ってくるとは。
こだちを探しながら、少しずつ吹上町の秘密に触れていくミミ。
秘密は、母と父、こだち、そして自分自身にも及んでくるのです。
日常のちょっとした不思議から入るファンタジーで、
細部の現実感がうまく溶け合っています。
非現実を書くときは、舞台をきちんと書くことで
不可思議さが増すというオーソドックスな描写です。
小学生も充分楽しめます。ほどよくいい感じの一冊ですよ。
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内容紹介からなんとなく王国シリーズ系なのかなと思い、久しぶりに手に取ったばなな作品。最近敬遠していたんですけどね、王国シリーズは大好きなので。
渾身の哲学ホラー小説、とありますがホラー要素は全然と感じました。スピリチュアルファンタジーだな。
著者のあとがきに王国シリーズに触れてたとおり、なんとなくそんな感じではあったし、最近のばなな作品の中では読めたけれども面白いとはまだ思えなかったかなー。。。続きがきになる感じではあったので次も読むけど! ちょっと初期に戻ってきた。
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久しぶりに手にとった吉本ばなな。ファンタジーだけれど、ファンタジーと現実の境目のぎりぎりあちら側くらい。非現実も、悲劇も、哀しみも、薄暗い部分も、不可思議も、恐怖も、そういう色んなものが心地よく流れてゆく。全く違うけれど「つぐみ」を思い出すような、チクチクする感じも好き。暖かい気持ちになれた。続きが、読みたい。
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よしもとばなながこれを書いてくれることの波は、ますます私たちを2017年以降へ押してくれる。
個人的には応援歌のように感じました。
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書き下ろし
交通事故で父が死に、母が意識不明のままになった双子の姉妹が、東京の学校へ行きそのまま暮らしていたが、妹が突然いなくなった。姉は妹を探しに故郷の町に戻ると、妹は異世界と繋がっているその町で、母を目覚めさせるために見えない姿になって活動していた!
吉本ばななのファンタジーである。この姉妹の母が異世界(宇宙)人で、姉妹はハーフ、ほかにもたくさんの異世界関係者がいるという設定に驚く。「もし、もっと知りたければ森博嗣先生にコンタクトを取ります。」というくすぐりには吹き出してしまった。
ただ、後悔し記憶を封印して逃げているところから、全てを受け入れて状況を変えていこうとするまでの姉の葛藤がとても好感が持てる。
第2話は「どんぶり」だそうだ。
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その街では、死者も生き返る-。現実を夢で知る「夢見」。そして屍人を自在に動かす「屍人使い」。2つの能力を私は持っている…。吉本ばななが描いた長編哲学ホラー小説。
Amazonのレビューがいいので期待したけど、「哲学」も「ホラー」も薄味で、魅力を全く感じなかった。私の読解力がないのか、レビューが吉本ばなな信者によるものだけなのか…?
(Ⅾ)
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・あなたは、なんというか、つぎはぎなのです。
・失うことこわがって愛するのはうまくいかない・・・昔知っていた歌を思い出して、私は頭の中で歌った。
「ゆくえを知らないふたりの恋は夜空に旅立つ銀の船。」
・「それがさあ、時間を使わせてしまって実に申し訳ないんだけれど、こっちで見ていてとても嬉しいのは、コダマさんと雅美さんが私を探してくれている景色なんだよね。もう涙が出るくらい、嬉しくて嬉しくて、飴玉みたいになめているの。喜びってほんとうに心の養分になるんだね。この力をもらえたから、私はママを連れて帰ってみせる。
雅美さんなんて、私たちのことあんなにうっとうしく思ってたくせに、私たちのことやっぱり大好きなんだよね。だから、ふたりを眺めているのはパパが死んでママがずっと寝てる悲しみだとか、コダマさんちで大歓迎っていうわけではなかった暮らしの思い出を塗りかえるほどの幸せな景色なんだ。家族を失って唯一よかったのはさ、あの人たちとたくさんアイス食べてごはん食べて、なんだかんだ言ってずっと家族として愛されていたことだもんね。私たちが借り暮らしと思っていた生活が、ほんとうの生活だったことが今になってよくわかったんだ。間に合ってよかった。」
・私の花束のほうが豪華で色とりどりの花が混じっているしずっと大きいのに、その小さな花束のほうが神々しく、私のよりもずっと力強い。
人類がなにかを悼むためにあるいは讃えるために花を摘んで花束をつくろうと思った、その最初の気持ちってこれなんだろうなと思った。
ひいてはその心はだれかが芸術作品を作って、それが人の心を動かし他の人もそれに接したいと思った最初の状況にもつながる。行政や権力者につながる前の芸術というものの真の姿。
・「僕にできることがあったら、なんでも言ってください。何でもしますから。たとえ彼女が僕を愛さなかったとしても。」
・「ねえ、私がこの街に帰って来たら、ここで一緒に暮らしてくれる?家賃払うから。だってもしこだちがこのままカナアマ家の勇とつきあったり暮らし始めたら、私はじゃまものじゃない。かといって実家に転がり込むのもなんか違うと思うし。」
私は言った。彼は目を丸くして言った。
「話早すぎ。」
「この建物の中って、どこかしら部屋が余ってそうだから。ハワイに行くのなんかやめなよ。家族になろうよ。」
・まるで待っていないかのように待つ。忘れているふりをして目の前のことを楽しむ。その相手として墓守くんや勇はうってつけだった。
・コダマさんは微笑んだ。その目尻のしわは昔はなかったものだ。胸がキュッとした。なるべく一緒に過ごしたいと思った。一度開放したらもう止まらなくなったその気持ちが活力に変わって明日につながっていくのがわかった。
・こんなに確かなものなのに、そしてお互いを頼りに思いながらいっしょにいるというのに、現実ではないなんて。
いや、違う。これを現実のひとつの側面だと捉えればいい。そうしたら聞き逃さず、見逃すこともないだろう、私はそう思い直した。
するとすべてのものごとの焦点がぴしっと合った。
・この人たちにひどいことをしていたかもしれない。自分の悪いくせも宇宙に溶けていきそうだ。私が私を見る目よりもずっと優しいこの人たちの、ひいき目メガネの中で生きていたい。そうしたらもっと自分を好きになって、この人たちにも、他の大好きな人たちにももっといいことをしてあげられるかもしれない。
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これは、ばななさん独特の物語だな、ファンタジー、哲学、スピリチュアル。双子の妹が失踪し、姉は後を追い地元に帰る。その町は秘密があり、母の秘密、そして受け継がれる能力。登場人物たちの心の中、温かみ、さみしさ、強さ、幸せ、メッセージのよう。この本は、ゆっくり何度も読むのがいいかも。
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思えば、吉本ばななさんの本とともに生きてきたこと十数年。
苦しいことや悲しいことは必ず起こるから、それ以外はなるべく明るくありたい、とどこかで書いてあって、本当にそうだなあと思った。
私の中には、色んなところにばななイズムが紛れている。
いつもいつも、どこかの作品の、どこかの言葉に救われる。
次の作品もゆっくり待ちたい。
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もしかしたら、どこかに本当にこんな町があって、ミミやこだちが住んでいるのかも。
ばななさんの文体に慣れてくると、自然とそう思える。
物語としてはまだまだ導入部のようで、続きがとても気になる。
無条件に誰かの事を必要と思えるって、素敵だな。
その為になりふり構わず行動できるこだちも、
一つ一つ自分で納得して進んでいくミミも、愛おしいと思う。
現実の自分がそうではないから余計に。
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どういう話?と思いながら読んでいきましたが、非常に面白い!
現実離れしているところもあるけど、そんなことどうってことないと思える楽しさでした。
ミミとこだちの二卵性双生児が引き起こす数々の冒険?
そして新たな自分を見出していく、そういうところがとても良かった。
しかし、これ第一話ですね。次は「どんぶり」だそうです。
楽しみ。
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映画ファンタズムは見たことないので、特に内容に対して思うところなくニュートラルに読みました。
哲学的であるとか、ホラーであるとかいった感じは受けませんでした。読み手としては、いつものばなな先生と思う方が多かったのではないでしょうか。
ちょうど育った町への旅から戻ってきたタイミングでこの本をたまたま手にとって
悲しい思い出しか無い呪われたその場所で顔を上げたとき、
世界が変わっていて
この街は、今は住みやすいところで、
どこに出しても恥ずかしくないところになったんだ。
私もそこに与するのだろうか
と正に思っていたところだったので、内容がすっと胸に入ってきました。
自分の頭の中のデータを更新され、呪いがとけたような気分になり
前向きにとらえてもいいのかもしれないと思え、
それでいいではないかやっとそれができるようになる
と感じたミミちゃんの心境が、本当にとてもよくわかります。
お手伝いやなにか良いことをすると1ボルもらえて、
3ボルでアイスに引き換えられるというのは、
本当に優しいシステムで面白くて良いですね。
墓守くんの花束と、それをずっと気に留めていたのが
ひょんなことから作った本人と出会えて、本人に素敵だと思うと伝えられるシーンも
とても良かったです。
評価が間に合わないことも、現実にはいくらでもあると思うので。
心洗われる場面でした。
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二卵性双生児のミミとこだち。
交通事故で父が亡くなり、母は眠り病となって眠ったまま時を刻んでいた。
いったんは故郷を離れ東京で暮らしていた2人だが、
こだちが行方不明となったのをきっかけに
ミミはこだち探しと母や異世界と通じていたという故郷について巡る旅。
死者を奴隷としてつかっていた異世界から来た大地主と、それを調べていた同じく異世界から来た母。
毛むくじゃらの勇、良き理解者の墓守さん。
アイス屋さんのこだまさんと雅美さん。
無邪気で勇敢なこだち、慎重で傷つきやすいミミ。
SFぽい。映画ファンダズムのオマージュ。
彼らのその後が気になる。