紙の本
サルが抱え込むリスク
2021/07/09 10:37
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投稿者:ひさ - この投稿者のレビュー一覧を見る
『サルたちは、未来の自分が抱え込むことになる損失やリスクは「他人ごと」だと思っている。その点ではわが「当期利益至上主義」者に酷似している。』
長く続いた資本主義は、目先のことだけしか考えない人間を生み出した。
筆者は、この現象を人間のサル化だと言う。
さらには、このサル化した人間が、巨富を得るという皮肉な社会構造を
資本主義社会は生み出した。
富を得た「サル」は、自分の地位確保のため、さらなるサル化を進めている。
人間の内面においてとんでもない時代逆行が進んでいることを
現代社会が抱える問題を通して、筆者は訴える。
この世界は、この国は、もう、かなりとんでもないところまで来ていることに
誰もがうすうす気づきながら、見て見ぬふりをしているのではないだろうか。
この本は、そんな私たちの目をかっと見開かせてくれる。
現実を直視し、問題点を掲げ、そしてこれからの社会の在り方、自分のあり方を
自分自身に問いかけることができるだろう。
電子書籍
朝三暮四
2020/11/07 05:31
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投稿者:チップ - この投稿者のレビュー一覧を見る
朝三暮四 の故事からつけられた題名
「当期利益至上主義」がまかりとおっている現代
こんなことを続けているといつか大変なことになるとわかっていながら「大変なこと」が起きた後の未来の自分に自分のこととしてかんじられない人が増えている。
著者の上から目線が気にならなくもないが、考えさせられた。
紙の本
Intelligentsia
2020/03/20 23:37
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投稿者:6EQUJ5 - この投稿者のレビュー一覧を見る
なぜか人間の「サル化」ということをテーマとした本と思い、手に取ってみましたが、そうではなく様々な話題について色々なメディアに寄稿した文章、あるいはスピーチの記録化したものを集めた一冊でした。テーマは豊富です。
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【なぜ「幼児的な老人」が増えたのか?】「今さえよければ自分さえよければ、それでいい」という“サル化”が進む社会で、人口減少問題からAI時代の教育まで論じた快著。
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内田樹の感性は好きだし、本質をついている主張が多い。
世の中が、短期志向になりつつあるという主張は、うなづけるところが多い。巨額の財政赤字は、その典型だと思う。
どうすれば?ということに、短期的な視点で提言を行うことは、それ自体がサル化的。
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読了。面白かった。人の悪口があるのかなと思ったが、違った。前向きな気持ちになれた。さすが内田先生だと思った。
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『サル化する世界』内田樹
現時点で最新刊。サルとは、朝三暮四の小話で、「朝3つで暮に4つと伝えると憤慨し、朝4つで暮に3つと伝えると喜ぶ」時間感覚のない嘲笑すべき存在である。人間が人間たる所以は、その時間感覚である。未来のことを考えて、今少し我慢するという知性の使い方は、「今」以外の時間や世界について価値を見出すという点で、過去へのリスペクトでもある。サルと人間を分かつのは、その時間への想像力であり、過去は神という形で象徴化されて宗教として人々に伝えられる。人間は、過去という神の下で、抗いえない始原の遅れを痛感し、自らの矮小さを知る。それが、人間にとって「本質」的なことである。時間に行使した想像力は空間にも応用できる。集団にとって守るべき存在とは、老人や子供であるが、それらが守るべき存在であるのは、老人や子供は自らの変容態であるからである。彼らを守ることは、自らを守ることでもある。自らの未来や過去を、空間という次元でプロットしたもの、それが「老人や子供」であり「弱者」である。このような想像力を行使することで、人間は集団を存続させることができる。長くなったが、そういった想像力が欠如し、時間や空間の感覚を持たずに刹那的に生きている人間が多くなった世界が「サル化する世界」である。内田は、この世界において、今一度人間を提唱する。人間たり得ないものが構成する世界に、未来はない。すくなくとも、人間としての未来は。
中でもよかったのは、p93の「気まずい共存について」。選挙演説であるが、いささかヴォルテール的であり、知性への覚悟が感じられる。デモクラシーと多数決は全く異なる概念である。オルテガ・イ・ガセットが『大衆の反逆』でも述べているが、デモクラシーとは、多数決に、「少数派を慮る心」を加えたものである。為政者として、仮にも多数派のトップであるならば、その選挙で少数派となった人々を慮る心がなければならない。さもなくば、それは多数者の圧制となる。だから、意見の対立している相手とも、気まずい共存を受け入れることが、この国でデモクラシーを復権する(これも、一度も現実化したことのない過去かもしれないが)為には、どんな相手に対しても、リスペクトをもって応じ、情理をもって語ることが必要なのである。今の日本の、断絶と自己責任論の横行は、我々の失敗である。自分が失政の一端を担っていると感じる為に、政治に参加しなければならない。沈みゆく船に
、自分の体重がかかっていることを自覚せねばならない。そうして初めて、船を再び引き上げる主体たり得る。
これから、日本は世界的にも新しい、人口減少と高齢化を迎える。この下り坂をうまくおりぬくことが、世界にとって日本が発信するべきベストプラクティスである。その中で、現在、医療や教育に市場の論理が入ることは、憂慮するべきことである。心理学にアンダーマイニング効果という言葉があるが、市場の論理を入れることは、まさしくアンダーマイニング効果をもたらすことであると思う。
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久しぶり(?)に感動した内容でした。
感動というのは、ちょっと違うかもしれませんが
心に残るというか、揺さぶられるというか、そんな感じです。
50代男性のための結婚論-愉快に機嫌よく
性善説のシステムが一番コストがかからない
『コンテンツ』ではなく『マナー』の問題
その他いろいろ・・
もういちど(何度か)読みたいと思う本でした。
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エッセイなので読みやすく、また1テーマが短く、軽めなので、空き時間や寝る前にサクッと読めます。
途中、姜尚中さんや堤未果さんなどのお名前が挙がり、学生の頃流行っていたな〜と懐かしくなりました。
真剣に論じる、という感じではないですが、エッセイとしてはとても楽しく読めました。
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この著者の評論は好きだ。まともな感性に、ピンと一本筋の通った姿勢が見事だ。どこを切り取っても知性が感じられる、誠に得難い教育者のひとりである。題名には「サル」という惹句を用いて読者の気を引くが、現今の世界のリーダー逹やその仲間を仔細に眺めれば、まさにグローバルなサル化の進展を意識せざるを得ない。特に米国・日本・英国・フランスなどはその傾向が強く、著者はまだ絶望にまでには至っていない模様だが、評者は既に絶望の域に達している。この本の半ばにはシンギュラリティに至る道筋に触れてもいるが、著者の視点はやはり楽観が勝っているやに思われる。いずれにしろ、各年代の必読書と言える。
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自分が良ければそれでいい、という考え方は人間ではなくサルであるというまえがきから始まる本書。今の世の中、とくにこの日本という国の舵取りをしている(つもりになっている)連中の浅はかで戦略もまるでないということがよく分かる。
教育はそもそも身銭を切ってやるものだという考察にも合点がいく。学位だけを与えるために設立された大学はどこも立ち行かなくなったという話も、ビジネスと教育は食い合わせが悪いということを示す事例だろう。また、教育に口を出す者ほど、この国の教育がどうなろうと知ったことか、という態度であるという。
この国には豊かな自然環境や国民皆保険制度、また、国民のモラルなどという資源があり、もとより一朝一夕で無に帰すほどの浅さではないのだが、ここ数年、これを管理するやり方が杜撰過ぎたために退廃しつつある、という見方も肯ける。
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内田樹氏が近代西欧思想のベースを
あまりにもしっかと踏まえているので
どこか「上から目線」
時折「傲慢さ」すら感じたのだが
内田氏はフランス現代思想の専門家だ。
仕方ない。
私はフランスベースなものを
思い切り斜めに見る癖がある。
大学の時のフランス語教師のせいである。
それはいいとして
ともかく そうだそうだ そういうことなのだ
とうなずくことが多すぎる。
一つ一つ書いていったら
数十枚のレポートになってしまうので
ここには書かないが
人とは 共同体とは 国家とは
教育とは 人生とは。。。
内田氏の論考は見事に一本筋が通っている。
批判しようと同調しようと
個人の自由だが
内田氏の言っていることが
理解できないのであれば
それは民主主義社会に生きる上での
勉強が足りない。
(そういう私もまだまだであるが)
裏を返せば 一般市民が
そこまで自ら学び考えないと
民主主義はまともに機能しない。
国民主権を主張するというのは
それほどの覚悟と努力が要るのだ。
「お上が言うから」に安住し
事が起きて その「お上」に
「あんたたちの責任」と言われても
「そうかあ」とぼんやりし
挙句の果て
自分のことは棚に上げ
「お上」の手先になって
誰かを攻撃する。
そんな思考停止国家に
民主主義が根付くわけがない。
どこの国とは言わないが。
「中世化」と内田氏は書いていたが
少子化や反グローバリズムに加えて
新型コロナの登場で
世界はいま本当に
中世への回帰を強いられている。
これから世界はどうなっていくのか。
私たちはどうすればいいのか。
いま現在の
内田氏のお考えをぜひ伺いたい。
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もともと内田氏の本は好きでよく読むんだけど、ここ最近読んだ内田本の中でも、かなり面白かったと思う。タイトルが刺激的だ、と話題になっているそうだけど、タイトル以上に中身を読み進める中で、あれこれ考えさせられる。
成熟するとは、複雑化すること
とか
論理は跳躍する
とかね。
外国語を学ぶ意味は、もっと自由になるためであり、にもかかわらず、今の英語教育はかえって檻に入れられるようになっているので、子どもたちの学習意欲を滅殺するとかさ。
考えさせられる。
面白かった。
自分の仕事を考える上でもね。
教育とは個人ではなく、集団による営みであり、それをファカルティー(教師団)というっていうのは、いろいろ考える手がかりになる。
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思想家・武道家の内田樹さんが、現代社会の様々な問題に物申した一冊。ポピュリムズ、民主主義、新元号から中国、週刊ポストまで内容はかなり幅広く雑多だが、いろいろと考えさせられる内容も多く、特に後半でAIについて語られている箇所などは非常に面白かった(最新のガジェット・文化に常に触れ続けていないと、あっというまに取り残されて行く時代なんだなーとしみじみ)。
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いろいろな分野について内田さんの考えが書かれている。個人的に賛同するのは教育についてのところ。
評価廃止や市場原理がそぐわないこと、その通りだと思うし、現場でも感じる。