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ヒトごろしが解く戦争の愚かしさ。
2018/04/20 20:22
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投稿者:名取の姫小松 - この投稿者のレビュー一覧を見る
土方歳三は自分の性格を知っている。ヒトごろし。人を殺したい。人外と自分を呼ぶ。
禁忌を侵す為に、人を斬り殺せる立場になろうと動き、新選組の副長となる。
人外の自分が人を斬り殺したいのに理由はない。斬り殺したいだけ。しかし、何故普通の人間が己の正義や理想を求めるのに結局ぶつかり合って戦になり、人を死なせるのか。それも下手な策を用いたり、体面にこだわったり、義理を感じたりと土方から見れば実に愚かしい。殺し合う戦が悪なら、人を死なせないようするべきだ。そして戦場の緊張感が普通の人間を人外の狂気に追いやっていく。
刀と違って、銃や大砲はただの大量虐殺でヒトごろしとして醜いと土方は感じる。
そこに作者なりの戦争批判を読み取った。
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【ネタばれ】鬼の副長、土方歳三
2020/05/01 19:56
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投稿者:KazT - この投稿者のレビュー一覧を見る
土方歳三がなぜ新選組の副長となり、鬼と呼ばれるようなヒトとなったか。
殺人集団の新選組は、土方歳三がその望みをかなえるために生み出したもの。
フィクションでありながら、本当にそうではなかったかと思わされる作品です。
ほとんどが土方歳三の心のうちの描写で、数々の有名な事件が語られます。
土方歳三の卓越した人を見抜く力、先を読む能力が発揮されますが、そのすべてが彼の望みを達するためだけに使われ、一切ぶれない凄みが伝わってきます。
各章の終わりの決めセリフとして、俺はー。「土方歳三だ」と答えます。
そしてその土方歳三が最後に語るのは・・・。ぜひ読んでみてください。
また、本作には重要な登場人物として、土方歳三に刀を渡し、斬られて美しく死にたいという女性、お涼が登場しますが、彼女はある京極作品で重要な役割を果たしています。
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新(真?)説・土方歳三
2019/06/01 12:34
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投稿者:へもへものへじ - この投稿者のレビュー一覧を見る
現在、我々の中にある新選組像・土方歳三像は、司馬遼太郎氏の影響を大きく受けています。
しかし、この物語はそんな従来のイメージを根底から覆します。
幕末とは何だったのか?明治維新とは何だったのか?新選組とは?
そして、激動の時代を生き抜いた新選組・副長の生涯を通して浮かび上がる、ヒトごろしの流儀とは?
京極先生が初めて挑んだ、歴史大作です。
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あたらしい
2018/05/27 23:42
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投稿者:なつめ - この投稿者のレビュー一覧を見る
京極夏彦の作品は、久しぶりに読みましたが、いつも以上によかったです。土方歳三の人間像があたらしく、新鮮でした。
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やっと終わった~~~
これが正直な読後の感想。
久しぶりの京極、そして1,000ページを超える大作、そしてそして、苦手な幕末もの…
最後まで読み切るのがやっとだった。
主人公は新撰組の鬼の副長・土方歳三。新撰組の有名どころでも最後まで生き残った一人。その土方の青年期から、箱館で最期を迎えるまでの自伝もの…なのかなぁ。土方からの目線でしか描かれていないので、どこまでの史実が正しいのか、どこからがフィクションなのか、なかなか判断が難しい。なので、パソコンで史実を確認しながら読んだ。
新撰組については、曖昧な史実が多く、自分でも新撰組の歴史の位置づけがいまいち分からないでいたので、読むのは大変だったけれど、新撰組については大分理解出来た。
坂本龍馬や勝海舟など、京極夏彦の手にかかると、こういう人物像になるんだなぁ、と変なところでも感心してしまった。こういう作品も新鮮でいいけど、やっぱり京極ファンは京極堂シリーズの新刊が読みたいっ!
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京極夏彦の最新作……といっても出たのは随分前になるか。
幕末を舞台にした時代小説は幾つもあるが、これまでにも数々のフィクションの題材になってきた人物を、こう描いたものは見かけなかった(尤も時代小説はロクに読まないので、探せばあるのかもしれないが)。
熱心な幕末ファンにお勧め出来るかどうかは解らないが、私は非常に面白く読んだ。
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とりあえず、すげーお・も・い(物理)。
土方歳三を中心に、独特な切り口で新撰組の栄枯盛衰が描かれてます。
新撰組ファンの方には怒られそうですが、土方と沖田がサイコパスっつーかシリアルキラーっつーか、いわゆる社会病質者であるという解釈なんですな。
おおうそうきたか! と、びっくりはするけど、何かしっくりきたりして。
ぶっちゃけ新撰組ってめっちゃ迷走してるじゃないですか。教科書的な解釈じゃ、イマイチ理解できなかったんだよ。そのあたりも、この切り口だと納得できたり。
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中学生時代に司馬さんの「燃えよ剣」を読んで以来の新撰組(特に土方さん)ファンです。
そして、京極さんの小説もほぼ読破している私・・。“京極新撰組”は、さて如何に・・。と読み始めました。
まず副長が、ダーク。自らを“人殺し”として、そのうえで語られる生死感がキレキレ。大概の方々を論破(?)しまくっています(その時は副長、結構しゃべります)。
そして沖田。“笑いながら人を殺す”サイコな危険人物として描かれています(沖田ファンは注意!って感じ)。
ええキャラ揃いの監察方の面々や、見廻組の佐々木只三郎のくせ者っぷりも面白いです。
齋藤が正義キャラで書かれているのは、個人的に意外でしたが、アリですw。
新選組って、歴史的価値というか意味がほとんど無い集団と言われていて、本書でもそういう事をにおわせる表現が多々見受けられますが、何だかんだで、色々な作家さんの作品のネタになっている事から、魅力的ではあるはず・・。とファンとしては思いたいところです。
そして、本書のラストはグッときました。やっぱ土方さんカッコイイです!
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新選組なんてもはや語り尽くされたテーマだから、史実というよりは物語としての新選組を京極夏彦らしく再構築するとこうなるという、嗤う伊右衛門や数えずの井戸に連なるシリーズでした。
副長土方歳三を殺人のために生きている人外として設定し、歴史としては新選組設立前から五稜郭まで、戦い方も武士道から戦争までと大きく時代が変わっていく様子も描かれていて、実に面白かった。外から見たら、土方はただの殺人鬼にしか見えないから、映画化は無理かな。タイトルだけはあまり好きじゃないな。
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舞台は幕末。混乱した時代。その不安のせいか、熱病にうなされたか、大なり小なり大義名分があれば、個人の裁量で殺人が許されてしまう社会。
そんなものはおかしいんだ。いい人殺しなんてもんはありえない。とぶったぎるのは新選組副長・土方歳三。
ただ、彼自身は殺人衝動をもっているサイコパスなんです。
ぶっ飛んでいるのは、沖田の方ですけどね。快楽殺人犯。
同じ性質を持つ土方と沖田。衝動のまま殺すことに抵抗のない沖田と違って、土方は殺しのライセンスを作り上げようとします。公に殺しを行ってもいい状態。そのための新選組です。
私情が天誅と名を変えて、正当化される殺人。
戦争の中で、一人の人間としてでなく、一兵士という戦闘単位失われていく命。
どちらにも、人を殺すことは大罪だ、と断言。一刀両断です。
ただ、そういう土方自身が殺人衝動を抱え込んで、何度も殺人を実行しているという人間。
『一人殺せば殺人者。百人殺せば英雄』とはよく言ったものですが、人殺しはどれだけかっこつけても大罪人だと突きつけられてます。
古今東西の英雄譚に突きつけてますね。
しっかし、相変わらず分厚いです。
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そんなに新撰組モチーフの小説は数多くは読んでないけど、沖田の扱いw
個人的な感想は・・・う~ん、長い割にはあんまり・・・
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新撰組と言えば、「燃えよ剣」だったので、この本にはかなり衝撃を受けた。
ヒトを殺したくてそのシステムを作り上げた人外が土方という人間なのだと何度も何度も言われてるうちに本当にそうだったのかも…と思えてくる。
読み始めは、え!?いいの!とドギマギしながら読んでたのに、すごい説得力。
ヒトを殺したい、しかしきたないのは嫌だという強い拘りがまたそれらしい。
女との会話で、生まれ落ちた時から人は腐りはじめるのかもしれないという描写が心に残っている。
そして、薄々感じていながらも担がれ続けた近藤もまた色々な意味ですごいな…と思った。
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佐幕だの倒幕だの、はたまた尊皇だの攘夷だのと、大層な旗印の下で戦をやらかす。忠義や正義をかざし、武士道だの維新だのと自らを正当化して命を奪い合うのだ。時代がどうあれ、世相がどうあれ、ヒトごろしに理屈なんざ要らないよ。佩刀できる身分を得て、ただ殺したいから殺すんだ。出世のためでも、世直しのためでも、何でもない。大義に殉じる殺しなんてあるものか。ヒトごろしは、潔く己を人外と認めりゃいい。あの屑野郎の沖田総司も、人にあらずとの自覚はあったのだろう。死は、血飛沫は美しい。殺したい。俺は「土方歳三だ」
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ものすごく久しぶりに京極夏彦の小説を読んだ。
京極堂シリーズしか読んでなかったからなぁ。
京極夏彦の小説といえば銃弾も防げそうなページ数。
今回もハードカバーの上に1000ページ超えの分厚さだった。 ページ数的には多いけど文字数は京極堂シリーズが1ページに上下2段で大体800ページ前後が多いので、それの大体半分程なので本の見た目で引いちゃう人は多いかもしれないが、そこまで読むのが大変でもない。
肝心の中身だけど、新選組の土方歳三が主人公。彼の生きざまが描かれている。 なんだけど、この土方歳三は大の人殺し大好き人間なんですよ。 人が殺したくてたまらない、しかも刀で切り殺したいってものすごく危ない人間として描かれてます。
しかし冷静で頭もよく世の理はちゃんと理解している彼は、自分の身分でそんなことしちゃお縄になるってのは判っている。が、とにかく人を殺したい。赤い血飛沫が舞い上がるのを見たいんだと強く思い日々を悶々と過ごしていました。
そして彼は思いつきます。
殺してもお縄にならない立場になろうと。
しかも大量に殺しても文句を言われない立場に。
それが可能になるように知恵を絞り立ち回り他人を利用し組織を作り、時には相手を陥れどうみてもこれは殺してしまっても仕方がないよね?と周りも納得する状況を作るのです。
漸くそれが叶ったはいいが、もっと少しでも長く人を沢山切り殺したいんだ!という事で新選組が無くならないように励むのでした。
新選組の様々な行動が実は土方が人殺しを重ねる為に仕組んだ結果でしかなかったってのがおもしろい。
沖田もタイプは違えど人を殺したくて仕方ないイカレた奴として出てきます。 そんな沖田を土方は同族嫌悪でとても毛嫌いしているのでした。
それにしても、どぉしても読んでいるとNHK大河ドラマの新選組の面々の顔や場面が浮かんできてしまい困った。
そっちとは登場人物の性格がまるで違うのに妙にそのままでしっくりくるんだもんなぁw
いやぁ面白かった。
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幕末物が好きで、特に新選組、土方!
ドンピシャの好み。
ただ、千ページを超える本はあまりに重たい。
(まさにヒトごろし用鈍器!)
普通は分冊するでしょう。
(その方が、作者も出版社も儲かるのでは?)
今まで誰も描かなかった土方&沖田像
最初は違和感有ったけどだんだん引き込まれてきました。
「涼」が本当は「お竜」だったという落ちかと思っていたのだけど、流石になかったか!!