紙の本
まるで泥遊びをしている子供のよう
2021/01/23 22:31
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:忍 - この投稿者のレビュー一覧を見る
雑誌のニュートンに作者監修の記事があり、それが面白かったので読んで見ました。
内容的には、ニュートンの記事は、本書のエッセンスを詰め込んだダイジェストという感じではあったのですが、記事には見られなかった自虐的なネタが面白すぎます。
気鋭の研究者が世界中をかけめぐる、と言ってしまえばかっこよすぎますが、宝の山を目の前にした幼子のような姿が浮かんできます。
また、サブタイトルに表れているように、作者のスタンスが、ただの研究者を目標としているのではなく、研究から得られた知見をもとに実践を行っているところに好感が持てます。
それにしても、存在することが当たり前のように考えていた土も、立派な資源であり、使い方を誤ると石油のように枯渇してしまう可能性があることに驚きました。
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投稿者:H2A - この投稿者のレビュー一覧を見る
とてもおもしろい本だった。土壌という日の当たらない存在について書いてこれだけ興味深く書いてくれただけで満足。地球の土は12種類に分類されているということさえ知らず、「砂」と「土」がそもそもどうちがうのか、「粘土」とはそもそもどういう定義なのかと知らないことばかり。植物やそこに寄生する菌類も含めた生態については知らないことばかりで土壌もそこに大きく影響している。著者はちょっと自虐的な謙遜もしながら人類100億をどうやって養っていくかという遠大なテーマを掲げている。土壌はその最重要ファクターのひとつなのは間違いない。
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生命を育み、時に飲み込む大地。最近、食品や農業への関心も増え、土砂災害も身近になったこともあり、そもそも土のことをよく知らなくことに改めて気づいた。そんなところに本書の書評が目に留まり、読んでみました。学生のころ走り回った馴染み深い吉田山の土から北極圏、北米、南米、ヨーロッパ、アフリカ、アジア、インド、オーストラリアと世界の土は12種類に分類されているそうです。細かい違いまで簡単に理解はできないが、土壌とは何々か、岩と砂と粘土の違い、肥沃な大地と痩せた土地の違い、そもそも植物が育つために土壌がどのような役割をどように果たしているかということを大凡知ることができました。新書には珍しく掲載されている豊富な写真がすべてカラーなのが良かった。カラーじゃないと”赤土”とか分からないし。大きな目標を設定しつつ、まずは地味な研究をコツコツと進めていく若手研究者の物語としても楽しめるかと思います。
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そこら辺にある土に肥料等を混ぜ込めば何かしら食料となるモノが育つのかと思っていたが、大間違いだった。
我らの胃袋を満たしてくれる食物を育てられる土が意外と希少なものだったとは。
土から見た食糧問題。
結構不安になる。
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土がそんなに奥深いとは知りませんでした。間違いなく知的好奇心を掻き立てられます。また、日本人がどうして稲作にこだわったのかも納得
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土。この足もとに存在するありふれた物質には様々な特長があり、12種類に分類されるという。世界の12種類の土を探す著者の旅が、軽妙な語り口で語られる。
チェルノーゼムやポドゾルなどは、その昔、高校の地理で目にした土の名だが、そういえばなぜ地学ではなくて地理で土壌について学んだのだろう?と改めて思い至る。
それはやはり科学的な視点よりも、世界の食糧事情を担うファンダメンタルであるという社会的な視点からなのだろうか。
土壌を研究する著者の目的も、あくまでも100億人を養うことができる土を見つけて、将来的な食糧不足を解消することにある。
はたして、人類の未来を託すことができる土はあるのか。
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どこにでもある土。
全くの門外漢だったが、読んでびっくり。初めて知ることばかりであっという間に読了。
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土壌学の本。著者によると、地球上の土は12種類に分類できるらしい。実際に12種類の土を求めて世界各国を訪問し、土とは何かを考察する。
自分自身も農学部の出身だが、機械系だったので土そのものにはあまり関心が無かった。ぜいぜい植物の生育に必要な土と化学物質くらいの知識しかなく、社会人になると農業とは違う世界に進んだので、土がどのようにできるか等全く知らなかった。この本では、著者の体験と併せて判りやすく(例え話も適切)解説しており、読んでいてとても面白かった。土についての知識を得ることで、毎日見ている風景が違って見えてくるような気がする。旅行に出掛けたら、動植物と共にその土地について考えてみるのも良いかもしれない。
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土から、地球の成り立ち、地形、農耕、社会問題まで語った書。
独特のリズム感のある語り口とユーモアでさらっと読めるのに、情報量は多くどっしりと重い本。
図表が多く、視覚的にも理解しやすい。
土壌分布と人口密度の図など、圧巻。
2018年の本当にいい本の一冊です。
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大学で土壌学を習ったが、とらえどころが分からず、今も土についてほとんど無知のままである。
ところが。この本によって土のおもしろさに開眼してしまった!
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第1章 月の砂、火星の土、地球の土壌
第2章 12種類の土を探せ!
第3章 地球の土の可能性
第4章 日本の土と宮沢賢治からの宿題
著者:藤井一至(1981-、富山県、土壌研究者)
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今までに読んだことないテーマだけど、文章も易しくてユーモアにあふれていてさくさく読める。
ただ、これだけで土を理解するのは難しい。
それだけ奥の深いテーマということだろうけど。
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月並みな感想だが、足下の、特に気にすることなくただそこにある土、それがこれほどに面白く、興味深く、また、人間の未来に役立ちうる可能性を秘めているモノだとは知らなかった。
読んでいると、土に着目して世界を探検しているような楽しい気分になる。また、土がどういう役割を果たしているのか、ということを知った。
世界が広がる一冊。
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第7回河合隼雄学芸賞受賞作。わたしはマニアックな地名について問われても即答できるほど地理が好きなのだが、高校時代には地理を選択しなかったこともあり、その内容はあくまでも教科書的な智識ではなく、趣味として個人で蓄えたに過ぎない。そのため、たとえばポドゾルやチェルノーゼムといった、高校地理で学習する範囲の智識についてはまるで詳しくなく、そのへんの受験生を適当に捕まえて訊いたほうが詳しいだろう。だからコンプレックスを感じていたというほどではないのだが、土にかんする智識もいつか身につけたいとつねづね感じており、そのことも本書を手にとった理由のひとつである。さて肝腎の内容だが、著者が「まえがき」で記すように土というメチャクチャ地味な世界を扱っているにもかかわらず、かなりおもしろく読むことができた。構成としては、12種類(著者による分類)の土をそれぞれ実際にその眼で確かめるべく各地を股にかけたエピソードを交えながら、それらについて学術的な解説を展開するという形になっており、エッセイ的な楽しさもある。土にかんする理解も深まったし、われわれの生活がじつに多くの種類の土から成り立っているということは、言われてみなければなかなか気づかない。また、読んでいて名著『銃・病原菌・鉄』を思い出した。同書では、特定の地域にだけ文明が栄えた理由として農作物を挙げているが、本書の内容を踏まえてより正確な言い方をすれば、農作物そのものというよりもむしろ「土」だろう。冒頭の分布図をみてもよくわかるが、世界の中で農作物の生育に適した土壌がある地域は驚くほど少ない。ヨーロッパにはたまたまチェルノーゼムや粘土集積土壌といった肥沃な土壌が拡がっていたために、早くから世界史の中心となることができたのだろう。また、おなじように日本列島に世界的には稀少な黒ボク土がたまたま集まっていたために、こんな極東の島国に多くの人が集まり経済大国を築くことができたのである。このように、『銃・病原菌・鉄』のサブテキストのような読み方もできるため、同書の読者にもぜひ読んでほしい1冊である。
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土壌学を専攻し、土を求めて世界を巡る。時に不審者として職務質問され、時にトレジャーハンターに間違われる著者。少し前にラジオ出演していたの聞いた記憶がある。全人類100億人を飢餓から救う壮大な目標! 12種類の土の研究は、いきおい農業と密接なつながりを持つ。日本の土は結構肥沃だと思っていたが、火山灰と腐植が堆積した酸性の黒ぼく土という分類になるという。畑は、確かに苦土石灰での中和が必要だし、肥料を施さなければ作物がうまく育たない。水田は、水を張ることで中和されるという視点が得られた。カテゴリは自然科学へ。