紙の本
江戸から東京へ
2021/02/26 11:39
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投稿者:nekodanshaku - この投稿者のレビュー一覧を見る
明治期に日本銀行本店、東京駅を設計施工した建築家・辰野金吾の生涯は、まさに江戸から東京を創り上げた。時に建築物の効率性を求め、時に美しい建物を求め、建て続けた。町から都市へと変わる東京に、日本という国家を立派な佇まいにするために、建て続けた。建築するということが好きで仕方なかったのだと思う。現代の東京を目にしたら、満足するだろうか。
紙の本
空に向かって
2020/07/10 07:21
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投稿者:夏の雨 - この投稿者のレビュー一覧を見る
門井慶喜さんには『家康、江戸を建てる』という傑作連作集があるが、徳川家康が開いた江戸から200年超を経て、明治となり、江戸はその名も東京へと名前を改める。
だから、この長編歴史小説は気分は『家康、江戸を建てる』に近いが、東京駅を設計したことで有名な建築家辰野金吾の生涯を描いて、これもまた読み応え十分だ。
辰野金吾は明治維新前の1854年肥前唐津藩の下級武士の家に生まれている。
明治期の著名人の多くがそうであったように、辰野も維新がなければその後の人生はまったく違ったものであっただろう。
とにかく維新があって、江戸が終わった。
辰野は東京と変わった街に出、現在の東大工学部の前身である学校に第一期生として入学する。
そこで英国人の建築家コンドルで出会うことになる。
辰野はその生涯で200件以上の建造物を造ったが、この作品では彼の名を最初に高めた日本銀行本店と東京駅に関わる事柄がメインに描かれていく。
東京という巨大な街は一朝一夕で出来上がった訳ではない。
政治も社会も文化も明治維新をはさんで生まれ変わったといえる。
そして、それらを容れる建物も街づくりも。
江戸が東京に生まれ変わるにあたって、辰野のような人物がいた、あるいは生まれたことこそがこの国の素晴らしさだったといえる。
門井さんはそんな人物を実に颯爽と描いている。
主人公である辰野は時折建造中の骨組みを昇り、空へと向かう。
明治から大正にかけて、まさに人々がそんな気分であったのだろう。
原題の「空を拓く」というのもわるくない。
電子書籍
辰野金吾という人間力
2020/04/22 19:38
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投稿者:真太郎 - この投稿者のレビュー一覧を見る
まず、内容に今、2020年世界を震撼しているウイルスの起源ともいうべきか、スペイン風邪が流行した時代、辰野金吾自身もかかり病没する展開に偶然と思えない奇妙な感覚すら覚えます。
ただ、日本の建築の先駆者として、誉れ高い辰野金吾の心の葛藤もかかれてて、常に人間は学び教えを繰り返して後世へつないでいくのではと思いました。
近年、東京駅が復元され、つかの間当時のっ様子を体感できるのではないでしょうか。
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【この国の首都の顔を決めた、一人の建築家】江戸から東京へ。急速に近代化する街の形を決定づけた建築家・辰野金吾。今日につながる景色を創った男の野心と葛藤を描き出す。
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あの東京駅を手掛けた日本近代建築の祖にして風雲児、辰野金吾の生涯を描いた作品。あぁ、これはドラマになっても面白いんだろうなぁというイメージを持ちながら読んでいた。求む、ドラマ化!
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辰野金吾。
と聞いたら、唐津の人間は読まずにはいられないでしょう。
なんかイメージと違ったなぁ。もっと穏やかな人かと思ってた。
でもすごく面白かった。一気に読みました。
作者さん、もしや佐賀人…!?とか思ったんですが、群馬の方でした。ありがとう。こんな素敵な作品を書いてくれて。これで辰野金吾の知名度ももう少しあがるかなぁ。
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「剛心」に続いて、全く同時代の辰野金吾側から描いたこの本も読んでみた。
辰野金吾のキャラが強烈だが「剛心」と共通する人物像なので本当にこんな人だったのだろう。強烈に自我が強く打算的でもあるが、どこか純粋で憎めない。そして「江戸」から「東京」に都市を作り替えるという己の理想に邁進する。邁進ではなくて爆進という表現の方が合っているだろうか。
東京駅や日銀本店など今も東京の象徴として生き続ける建築をつくり出すには、このくらい熱い情熱が必要なのだろうなと感じた。
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日銀本店や東京駅をたてた辰野金吾の物語。江戸から東京に生まれ変わらせる。街づくりにかけた辰野。建築道をまっすぐ突き進む。高橋是清とのかかわりは面白い。伊藤博文も登場する。家康、江戸を建てるや、ヴォーリズを描いた屋根をかける人にも通ずる。
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時まさに文明開花の明治。
工部大学校・造家学科を首席で卒業し欧州留学から戻った金吾は、完成間近の鹿鳴館の足場から恩師・コンドルと共に東京の街を見下ろし、その浪費ともいうべき空間利用の効率の悪さに怒りを覚え「人が集まる東京を作る」という自分の建築家としての責務を深く心に刻む。
帰国後の所属先・工部省の廃省により民間へと下り日本初の個人の建築事務所を起こした金吾は、日銀の本店建設を巡り、総理大臣・伊藤博文、長州出身の参議院議官・山尾庸三らに友人・片山東熊の伝で直談判し、相手を扱き下ろすという裏切りとも言えるやり方でほぼ受注の決まっていた恩師・コンドルの手からその事業を毟り取るのに成功する。
そして高橋是清らの助力もあり苦労の末なんとか完成させ、その評価により思惑通り日本の建築家の第一人者となる。
数年後、コンドルと共に丸の内のオフィス街建設に携わる曾禰達蔵の計らいで人生最大の建築、中央停車場(東京駅)建設を手掛ける事になるが、その様式から工法・材料に至るまで、迷いと懐疑の中完成させるが、この仕事によって金吾は「鉄筋コンクリートによる高層化」という世界の建築の趨勢に背を向け、腹心の部下を失い、自らの老いを目の当たりにするのだった。
ありし日の鹿鳴館での決意をほぼ実現したにもかかわらず、まるで敗者のような感慨に陥った金吾は、かつて自分が裏切ったコンドルに己が一生の意義を問う。
そして人生最後の大仕事、国会議事堂建設をほぼ手中に納めた春に・・・
あの遠い日、
自らが怒りすら覚えた非効率、様式美、芸術性。
今、まさにその怒りを向けられている自分。
クリエイターという人種の性が哀しい…
◯辰野金吾・・唐津藩下級武士の家に生まれる。
日本初の海外留学生。
日本初の大学教授。
日本初の民間事務所開設者。
スペイン風邪がきっかけで命を落とす。
◯曾禰達蔵・・唐津藩の祐筆で江戸留守居役の子に生まれ、藩の主筋・小笠原長行の小姓を務めるが幕府崩壊と共に生きがいを失い、活路を求めて訪ねた耐恒寮で金吾等と出会う。
工部大学校の首席、欧州留学、教授の座、東京駅舎をはじめとする数々の仕事等、人生の節目に於いて常に金吾に譲って来たが、常に紳士的で人格の完璧を明示。金吾の生涯の心頼み。
◯ジョサイア・コンドル・・工部大学校・造家学科で金吾等を指導、金吾を首席にし留学の道筋をつけてくれた大恩人。しかし、ほぼ決定していた日銀の設計を巡り、金吾の強引な直談判によって横取りされる。作品に鹿鳴館等。
◯東太郎(高橋是清)・・幕府御用絵師の妾腹。頭脳明晰だが酒・博打で身を持ち崩したり、アメリカ留学するも奴隷に売られたり波乱万丈の後、唐津の英学校・耐恒寮の教師となり金吾等を指導。後に、ペルーでの銀山サギで無一文になるが金吾の日銀本店建築の際、事務方として助力、最後は大蔵大臣にまで上り詰める。
◯片山東熊・・長州奇兵隊の一員で会津攻めに加わった後に工部大学校で金吾等と出会う。
作品に東宮御所。
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テレビ番組「王様のブランチ」でも紹介された門井慶喜さんの新作。門井さんの過去作「家康、江戸を建てる」では江戸を創った徳川家康を描いた作品だったが、今作は、江戸時代から明治時代に切り替わるタイミングで、江戸を壊して東京へと「既存の都市を別の都市へと作り替える」物語となっている。日本銀行・東京駅・国会議事堂の建設を設計した主人公・辰野金吾視点で物語は進む。東京という都市作りだけではなく、金吾とその周りの家族・師匠・弟子・ライバル間の邂逅・離反・和合といった複雑な人間模様も楽しめる作品となっている。
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江戸から明治 東京へ。その時代の変化に翻弄されながら
確実に 日本の建築家の第1人者になっていく 辰野金吾の物語。
高橋是清から、英語を学び、上の身分にある曽禰達蔵と一緒に、
東京に出て、ジョサイアコンドルから、学ぶ。
当初は、曽禰達蔵が勉強ができたが、努力して主席となりロンドンに行く。
ロンドンで、コンドルの師匠、ウィリアム・バージェスから学ぶ。
ロンドンから帰って、コンドルの鹿鳴館を見ながら、
次の日本を日本人の手で作ることを決意する。
その時は、東京を人間の整理ダンスとするという効率性を考えていた。
日本銀行のコンペに、辰野金吾は名乗りをあげ、そして
伊藤博文に直談判して、日本銀行本館の設計建築を勝ち取る。
その際には、恩師である コンドルの鹿鳴館を徹底して批判する。
イギリスの様式ではなく、ドイツのバロック様式が必要だという。
「均整美よりも躍動美」「静的より劇的」「自然よりも超自然」「古典ではなく新興的」なバロックが必要だと強調する。
ふーむ。かなり強引な男ではある。金吾自身はドイツ滞在の経験がないのだ。
日銀を作り始めるが、棟梁たちのいざこざが耐えない。
その事務屋として、高橋是清が加わり、見事 落成式までこぎつける。
そのことで、多くの自信を得て、また、仕事も舞い込むようになる。
三菱の岩崎弥太郎に売り渡された丸の内の開発で、
コンドル、曽禰達蔵は、三菱1号館などから、作り始めるが、
東京駅の設計を、辰野金吾に依頼する。
そのことが、いつまでも気がかりだった。
長方形の大きな駅で、レンガで全部作るという作り方。
あくまでも、イギリスのクイーンアン様式で、作ることにこだわる。
「建築とはすなわち美術でなければならぬ。」
完成した時に、コンドルに謝るのだった。
なぜか、大きな野心を持っていても、小心な男だった。
また、コミュニケーションが意外と苦手なのかもしれない。
金吾の西洋建築の古典主義 様式主義 いわゆる辰野様式の確立の歴史。
ふーむ。辰野金吾の世渡りについては、わかったが、
建築の様式に対して、どういう思いがあったのかという
具体的な建築デザイン設計技術に関しては、
あまり触れられないのは、残念であった。
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日本銀行や東京駅、心を動かされる建築物はこのような人によってつくられたというのが分かり、面白かった。
志を持ち、熱く、信念を持ってことを成し遂げた辰野金吾の生涯が、形を残している。
またゆっくりとその建物をながめてみたいと思う。
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実在の人物、建築家辰野金吾の生涯。
江戸を東京に変えるという意気込みで、日本人設計の建物を建てる事に拘り、日本銀行、東京駅などを建築する。
生涯自分の信念を貫き、多くの実績を残すが、煉瓦がコンクリートに変わる時代に虚しさも感じる。
明治の味わいある建物の数々を堪能した。
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日本銀行、東京駅をデザインした辰野金吾ってどんな人だったのかしらんと思い、手に取った。明治期のエネルギーあふれる世界、山田風太郎の小説ばりに出てくる著名人、あー面白かった!結末は奇しくも2020年の世界状況が重なることもあり、自粛中にもってこいですぜ。
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敬遠していた歴史小説。読みや用語に多少苦戦したところはあったものの、スラスラ読み進める事ができました。後世に残っている建築物にまつわるエピソードや辰野金吾に関わる人物たちがたいへん興味深く、いろいろと調べたくなりました。ただ、テレビでの紹介され方では「さまざまな困難の中で成功を収めた物語」だと思っていたのですが、読んでみるとそんな印象はありませんでした。