紙の本
社長がアホやから
2017/12/29 07:09
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投稿者:夏の雨 - この投稿者のレビュー一覧を見る
若い人は知らないかもしれないが、かつて阪神タイガースのスター選手だった江本孟紀氏が「ベンチがアホやから野球ができない」と暴言を吐いたことがある。
きっと東芝の従業員もこう言いたいだろう。
「社長がアホやから仕事ができない」。
江本氏はこの発言のあとタイガースを退団したが、東芝の多くの従業員も会社を去っている。
東芝の一連の問題の元凶には歴代の社長の資質の問題がいわれている。
その中のひとり、西田厚聰がこの本の主人公である。
衝撃的なタイトルが示す通り、東芝の15代め社長となった西田は早稲田大学から東京大学大学院に進み、西洋政治思想史を学んだ。あの丸山眞男から薫陶を受けたイラン人の女子学生と恋愛におち、イランで結婚式をあげる。
その関係で西田はイランで東芝の合弁会社に現地採用される。
西田が東芝に本採用されるのは、31歳の時。
当然他の同僚たちとは大きく出遅れている。
しかし、西田は持ち前の力量でさまざなな困難を乗り越え、特にパソコン事業で東芝の名を飛躍的に高め、2005年社長に就任する。
そして、西田はその在籍期間中に現在の東芝の苦境の原因ともなった原子力事業に積極的に乗り出す。
西田の経歴を丁寧にたどったこの本を読むと、社長になるまでの西田についてとても魅力的なビジネスマンに見えた。
原子力事業も正しい情報があがっていれば、それを選択しなかったかもしれないとも思えた。
しかし、終りの章の著者とのインタビューで、西田の魅力はいっさいなくなった。
もしかした西田がいう通り、その責は彼の後任の佐々木則夫にあったかもしれないが、そのことを決めたのも西田であるとするなら、いくら言いつくろうと、西田の責任は逃れられないのではないか。
そして、西田はこのインタビューのあと、12月8日に亡くなる。
西田はインタビューでも大学院を去った本当の理由を話していないが、その死にあって、学究に残ればよかったと悔やむことはなかっただろうか。
紙の本
東芝を奈落の底に突き落とした第15代社長の全記録です!
2017/12/18 11:10
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投稿者:ちこ - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書は、アメリカの原子力事業に手を染めたことで、一気に奈落の底に突き落とされた大企業東芝を率いた第15代社長である西田氏の全記録を綴ったものです。彼は、東京大学大学院で政治思想史を学んでいましたが、その後、恋人を追ってイランの地へ向かいます。現地では東芝の合弁会社に採用され、そこから徐々に頭角を現していきます。そして、第15代東芝社長に迎えられます。彼は自身の経験から「運命はコントロールできる」と豪語していたと伝えられています。その後、彼はアメリカの原子力事業に手を染めますが、これが140年もの老舗大企業東芝の大失態となり、崩壊寸前にまで至ります。果たして、彼は東芝をどのようにしようと目論んでいたのか。さらに、彼は東芝に何をしたのか。同書は、彼の口から直接語られた言葉をまとめた貴重な記録です。
紙の本
何が変節の原因なのか?
2018/03/26 15:47
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投稿者:ジル - この投稿者のレビュー一覧を見る
西洋哲学を大学院まで学び日本人のビジネスマンには稀有な深い教養を身に着けたリーダーとして期待されていた西田。、どこかで唯の数字と地位を追いかけるだけの「経営者」に成り下がってしまった。その「何故」には残念ながら迫りきれていない。
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[異能故の功罪]後に大きく傷つくことになる原子力事業に大きく舵を切り,粉飾の原因を作り出したとも批判される元東芝社長の西田厚聰。イランにおける現地法人に採用され,韋駄天のごとく社長の椅子を手にした人物は,どこで歩みを間違え,名門企業を存続の淵に立たせることになったのか......。著者は,『堤清二 罪と業 最後の「告白」』で大宅壮一ノンフィクション賞を受賞した児玉博。
ノンフィクションの醍醐味を凝縮したような作品。西田厚聰という人間の歩みが東芝と重なり,そしてそのまま「壊滅」へともたれ込んでいく様子が丁寧に描かれています。他方,本書をしてただの批判本となっていない所以は,西田の成功が東芝の壊滅につながった点を示唆している点。読み終えた後の寂寥感が凄まじい作品でした。
〜光と影。言い古された言い回しだが,西田厚聰という人物の人生にわずかばかりだが,触れさせてもらった率直な感想は,圧倒的に光り輝いた部分と,その光があまりに強いがゆえに濃さを増した影を見たような気がする。〜
サラリーマン/ウーマンなら読んで損なし☆5つ
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先日亡くなられた西田元社長を軸に書かれたもの。「東芝機械ココム事件」「イラン革命」「Dynabook」「ロータス1-2-3」など、懐かしい事象に揉まれながら歩んだ西田氏の経歴が語られます。丸山眞男氏、大前研一氏なども登場し、今では反原発派の小泉氏が政権掌握時代に原発を推進すべく、東芝に圧力をかけたなども紹介。この頃の日本の政治・経済を包含しながら、今の東芝の姿に至る第一級のドキュメンタリーになっています。
大変な勉強家で、就任時には「陽」で皆からも歓迎されながら、どうしてこうなってしまったのか、「陽極まれば陰に転ず」と言えばよいのか、読後には考えさせられます。
「負けず嫌い」な性格でひたすら業績をあげることに注力したのでしょうが、最後のインタビューで、社員に対するコメントがなかったのが痛切です。
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平家物語ですな。盛者必衰。奢れる人も久しからず、ただ春の夜の夢のごとし。猛き者もつひにはほろびぬ、ひとへに風の前の塵に同じ。
結局、西田氏はコングロマリット(東芝がコングロマリットかどうかは難しいところだが、白物家電と原子力は異業種でしょう)の代表の器ではなかったのでしょう。西室氏・西田氏・佐々木氏それぞれのルサンチマンに振り回された大企業が風前の灯火ですが、今後どうなるのでしょう。いよいよバンカー(銀行屋かもしれませんが)登場で、ただの中小企業になってしまうのでしょうか。お膝元の府中市民としては気になるところです。
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2018年3月11日読了。
300ページ。
ウエスチング・ハウス(WH)買収時の東芝社長、西田厚聰氏への長期取材に基づくノンフィクション。
早稲田大学から東大大学院に行き、東芝のイラン現地法人に中途で採用され、社長まで登りつめる。
イランでの合弁会社を成功させ、撤退間際のパソコン事業を立て直し、一時期「世界のDyna book」と言われるまで成長させた辣腕が、なぜ東芝を没落させたのか。
西田氏だけが悪かったわけではないが、(私は西田氏の次の社長の佐々木氏に一番問題があったと思っている。)企業というものはトップの判断で生きるも死ぬもという怖さを感じる。
あの東芝でさえ「あいつしかいなかった」という理由で社長に推挙しなければならないということ。「地位が人を育てる」ということが万能ではないこと。
西田氏は極めて優秀な人だったが、なぜ東芝壊滅のきっかけを作ってしまったのか?
など、あっという間に読了する傑作。
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2018年3月22日読了。東芝のパソコン事業を立て直し社長に上り詰めたイラン出身・東大卒の異端児・西田の活躍と「名経営者」の晩年とは。東芝の粉飾決算の発覚・特別損失の計上はつい最近の話であり、非常なリアリティを感じつつ読むことができた。会社は一人でやるものではないし内部・外部の様々な要因に対応して行うものだから、誰でも常勝し続けることはできないし、死の間際においても「名経営者」の評判が覆ることはありうることだ。が、「リスク」がリスクである以上、何かにチャレンジすることには失敗が伴うことは当然なのだが、前半のドラマになりそうな快男子ぶりと、最後のインタビューに見える姿のギャップは非常に寂しさを覚える…。西田が社長職を辞する直前、なぜPC事業が赤字転落したのか・西田の変節はどのようにして起こったのか、については記述が端折られているように感じる、病床の西田が多くを語らなかったのだろうし取材が難しい部分だったのだとは思うが、ここはもっと著者の仮説でいいから読みたかったところ。
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権力は腐敗する。
より上の世界を知るとその世界の住人になりたいと願い、そこに至るとそこから落ちることを怖れるようになる。
優秀な人材で有ってもその罠を逃れることが出来る人は少ない。そのような人たちをトップにしてしまった会社の悲劇である。
力のある会社なので、真っ当な会社になって欲しい。
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西田社長ー会長 東芝の戦略を確立した 「半導体と原子力」に選択と集中を進めた
尊敬するウェルチGE氏の経営戦略手法を踏襲したものか・・・
そのダイナミックさは社内外の高い評価を得、株価も倍へ
しかし時は味方せず
リーマンショックと
東北大震災・福島原発事故
半導体と原発を直撃
それまでの西田経営には誤りはないが、結果的にリスクが過大だったということ
経営は結果責任 でもリタイアした西田氏は責任を受け入れず
むしろ自己正当化
東芝ものでは出色の一冊 それでも後味は不味い
世界グローバル化に対応してきた男 西田社長
それでも晩節を汚す
勲章と財界ポストはダメ 人を腐らせる
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2020年5月2日読了。
土光や西田というカリスマが東芝を発展させた経緯が描かれた前半では、彼らの才能だけでなく、彼ら自身の独自のモノの考え方や人知れぬ努力も記されており、偉人伝を読んでいるような感覚があった。
しかしながら後半以降では、リーマンショック以降の業績悪化を皮切りに、東芝だけでなくそれを支えた経営者の行く末に暗雲が轟き始める。
西田の半生を読んだ側としてみたら、巨大企業の栄枯盛衰を見ているようでどこか寂しい気持ちになるが、WH社との関係、世界における原子力ビジネス、佐々木をはじめとした社長人事…どれを取ってもリスク管理が十分ではなく、土光の時から問題視されていた公家企業から完全に逸脱できていなかったことが露呈されている。
東芝という大企業を社長が完全にコントロールすることは至難の技だとは思うが、会社の長だからこそ周りの人間との助け合いが重要であり、権力欲や過剰な競争心、嫉妬はそうした信頼構築に傷をつけるものであると痛感した。
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数年前に東芝が「不正」会計問題でメディアに取り沙汰されていた頃、自分はあまり何も知らずに東芝を横目で冷ややかに見ていた記憶がある。もちろん西田厚聰なる人物も知らず、東芝がひとつの企業としてどのような歴史をたどり、どのようなことをしていたのかも知らなかった。単に、日本的な企業の成れの果て、というような単純で穿った見方しか持っていなかった。
西田厚聰はその経歴や考え方、物事の進め方などおよそ常人からはかけ離れており、そのような人物を社長に指名した東芝という会社も実は大胆不敵な組織であったのではないだろうか。しかし、WH買収、SWの減損問題、原子力事業に関わる成り行きを見ると、西田厚聰もどこかで目が曇り始めていたのだろうか。後継者の佐々木則夫との確執についても、佐々木則夫個人にも問題はあっただろうが、リーダーとしてもっと別のやり方はなかったのだろうか。単に世界の変化に対応しきれなかったと言うのは簡単かもしれないが、西田厚聰ほどの人物であっても、晩年にはそのすごみが陰ってしまった原因は何であったかのだろうか。
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中途採用という異色のスタートから社員20万人を抱える東芝という大企業の社長となった西田厚聰さんに関する本。ビジネスマンとして、本当に才能があり、実績も残し、すごい人だということは分かったが、最後には欲に溺れ、自分を正当化する。WHの買収、パソコン事業でのバイセル行為。過去を振り返っても、反省しても現実は変わらないが、この方、また歴代社長の判断によってどれほど多くの人が露頭に迷ったことか。内部にいても全く情報が無かったが、こんなやりとりが上層部ではあったのかと。
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東芝の不正問題について学びたかったのだが、その辺りはさらりと書かれており、あまり参考にならなかった。
西田氏についても、深く掘り下げて書かれているとは思えず、もう少し厚みのある記述が読みたかった。
巨大企業の社内政治はドラマのようで面白かったし、経団連の事などは勉強になった。
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土光は社員らに、「チャレンジ」と「レスポンス」(素早い対応)を叩き込む。土光の言う「チャレンジ」とは、目標達成ができなかった場合、その原因を突き止め、その上でさらに挑戦するという意味だ。1977年発行の社史『東芝百年史』によれば、やがて「チャレンジ」と「レスポンス」は、組織と組織のコミュニケーションにも応用されるようになり、当時の東芝社内ではこれが「合言葉になった」と記されている。
「仕事十訓」とタイトルがついた紙には元ホテルオークラの副社長で数多くの著書を持つ橋本保雄の『感動を創る』(現在はPHP文庫に収録)から抜き出されたものが記されている。
1.バイタリティを持て
2.常に頭脳を酷使せよ
3.周囲の変化に挑戦せよ
4.他から信頼される人になろうと努めよ
5.ルールはルールとして重んじよ
6.一度計画したものは、万難を排して完成させろ
7.失敗を恐れるな、失敗は次への成功の足がかりだ
8.今日のことは今日やっておけ、明日は明日の仕事がある
9.おのれの時間を大切にせよ
10.生きがいのある職場で価値ある人生の創造を
■西田がジャック・ウェルチから感銘を受け、自己鍛錬としてきた6つのルール
1.あるままの現実を受け入れろ
2.にも誠実であれ
3.ネージャーではなく、リーダーになれ
4.わらなければならない前に変化せよ
5.争優位を持てないならば競争をするな
6.自分の運命は自分でコントロールせよ。でないと、他人にコントロールされる