紙の本
ルポ川崎
2021/11/20 14:58
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投稿者:ごんちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
川崎に住んでいる私としては懐かしい感覚の本でした。彼らより前の時代になりますが、同じようにものすごく悪い中学校でした。そのころの話を東京の同僚にしても信じてもらえません。ルポに書いてある通り川崎の者でなければわからない感覚なのかち思いました。後輩が苦しみ新しい川崎の道を考えていてくれるところに少しだけ川崎が誇れる気がしてきました。
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<目次>
第1章 ディストピア・川崎サウスサイド
第2章 不良少年が生きる”地元”という監獄
第3章 多文化地区の、路上の日常という闘いと祭り
第4章 ”流れ者”の街で交差する絶望と希望
第5章 路上の闇に消えた”高校生RAP選手”
第6章 不況の街を彩る工場地帯のレイブ・パーティ
第7章 スケーターの滑走が描くもうひとつの世界
第8章 ハスラーという生き方、ラッパーというあり方
第9章 川崎南北戦争を乗り越えた男たちのヒップホップ
第10章 在日コリアン・ラッパー、川崎に帰還す
第11章 負の連鎖でもがく女たちの明日
第12章 競輪狂いが叫ぶ老いゆく街の歌
第13章 困窮した子を救う多文化地区の避難所
第14章 トップ・ダンサーが受け継ぐ母の想い
第15章 双子の不良が体現する川崎の痛みと未来
<内容>
「サイゾー」に連載された記事を加筆してまとめたもの。2015年に起こった少年の惨殺事件からこの記事は始まる。そして、川崎サウスサイドを中心に、そこで日々起こっていること、そこから生まれるもの。またその頃から激化した「ヘイトスピーチ」への彼らの抵抗(単なる「ダメだよ」という運動ではなく、心からの叫び)。いわゆる「不良」の生き方(ラッパー、ダンサー、ボーダーなどなど)。日本の下層社会の現状が描かれている。
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2021年8月19日読了。
月刊サイゾー連載の書籍化。
川崎はラッパーの宝庫なのか?と思うほど、ラッパーが出てくる。
著者も述べているが、連載にあたり川崎出身のラップグループ「BAD HOP」しかあてがなく、彼らにインタビューしてから次を考えていたので、致し方ない。
川崎といっても、南部のドヤ街や多国籍地域のルポ。
コロナ禍で彼らの生活はどのように変わったのか、興味がないこともない。
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昔、川崎駅ビルで4年くらいバイトをしていた。改札口と直結しているので、あまり外に出ず銀柳街辺りにたまに行くくらい。それでも川崎はガラの悪い町だと思っていた。今ではラゾーナや武蔵小杉のマンション群もあり、雰囲気はすっかり変わったと思っていたが、この本を読むとそれは表層的なことだったのかもしれない。
昔はギャンブル・風俗・ヤクザと解りやすかった問題が、今ではヘイトが加わっている感じだ。
もっともヘイトは外部から持ち込まれた問題のようだ。新大久保を閉め出されたレイシストがその活動中心地を川崎に変更したのは、多摩川中学生殺害事件がきっかけだという。警察に囲まれ保護されたヘイトデモは、カウンターと呼ばれる反ヘイト団体を挑発しつつ川崎市街を練り歩く。もともと外国系住民が多く住む町では、定期的に多国籍感溢れる祭りなど行い、何の問題もなく今まで暮らしてきたのに、突如ヘイトが現れ迷惑この上ない状況だ。
カウンターのなかでも一際存在感があるのが、今や川崎の音楽ともいえるヒップホップ系のミュージシャン達。我が町に入ろうとするヘイトデモを阻止するため、交差点に寝転ぶ。機動隊は彼らを路上から引き剥がす。カウンターの熱い魂には感心させられた。
しかし、今でも川崎の不良は中学からしてなかなかのものだ。日中から学校の近くでシンナーで酩酊。学校内の廊下を喫煙しながらすれ違った先生に挨拶。授業中に教室内で鬼ごっこをし、挙げ句窓から転落死・・・。隣り合った横浜鶴見や東京蒲田とは終わりの無い抗争を続ける。
東京の不良は色々な系統があるが、川崎は上を遡ればヤクザにたどり着く。行き場の無い子供達の居場所を作り、日本に馴染めない外国籍の子供達に日本語を教えるなど、これをヤクザ組織が行っているのだからどうしようもない。結局そこでお世話になった子供達が組や詐欺会社や風俗や暴走族などの組織に組み込まれていく仕組みだ。
ここ数年、他から川崎に引っ越してきたような人達は、是非読んでおくことをお勧めする。
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「川崎市」?大きな人口を擁し、“政令指定都市”ということになっている。他方、一寸申し訳ないが「印象が薄い?」という感も否定出来ないような気もする。
首都圏に入り込んで、JRや京浜急行の列車で東京・横浜間を移動しようというような場合、「川崎市」は「そう言えば通り過ぎる…」という感だ。また都内に在って誰かと知り合い、「御住い?」という話題に及び、最寄駅の名前が出て、住所を知ると「川崎市」となっているという場合も多いように思う。が、住所を知るまで「川崎市」を意識しない。
本書はそういう「川崎市」の中、「川崎区」に着目している。「川崎市」は東京と横浜の間、神奈川県側に南北に細長い市域を有している。「川崎区」はその南側である。
本書は、この川崎区で2015年に発生してしまった少年事件や、所謂「ヘイトスピーチ」の問題を契機とし、筆者が足繫く川崎区に通いながら綴った2016年頃の雑誌連載を下敷きとしている「ルポ」である。
本書に綴られる「川崎区」は、何処となく「米国の都市の一部?」というような雰囲気も漂う。所謂“ヤンキー”な世界、ヒップポップ関係、関連のカルチャー、“多文化”な感じ等、「こんな情況?!!」と驚きながら本書の内容に触れた。
読後には、本書との偶然の出会いを感謝したい気分になる。薦めたい一冊だ。
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20代のころからヒップホップが好きです。
もう47歳だから、ヒップホップ愛好歴は相当なもの。
川崎出身のBADHOPはシーンに登場したと思いきや、あっという間にスターダムにのし上がりました。
武道館公演まで成し遂げ、今や日本のヒップホップシーンをリードするグループです。
そんな彼らの経歴を紹介したテレビ番組を以前、視聴しました。
これが同じ日本かというくらい、荒んだ環境で生活していた彼ら。
喧嘩や薬物は当たり前、殺しだって起きます。
BADHOPは歌います。
JASRACが怖いので意訳すると、こんな歌詞です(JASRACがうるさいからと言われ、編集者から実際に原稿を直されたことがあります)。
川崎区で有名になりたいって?
なら、人を殺すか、ラッパーになるかだな。
すみません、あまり変わってないかもです。
そんな川崎区をルポルタージュしたのが本書。
BADHOPを主役級に据え、川崎区を舞台に活動するダンサーやスケーター、アーティストらを取材し、川崎区というまちを立体的に立ち上げていて読ませます。
読みながら、だんだん「日本が抱える問題が凝縮したまちが川崎区なのでは」と思うようになりました。
深刻な貧困、ヘイトデモ、陰惨な中一殺害事件…。
そんなディストピアのようなまちにも、一条の光があります。
困窮した子を救うための避難所「ふれあい館」の鈴木健はその一人でしょう。
若者の希望を体現し、フッド(地元)に成功を還元しようと奮闘するBADHOPもいます。
この先、日本全体が川崎区のようにならない保証はありません。
読んでおいて損はないでしょう。
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川崎に行く機会が増えたことをきっかけに読んだ。登場するラッパーの方の名前の読み方が一人もわからないほどHIPHOPに馴染みがなかった私でも興味深く読むことができた。
以下は読み終わって少し日が経ってしまってから考えたこと(細部や趣旨はズレている可能性あり)
取り上げられている方々にはそれぞれ違った背景があって一言にまとめられないが、音楽に興じるだけでなく、それを家族や仲間のため、地域のために活かしていきたいという信念は大方共通していると感じた。
困窮した子どもたちやいわゆる不良少年に手を差し伸べる「ふれあい館」の紹介も勉強になった。
人生の大半を川崎で過ごし、「世間の狭さ」を感じるという人の話が度々出てきていた。自分は経済面や環境面で恵まれているほうで、行動範囲こそ複数の地域やコミュニティに及んでいるものの、元々興味のあったものにしか目が行かず、精神的に狭い世界で生きていると気付かされた。何か大きな目標や信念を持って生きていきたいと思った。
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主に川崎南部の工業地帯にある荒れた地域にいる人々を取材した者。
まぁ川崎南部は何となく不穏な空気が漂っているが、そういう土地柄なのだということが分かった。
ルポということなので仕方ないが、ちょっと近視眼的な印象があり、もう少し大極的な見地で分析していように思う。
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子供の頃、正確には2歳から42歳くらいまで、神奈川県に住んでいた。
「男女7人秋物語」というドラマで、川崎が舞台になっていて、出来たばかりの「アゼリア」という地下街などには、行ったこともある。
しかし、川崎は横浜より、本を買う上では、馴染みが薄い。
京急川崎駅前に「文学堂」という書店があり、幾つかの本を買ったことがある。
山本文緒の「眠れるラプンツェル」(幻冬社文庫)と「緑の冒険」(岩波新書著者は覚えていない)は覚えているが、他にも何かあるだろう。
「文学堂」が無くなり、京急川崎駅前に「ダイス」という商業施設が出来て、その中に「アオイ書店」があって、松本清張の短編集などを買った覚えがある。
しかし、「アオイ書店」も撤退してしまった。
JR川崎駅に「ラゾーナ」という商業施設が出来て、「丸善」があるが、最近は行かない。
どの大都市でも、書店は少なくなっている。
どの街にも、ほとんど本を買う目的で行くことが多いので、この本に書かれていることは、事件の事以外は、ほとんど知識が無かった。
「チネチッタ」で映画を一度見たことがあるとか、「ルフロン」という駅ビルを知っているとか、川崎競輪場の場所くらいは分かるとかその程度である。
ましてや、ラップの世界など、ほとんど分からない。
僕らの若い頃には、まだ暴走族もツッパリやらスケバンやらもいたが、僕の知っている彼らとは川崎の若者は質が違っている。
若さの一時のカッコをつけた不良ではなく、環境から来る筋金入りとでも言おうか、逃れられ無さを感じるのだ。
少し前に見た「ストレスアウターコンプトン」という映画を思い出した。
ラップやスケボー、ダンスが一部の若者の希望になっているようだが、現実にはまだまだ変わり始めたばかりだろう。
ノンフィクションやルポルタージュを読むのは、僕が自分の知らない世界を、肌触りとして感じたいからだ。
時々、フィクションの世界を離れて、現実を見るのは必要である。
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正月が明けてしばらくの頃、セブンイレブン並みのドミナント戦略で川崎大師を囲むようにいくつもの店を構える住吉の久寿餅(くず餅)をどうしても食べたくなって、京急川崎から京急大師線に乗った。
向かう途中に、かつて日本コロンビアの工場があった港町駅がある。ひばりちゃんの「港町十三番地」にちなんでということらしいが、そんな番地は存在しないし、ここでレコードをプレスしたとしても、別にこの場所を歌ったものでもないはずなので、とくに港町っぽさも感じない。
この先の多摩川河川敷が、かつて川崎市中一男子殺人事件として有名になった場所だ。
主犯格の18歳の少年が指示して、複数の少年に刃物で被害者の少年の首を切りつけるように仕向け、失血死させた。その凶暴性から全国的にも有名になったこの事件、発生直後から地元でもその情報はすぐに出回り、犯人の素性もすぐに知れ、関連情報でSNS(LINE)ではお祭り騒ぎになったとか。不謹慎というのは、この街を知らない人が言うのであって、ここではそれが普通。地元意識が強いというのは良い言い方であって、要するにここは閉じられた地域なのだ。彼らの間では出身中学での仲間意識が強いらしい。なぜなら中卒、もしくは高校中退で学歴が終わっているから。その狭い地域内での仲間意識が強いので、仲間うちでの伝達スピードはとても早い。誰々の兄貴が捕まったとか、誰々の姉貴がどこそこの風俗店で働きだしたとか、瞬時に伝わるようだ。
場所は都会のすぐ近くなんだけど、個人のプライバシーがすぐ漏れる。社会的には田舎だ。
貧困の連鎖が顕著だ。京浜工業地帯のど真ん中に位置している川崎は、高度成長期には全国から職を求めて多くのガテン系の人が集まった。今も基本的にはガテン系の街。外国人出稼ぎ労働者も多く、ある程度の生活基盤をつくると本国から子どもを呼び寄せる。しかし親世代が日本語をうまく話せないため、子どもも学校に溶け込めない。結果落ちこぼれて不良になる。酒やドラッグに手を出し、刺青を入れたり、それは大人になるための通過儀礼?という感じだ。ヤクザに上納金を納めるために、カツアゲや強盗、窃盗などでそのお金を捻出するらしい。(個人的には、それほんとにヤクザ?と疑問に感じる。そんな端金にしかならないシノギって、下っ端の下っ端だと思う)
そんな地域で人気があるのがヒップホップらしくて、有名なラッパーを多く輩出しているらしい。全く興味がないので誰ひとり知らないけど、たぶんビッグネームなんだろう。
ドロップアウトした子どもたちの行き着く先はヤクザか風俗か、という狭い選択肢の中にラッパーが入ったらしい。
この本、ほぼラッパーつながりで書かれたものなので、ラッパーたちからみた川崎、って感じで読んだほうがいいと思う。
全体像を示したいならもっといろんな人に取材するべきだが、もとから意図していないみたいなので、ヒップホップ文化に興味のある人が読めばいいと思う。
帯のキャッチコピーには「ここは地獄か?」とあるけど、そこまでひどくないと思う。これが地獄なら隣接する鶴見だって似たような地域だけどなぁ、と感じる。
取材���た人たちの生い立ちが、地獄のような家庭環境だったということなら、納得はする。
直木賞受賞作「テスカトリポカ」の参考文献に載っていたから読んでみたけど、さすがに小説ほどひどい現実はなさそうだった。メキシコのギャングだとほんとに平気で人を殺すからなぁ。川崎は中一殺人がLINEでお祭り騒ぎになったけど、逆に言うと、それはレアケースってことでしょ? そんなに深い闇は感じない。
そうそう、書き忘れた。
川崎には前述のように、日本以外の国がルーツの人が多い。そんな地域性のためヘイトデモの標的になった。
でもヤンキー気質が良い面で働き、地域ぐるみで協力して反ヘイトデモに繰り出し、これを撃退した。そういうところは、ただヤンチャなだけじゃなくて、良いなと思う。
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筆者も後書きで認めてますが、断片的、表面的です。昔の話も混ぜてあるので、今起きてることだけでも無さそう。ただこういう悪い話だけを断片的に書いてしまうというのは、川崎に対する偏見を助長するということにならないのかしら。ヘイトスピーチの問題もかいたあるので、なおさらそう思ってしまいました。そこに至った事情まであると深みが増すと思うのですが。あと一歩踏み込めればなぁと。
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訴訟 おおひん地区(桜本/大島/浜町/池上町) かんや寒夜に裸で川を泳がせた末 イスラム国の処刑映像を模したのではないか 下世話な興味を煽っていった 美空ひばり「港町十三番地」のメロディ 下流の方向に味の素の工場 すいきゃく酔客 ”川崎ノーザン・ソウル“という郊外の憂鬱 山田太一と小沢健二の対談 ポリティカル・コレクトネスなど知ったことではないというような遠慮のなさは 紫煙を燻らす 諦念がある 狭いエスニシティ(民族性)に囚われていなくて 酒池肉林を続いているのだろう 晩秋の乾いた空気に打鐘が響き渡り にんぴにん人非人扱い 友川カズキを追ったドキュメンタリー映画『花々の過失』 「生きてるって言ってみろ」 日本三大ドヤ街に数えられる横浜市中区寿町 見下すことで文字通り差別化したいという欲望があったのかもしれない ドツボの連鎖 問題の不可視化 桜本は閉ざされた空間だったと思う そういうスワッグの追求は ルポタージュ(現地からの状況報告)の体裁 (リーマン・ショック)で底が抜けた 底辺で横並びになった ”夢“がなくなり”予定“だけが残る下降プロセス 好景気は人手不足を招来し 平成の下り坂に跋扈した自己責任論の変種 国家を笠に着た粗雑でズレた上から目線 成長の為に膨張した街で、成長が終わった後にどう生きていけばいいのか。
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普段読むような物語じゃないから、なかなか読み進めるのに時間がかかったけど、おもしろかった。家が近くて用事はいつも川崎だから、これ読みながら探検したい
わたしももっと過酷な環境で育ってたら、熱いリリックかけたかな笑
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2021年の32冊目
2015年2月に起きた中一少年殺害や日進町簡易宿泊所での大規模火災をきっかけに川崎に興味をもった著者によるルポタージュ。特に川崎区に焦点があてられていて池上町出身のBAD HOP、川中島出身ScarsのA-thug、西口の木造アパートに住むフォークシンガー友川カズキ、桜本のふれあい館などが出てきます。
北部vs南部とか川崎区vs鶴見区とか本当にあったんだってびっくり。
馴染みのある街の底辺のリアルでしたが、希望みたいなのも少々感じます。
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①HIPHOPは好きでよく聞いていた。川崎と言えばSCARSというのはなんとなく知っていたが、SEEDAやNORIKIYOなどが有名だと思っていたし、BADHOPはオートチューンが苦手であまり聞いた事はなかった。
②今回BADHOPの背景が知れて非常に興味が湧いた。THABLUEHARBのようなどん底から這い上がるといったHIPHOP的精神とはまた違うどん底が垣間見れて、日本であって日本でない世界観が新鮮だった。
③部落問題や二世三世の話など、知っている人権問題とはまた違う視点での切り取り方だった。いくつもの世界観を集めて知見を得、新たな発見をする。読書の良いところはここですね。