紙の本
花ざかりの森 デビュー作
2023/04/30 19:39
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:a - この投稿者のレビュー一覧を見る
タイトルにもなっている花ざかりの森はを著者自らもはや愛さないと書いています。しかし作家デビューを飾る記念すべき作品と思います。
投稿元:
レビューを見る
久々に三島由紀夫。短編集は読みやすかったです。作者による解説も面白かった。
表題作の「憂国」、「海と夕焼」「新聞紙」「女方」が好きです。「新聞紙」、結末は夏目漱石「夢十夜」の第一夜のラストを連想しました。
「憂国」は克明に描写される割腹シーンとそれを見つめる妻の心情を考えるとつらいです。妻が後を追って必ず自害するとか、軍人とその妻って…となりました。この将校役を演じたのが三島由紀夫なのかなぁ、映画化されてる。
投稿元:
レビューを見る
特に憂国が良かった。複雑な情景や心理がすんなり頭に入ってきた。
花ざかりの森は作者も若気の至り的な事を書いていたが、正直読みにくくよく分からなかった。
女方、百万円煎餅、月なども良かった。
投稿元:
レビューを見る
「覚悟はしておりました。お供させていただきとうございます」
表題作『憂国』から漂うのはエロスとタナトス。
私自身はフロイトに立ち帰り、バタイユに踏み入る必要があるなと思いました。
もうひとつの表題作『花ざかりの森』こちらは処女作とのこと。なんと言うか、若い!
投稿元:
レビューを見る
花ざかりの森は正直、何が書いてあるかわからない。16歳で書いたのは驚きですが。
三島自ら言うように、憂国こそが三島の真髄。この小説のことは忘れないだろう。
投稿元:
レビューを見る
アフォリズムの魅力がこれでもかと、盛り込まれた三島由紀夫さんこ自選短編集でした。作品によって、温度や湿度が異なるところも、作品の並びが面白いところです。(どんな順番で読み進めたら良いかと、自分で組み替えてみるのも面白い)
私が魅力を感じたのは〝透明感〟です。作品に登場する男女の精神生活はシャボン玉の外側を覆う膜だけがはっきりと視認され、中身が透けて見えるような透明感を持ち生きている。
『憂国』の夫婦二人の持つ愛国心と、忠義、自分達の生活の根づく揺るがない土壌。二人の肉体とこの世界とが強く結びついているが故の切腹という限定された選択肢に、先のシャボン玉のような脆さと儚さを感じました。
目を見張るような美しい情景でありながら、あくまで隔絶された一部屋の出来事だということをひしひしと感じさせられます。
切腹を心に決め実行しようとする夫と、塵一つの疑念や名残をもなく付き従う妻の交わす言葉や肉体の交わりの数々
〝「今夜腹を切る」「お供をさせていただきとうございます」どうしてこんな重大な許諾が、かるがるしい表現をとるのかわからかった。〟
に詰まっている、もはや二人にしか分からない、理科できない科白の、川底に沈んでいるガラスのような輝きは、それにしてもこの感覚を理解できない人からは、んん?となってしまうところでもあるので、上記のこんな重大な〜わからなかったという説明もあるのでしょうか。
切腹の際、夫が未達の死を邪魔されないように、締めた鍵を、妻が達成の死の後始末をつけるように開け直す。この開きと結びに震えました。
ここに、下に記す『海と夕焼け』がついぞ達せられず、助長した生を感受する主人公との明暗を思わせるのです。
切腹という文化。一つの世界に殉じ、生死を超えた、物語を完遂するという一つの美学。
だからこそ、この話は美しく、その透明性は今や透明ということが不可視の現実世界に溶け込む、真の透明となったという解釈をしてみました。
本当に透明だったら、透明なことすら分かりませんからね。
本作をヒロイズムに酔っていると批判する人も今しょうが、現実以上の現実を生きた二人の姿に、やはり嫉妬し、憧れる部分もあっての批判ではないでしょうか。
来し方は、〝天皇様〟が国民全員の〝推し〟だったと言えるのでないでしょうか。まぁ、全員が全員、同じ〝推し〟を推さなければならないというの随分と暴力な話ですが、それが骨組みとなった、一つの条件の上で成立していた国家。
俄には信じがたく、畏怖の念すら覚える程の、怪しげな魅了を感じますね。
『海と夕焼け』にも見ることができる透明感。ここでは、神のお告げを聞いた少年が、目的を果たすことが出来ずに、行き着いた生を描きます。
神の啓示という絶対。その透明感。宗教観の濃い作品ではありませんが、彼の神という絶対への信頼感の透明度は際立って読み取れます。
そんな絶対に裏切られた彼自身が、まるで、透明に内実を明け渡し、肉体というシャボン玉の外側だけが今も生きて、活動しているかのような錯覚を引き起こさせるのです。
告白形式で語られる、フランスの僧の話をそれを聞いているのは、聾の少年であり、この告白が終わったときに彼は眠っている。僧自身の『お前は何を私が言ってもわかるまい。(略)私の言うことを信じてくれるだろう』『少年には何も聞こえず、少年の心は何事をも解さない(略)自分の目へ直に映し出すことができそうに思われる』という言葉と説明からして、僧が少年に告白する、という被告白としての役割のみ少年が担っていると思いませんでした。
現実世界と自らとを繋ぐ言葉を受容できない聾の少年であれば、僧の言葉を映し出し、信じるとあるように、僧も、説明文の主体も、僧の実の無さを痛感しているように思われるのです。
故の透明感。夕焼けを見に山頂へ登る彼が見る、魂の抜けた神への透明な眼差し。いるか、いないのか。いたと実感しできても、ついぞ触れることも叶わなかった神への虚しい愛執。
こんな激しい絶望の匂いを僧自信が内面に抱き続ける美しい情景と描写が麻酔のように昨日し続け、透明性を保っているように思えます。
真の透明には至れなかったという無念が、拭えませんね。
『橋づくし』の女性3人とみな。願掛け。
精神生活、情景描写こそは小説の真髄の一つであると思います。願掛けとは、他に漏らさないもの。究極の利己が覗ける面白い素材です。
ここに、みなという、器量の悪い、前者の女性が望み叶えることができるような願掛けを持つ謂れのない彼女が、最後まで橋を渡り切ることができるという、皮肉な作品です。
しかし、あくまで、願掛けであるならば、他者から干渉を逃れて然るべきであるのに、みなを従える満差子は心の中で、自分の容姿の足元にも及ばないみなが、自分と同じように願掛けを持つことを憎く思う描写。
その正体は、自分がしている願掛けという行為そのものが、自分が願掛けに抱いているような神聖さ、素晴らしさを持っていないことを、自分で感じとってしまっているというような、事実と内面に矛盾を抱えるという、酷く利己的な自我を暴露する衝撃的な作品になっていました。この微妙な心理の正体を正確に描き切るのが、作家としての力量なのかと思うと、震えます。
是非共、読んでいただきたいのが『卵』という作品。これはもう傑作でした。
面白い!人物達の愛らしさは言うまでもがな、無数の楽しみ方のできる作品です。
哲学的に読むのもよし。sfチックのように、不気味さを楽しむのもよし。娯楽小説のような、アクションだったりを楽しむのもよしと、万能の作品であり、本作の中ではいちばんのお気に入りです。
他にも『中世における一殺人常習者の遺せる哲学的日記の抜粋』『遠乗会』『花ざかりの森』『詩を書く少年』『新聞紙』『牡丹』『女方』『百万円煎餅』『月』と収録されています。
三島由紀夫さんの小説を手に取るなら、本短編集から入ってもいいかもしれませんね。
情景描写、主題哲学、心理描写全てに置いて、勉強させていただくところの多々ある作家様です。。
語句���選び方、吸収したい。。
投稿元:
レビューを見る
そもそもなんで『憂国』なんだっけ?なんでたった2日で自刃したんだっけ?と、あやふやになったので、去年出た新編で再読。ホラーの『新聞紙』、大好きな『女方』、おもしろ『百万円煎餅』も堪能した。ちなみにドナルドキーンさんは"おんながた"、と訳している。
投稿元:
レビューを見る
【オンライン読書会開催!】
読書会コミュニティ「猫町倶楽部」の課題作品です
■2022年4月22日(金)23:00 〜 2022年4月23日(土)00:45
https://nekomachi-club.com/events/d89b09151953
■2022年5月17日(火)20:30 〜 22:15
https://nekomachi-club.com/events/0648f5ea9004
投稿元:
レビューを見る
表現の質、読者に訴えかけてくる熱量ともに、「憂国」が群を抜いている。短編小説の構造としてきれいに整っており、三島の言うところの「コント」としてすぐれているのが、「遠乗会」「橋づくし」だと感じた。
投稿元:
レビューを見る
叔母が三島由紀夫が好きで(あまり人には言えないとも言っていた..)、気になっていたところ、たまたま見たYouTuberの方が「憂国」を紹介していたのでとりあえず「憂国」だけ読んでみました。
言葉遣いがとても綺麗なこと、そして知ってはいたけど三島由紀夫の頭の良さをひしひしと感じました。
ストーリーも、息するのを忘れてしまうくらい最初からぐいっと引き込まれて一気に読み終わりました。
"死ぬ"しか選択肢がない時代、死がいつも近くにある生活、実際に昔の日本はそうだったんだなと思い、現代で生きるわたしは彼らに比べたらどんなに気を緩んだ毎日なんだろうと思いました。。
夫婦の愛などと単純に言ってはいけないくらい、(でも語彙力がなさすぎて上手く表現ができないのですが)、精神の美しさを感じました。
二人の絆というか、運命共同体であることに心を奪われました。
悲しいお話なのですが、彼らがお互いを心から想っていることや、尊重しているところは素敵で美しいです。
熱い情愛と真っ直ぐな姿、硬い絆が羨ましくも感じました。
投稿元:
レビューを見る
(2022/08/25)
『花ざかりの森』
花盛之森名義の三島由紀夫16歳のデビュー作。
この時から培ってきた語彙が晩年の作品群読みやすさに繋がっていると思う。ただ、この頃はまだ青々しい感じで、足し算ばっかりの文体。使いたい表現をどんどん入れて、引くことを知らない感じ。
(2023/12/02 3h)
投稿元:
レビューを見る
危険。三島由紀夫の手に係るとどうして諦念も狂気も欲望も死でさえも美しく仕上がってしまうのか。。貴族階級の婦人の少女らしいわがままさが妙にリアルな『遠乗会』や『新聞紙』、少年が生の気配に気づく描写が秀逸な『詩を書く少年』、すれ違いの美学ともいえる『女形』も、『百万円煎餅』もなんか可愛くて良かったけど『憂国』の破壊力。耽美的で激情に富んでいて息をのみ悲しみに引きずられずにはおられない。。
投稿元:
レビューを見る
三島由紀夫著『花ざかりの森・憂国-自選短編集(新潮文庫)』(新潮社)
2017.11.6読了
学生時代に「百万円煎餅」だけ読んだことがあったが、今回、通読。寓意に富んだ短編から物語性に富んだ短編まで偏向なく描き切る表現力がすごい。文章は緻密に計算され尽くされていて、婉曲な表現を積み重ねた末に、詩的な情感が残る。「花ざかりの森」と「中世に於ける一殺人常習者の遺せる哲学的日記の抜萃」は読みづらいが、「橋づくり」や「女方」「憂国」などはとても面白い。特に「憂国」は自分がその場にいるような錯覚にすら陥る。正直、腹切り作家としか思っていなかっただけに、驚いた。
花ざかりの森
中世に於ける一殺人常習者の遺せる哲学的日記の抜萃
遠乗会
卵
詩を書く少年
海と夕焼
新聞紙
牡丹
橋づくし
女方
百万円煎餅
憂国
月
URL:https://id.ndl.go.jp/bib/030671748
投稿元:
レビューを見る
11月25日は、憂国忌。1970年三島由紀夫割腹自決事件。明日ですね。憂国とは、国の現状や未来を心配すること。艶やかな言葉だなあと思います。とか、書いちゃってるけど、初読です。初読ですので、覚書多めです。および、順不同。自選短編集全13編。
「憂国」
二二六事件外伝として。
新婚の美しい中尉。皇軍のクーデターを知らされず、友人達の討伐が任務となる。皇道派への忠誠心として、彼は、妻と共に死を選ぶ。ぷはー。
死を前にした二人の最後の夜。1Q84よ、生と死の間のエロスはかくあるべきと思うのよ。
戦場の孤独な死と美しい妻との共在。
三島自身が、1冊だけ読むならこの1冊をとしている作品です。
「詩を書く少年」1954年
15歳の少年時代を描く三島。自伝的作品。
少年は、自分を天才だと思っている。そして、詩は楽に溢れてくる。少年は、詩により微妙な嘘のつき方を覚えた。彼は、嘘をつく美しい言葉を探す為辞書を引く。
少し前、淳水堂さんが、詩が苦手というレビューをされていて(たぶんかなりの謙遜をされていると思ってます。)嬉しくなって、私も苦手なんです!と
告白したのです。そして、この作品を読んで、そうだこれだ、私は自分が詩を作った時(学校でね。)綺麗な言葉を探して嘘をついていたからだ。と、すごく納得したんです。
少年は、先輩の恋愛相談を受け、詩の源泉について思い、自分の詩が偽物であったことを知る。感受性の乏しい自分が詩人となり得ない。と気付く。
かなり短編で、難解だけど、詩そのものについても考察されていると思う。
「海と夕焼け」
鎌倉建長寺(月と蟹で行って来ました。)の、フランス人の年老いた寺男。彼に起こった神託と、その後の不幸を鎌倉の山の上で、海と夕焼けを見ながら語る。フランス人は子供十字軍に参加していたが、奇跡は起こらず、信仰を捨て、日本の禅寺に住まう。
三島の奇跡願望と沈黙の神の短編。
「花ざかりの森」16歳の処女作
本人は、もう作品としては、お気に召さなかったらしい。これは、わからないのよねえ。天才少年が、古今東西の書籍を読みまくって、その時点の知力を結集して読者のレベルを考えないで書いちゃった感じ。とはいえ、ぼんやりと読めるのは、私という語部が、いくつかの時代の祖先達と会う。その家系は海に関係している。といえば、螺旋プロジェクトに重なるとこがあるようなないような。
「遠乗会」1971
良家の子女であった善良な婦人。彼女の息子への偏愛。若かりし頃の淡い記憶の自己愛。現社会とのズレ感。
「新聞紙」
映画俳優の自宅で、息子の看護師が出産してしまう。リビングは血に染まり、許されざる出産は、新生児のお包みを新聞紙とする。妻は、この異常な状況を受け入れられない。彼女は、思考の逃避を自分と息子の幸福度に求める。
妻は、皇居の桜舞う公園で意識を逃避させる場面が見事。小説としてかなり好み。
「牡丹」
牡丹園に580本の牡丹。それは、園の所有者の南京大虐殺の大佐が、殺した女の数だという。
「百万円煎餅」1960
堅実な夫婦の浅草巡り。しっかり貯金、きち���と節約。この夫婦、仕事は、本番行為のショービジネス。夫婦の生活とのギャップと、富裕層の婦人達の放漫さの対比。風刺コメディ。
「橋づくし」1956 戯曲化
橋を巡る願掛け。ルールに従って橋を渡り続ける女達。一人又一人と願掛けから脱落。最後まで行けたのは意外な人物。小洒落たコメディ。近松、名残の橋づくしエピグラム。
「女方」
冷艶な女方に思いを寄せる作家の男。新劇監督の男に惚れる女方に、幻滅と嫉妬を同時に襲われる。
これは、現代でも充分にドラマ化もできてしまいそうなストーリー。
「卵」
謎のコメディ。ちょと厳しめの童話の様な。三島の頑張ってるギャグ。本人は、純粋な馬鹿らしさと自評してるみたい。
5人の大柄で無謀な大学生が、卵警察に捕まって卵裁判にかかるけど、何故かめでたしめでたし系。
「月」
しんしんみりみり。で爆笑。
投稿元:
レビューを見る
わかりづらいところもあり、何度も同じ文を読んだして、最近こういう読書体験していなかったなと。三島由紀夫の凄さを感じました。