人口減少と鉄道
著者 石井 幸孝
人口減少で日本の鉄道は危機を迎える。2050年にはJR東海ですら利益が出なくなる。早くから人口減に見舞われながら、豪華列車や外国客誘致、多角化で右肩上がりを続けるJR九州...
人口減少と鉄道
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商品説明
人口減少で日本の鉄道は危機を迎える。2050年にはJR東海ですら利益が出なくなる。早くから人口減に見舞われながら、豪華列車や外国客誘致、多角化で右肩上がりを続けるJR九州の初代社長が、成功事例を踏まえつつ、これからの鉄道再生の方策を語る。
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2050年までに全国の鉄道事業はすべて赤字に
2018/05/03 21:48
1人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:つばめ - この投稿者のレビュー一覧を見る
著者は、「入門鉄道車両」などの鉄道車両関連の著作を多く執筆されている鉄道技術者である。国鉄民営分割時の2年間は、反対派の妨害工作のため身に危険が及ぶ恐れがあったため、24時間SPに付き添われ、自宅にも警官が寝泊まりするという修羅場を乗り越えて国鉄改革をやり遂げ、JR九州の初代社長を歴任された猛者である。その著者が、今後の日本の人口減少社会を見据え、鉄道事業の将来に警鐘をならした一冊である。本書で最も目を引くのは、JR各社の営業エリアの人口密度と鉄道事業利益率が、見事な相関関係にあることである。今後、人口減少とともに人口密度も低下、現在好調な本州JR3社の鉄道事業利益率も低下していくことを予測している。こうした事態を少しでも回避すべく、技術者の立場から様々な施策が提言されている。例えば、新幹線での貨物輸送や青函トンネルでの貨物列車と新幹線の速度向上策についてである。紙幅の関係や本書の目的から技術的課題に深く触れられていないため、技術論に興味のある読者には、若干物足りなさが残るかもしれないが、著者の鉄道事業に対する熱き思いは十分伝わってくる。ただ、本書で「お客さま」という表記のオンパレードに、食傷気味になったのは残念である。この著書と同じくJR関係者執筆の「列車ダイヤと運行管理2訂版(成山堂出版)では、当初原稿にあった「お客さま」を編集部で「利用者」、「乗客」と改めたと、あとがきに記されていた。この出版社の見識に敬意を表したい。
JR九州初代社長が警鐘を鳴らす日本の鉄道の未来
2019/08/27 11:19
1人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:文学少年A - この投稿者のレビュー一覧を見る
人口減少時代に入った日本は、2050年までには人口が9700万人になり、JRを含む全国の鉄道事業者がすべて赤字になる。人口密度が比例する様にJR本州3社の鉄道事業利益率は高く、逆に三島会社(北海道、四国、九州)は低い。そこでJR九州は、交通手段の主流だった自動車(路線バスや高速バス)や飛行機に料金面で対抗。また国鉄時代のイメージを刷新するため、使っていた古い車両を退役させ、工業デザイナーの水戸岡鋭治がデザイした特急「つばめ」や「ななつ星in九州」などの観光列車を走らせ、それらがJR九州の企業ブランドの向上に大きく貢献。
また不動産業をはじめとした多角経営を行い鉄道事業の利益より関連事業の利益が上回るなど、並々ならぬ経営努力により平成28年10月25日に東証一部上場を果たした。
それと、著者が提言する貨物新幹線や国鉄に在籍した時代の内部事情や昭和39年に新幹線が開業という同時に収支が赤字に転落し、二度と黒字になることは無く、日本政府に借金をしては返すという自転車操業に陥り、昭和62年の分割民営化まで36兆円の債務を負うことになる原因を国鉄の組織風土にあると指摘した。
その他、海外の鉄道事情や最後の方に法政大学で著者と学生たちとの講義録が掲載されている。