紙の本
100分de名著の延長戦
2023/05/23 19:10
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投稿者:ぶんてつ - この投稿者のレビュー一覧を見る
NHKの「100分de名著」という番組では、伊集院光さんは「未読の人」という難しい役割を担っている。
それでいて、伊集院さんは名著の解説者に自分の意見を投げかけ、「初めて聞いた解釈、面白いですね」と言わしめるビッグバン的な「無知との遭遇」(伊集院さんの用語)現象を引き起こす名人芸を見せてくれる。
この本は、その伊集院さんが番組で紹介した名著を、番組終了後に読んだ中から3冊厳選して、もう一度番組で解説してくれた先生とトークを繰り広げた対談集。
取り上げられている3冊と対談相手は次のとおり。
1.カフカ『変身』、川島隆(京都大学准教授)
2.柳田国男『遠野物語』、石井正己(東京学芸大学教授)
3.神谷美恵子『生きがいについて』、若松英輔(批評家、随筆家)
「100分de名著」で伊集院さんの視点に馴染みがある人には、延長戦として楽しめる本になっています。
(深堀を期待する人は、上記3冊のNHKのテキストを読んだ後に、この本を読むほうがいいかもしれません)
紙の本
広がる考察の心地よさ
2022/11/22 22:02
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投稿者:ヒグラシカナ - この投稿者のレビュー一覧を見る
複数の書籍について触れているが、
私にとっては特に、神谷美恵子『生きがいについて』についての
部分がとても良かった。
自分一人で読めない、読んでも疑問点がある、より深く広がる
考察を他の人と共有したいときにお勧めの一冊。
読書の楽しさが広がる感じを受けました。
電子書籍
変身、遠野物語、生きがいについて
2022/07/08 18:27
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投稿者:6EQUJ5 - この投稿者のレビュー一覧を見る
伊集院光さんがNHKの「100分で名著」に登場した中からカフカの変身など三作を選び対談をまとめた一冊。遠野物語への言及は興味深く読みましたが、もう少し鋭い切り込みを期待していました。
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Eテレ「100分de名著」で取り上げられた『変身』『遠野物語』『生きがいについて』を、番組での解説担当者と伊集院光さんが語り合った著作。伊集院さんが、収録後にそれらを読み返して、再度聞いてみたくなったことを、担当者に聞いたのだという。番組を実際に見ていれば、一層楽しめたことと思うが、この本単独でも、十分に楽しい。特に、『生きがいについて』(若松英輔さん)に関する対談がよかった。
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伊集院光さんの「100分DE名著」が好きな人はぜひ読んでほしい。無知の知と、知の力が合体すると、こんなにも身近で面白くなります。
NHKオンデマンドに登録するほど100分DE名著が好きです。テーマになる古典1冊1冊を25分刻みで読み解いてくれる構成。NHKアナウンサーの丁寧な進行、専門家の解説がある。
しかし、それだけだとEテレの学生向け番組の1つとしてしか見なかったでしょう。この番組が10年近く続いているきっかけは、伊集院光の存在です。
本の巻末にも少し触れていましたが、彼は「知らない人」として登場します。古典がかかれた歴史的背景、作者の経歴にも詳しくない。一見、不釣り合いに見えるかもしれません。しかし、その0ベースで古典に迫るアプローチが、私達の理解を助けてくれます。
専門用語ではなく、経験で「例える」、身近な出来事に置き換える。一言で要約する。それは知識を持ちすぎてしまうと難しいことばかりです。「エビデンス」や「オーソライズ」といった横文字を覚えてしまったビジネスマンが、若手社員を困惑させてしまうようなものです。
この本では、過去取り上げられた古典を再度読み直し、対談します。いわば「100分DE名著、未収録の5回目」のよう内容です。
番組と同じようにここでも彼の無知の知と、わかりやすい比喩表現がいかんなく発揮されます。そして自慢ではなく、失敗談が多いのもいいですね。私のような小市民の共感を呼びます。
この本を読んで、まだ手にしていない本にチャレンジしてみようと思いました。
『生きがいについて』、読んでみよう。
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名著の話、特に読むべきとされる本は多くありますが、そうした話をするときに、どうしても読んだ前提での話となってしまいます。
そうした前提で進めていくと、どうしても知識の披露のし合いのような、妙な雰囲気が生まれてくるもの。
読んだことのない、素晴らしい本について、内容は知りたいんだけれども、難しすぎてとっかかりが掴めない、という人に向けての番組が、この「100分で名著」。
タイトル通り、25分×4回の放送で、毎月違う本を取り上げて解説していくという、ユニークな内容。
そんな中での伊集院光氏の役割は、ターゲットとされる視聴者と同じ、読んだことのない人。だから、解説だけでなく、読んでない人からの質問などが、非常に具体的で、専門家だけで置いてけぼりになりにくい構成となっている。また、読んだ人でも、なるほどこういう視点があるのか、という気づきが多い番組です。
さて、そんな2011年から長期間にわたって放映されている番組の中から、伊集院氏が印象に残った3冊について、書かれているのがこの本。
1冊目の『変身 (カフカ)』は、すでに読んでいる内容であり、かつテレビ放映も観ていたのですが、番組の焼き直しかと思いきや、また少し違っていて、非常に面白かったです。
朝起きたら虫になっていた、という衝撃から始まるにもかかわらず、なぜ虫になったのか、名探偵コナンであれば映画の冒頭で毎回説明されるのに、全くそのことに触れられていない不気味さ。
そして、これはネタバレになってしまいますが、結局人間に戻ることもなく、死んでいくという悲惨さ。
読んでいて、なんだか虚しさを感じて、読んだとき、なぜこれが名作なのか、正直全くわからなかった私にとっては、当時はただ読んだという記録だけしか残りませんでした。
しかし、虫が何を意味しているのか、主人公と妹の関係だとか、深く考えるほど面白い部分があって、なるほど共感できる部分も多いな、と趣向している自分がいました。
ブックレビューや考察は、可能性だと思います。
しかし、その可能性とは、無限に広がっていくものであり、それらがまた新しく作品を作り上げているように思えます。アマチュアもプロも、やはりレビューは全く同じものを読んでいたのにも関わらず、全く違った切り口であるところが大変面白く、そうして再び手にとってしまうのが、読書の愉しみではないでしょうか。
ときには、専門家の視点から見てみる文学作品の面白さをこうして疑似体験するのにはよいのかもしれません。
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『100分de名著』のスピンオフのような対談集。
伊集院さんが、『100分de名著』で取り上げた作品のうち、本編を読んで、そのうえでもう一度先生方と語ってみたい、と思った三作品、『変身』『遠野物語』『生きがいについて』。
驚いたのですが、伊集院さんは番組収録の前に取り上げる作品を読むことを禁止されているのだそうです。
ほぼほぼ作品の知識が真っ白な状態で収録されてるんですね。
それなのに、あの理解力、例え力、凄いです。
三作品すべて興味深かったのですが、圧巻はラストの神谷美恵子『生きがいについて』。
おふたりが対談を通じて、本を通じて、深く、濃く、通じ合っていく過程を見せてもらえたよう。
これぞ「対話」。
本編を読んでからまた読んでみようと思えました。
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「100分de名著」ホスト役の、伊集院光さんと、番組でそれぞれの回に解説者として出演しておられた専門家の事後対談集。取り上げているのは次の三作品。
フランツ・カフカ『変身』
柳田国男『遠野物語』
神谷美恵子『生きがいについて』
共通して見えてくるのは、行き場のない者、出来ることを奪われた者の、その先にある『生きることの問い直し』のように思う。この本については、まず、番組を配信で見直すか、題材になった本をよむのが良い。しかし、それも大変…ということなら、全く知らぬまま、読まぬままより、
「この有名な作品は、こういう内容だったのか。ふうん。」
という感じで、刺さったものだけでもお手に取られると良いと思う。実際私は、『変身』は再読。『遠野物語』は、今はピンとこなくて、『生きがいについて』は初読。明日、カフカと神谷美恵子を借りに行く。柳田を放っておいて良いわけではないが、興味が湧かないものは致し方ない。ただ、人間何がいつ刺さって読み時になるか分からないから、サラッとでも知っておくのが大事。何も知らず、敷居が高いままだと、興味を持つこともないまま過ぎる。読書案内って、成果を求めるんじゃなく、ぱらぱらっと自分の内側に花の種を撒くようなものだ。花じゃなく竹とか生えてきても、それでいい。芽が出なくとも、それはそれで意味があるのだ。
各回の解説担当者の方も、伊集院さんも、番組以上にご自身に作品を近づけて語ってらっしゃるので、自分が読んだ時には、全く違う解釈鑑賞がでてくるかもしれない。でも、良いと思っている。
カフカの主人公、グレゴール・ザムザがりんごを投げつけられる意味も、アダムのりんごのように性的なメタファーだと読む説も紹介されていたが、それでは収まりきらないという。私自身は、あれは、虫になったザムザに対する、人間界、一般社会からの追放を意味するのだと読んだ。りんごは知恵の実。知恵があるから人は人足りうる。その知恵を凶器にされて大怪我を負うのは、まるで「もうお前はこの世界の住人ではない」と、知恵を剥奪されているように見える。
実際は彼の内面は、人のままなのに。周囲にとって『虫に変容してしまった人』から『ただの虫』にされてしまった、決定的瞬間だ。りんごをぶつけられるまでは、ザムザは虫の姿をしていても、人間だった。人間でなく虫なら、知恵も思考もいらないもの。叩き潰していい。そんな無言の理屈が成り立った時、ザムザは一家から排除されてしまう。事実あれ以降彼は忘れられ、衰えてゆく。
一方、神谷美恵子の存在した場所。一身を捧げた場所もまた、そこに行く前と後で、人生の色合いを強制的に変えられてしまう場所だった。らい病患者の方々の療養所。神谷自身は患者ではなく、外からの来訪者だった。
旧来、正しい知識や有効な治療法が理解されず、苦しむ方の多かったらい病。その療養所にあって、患者の方々が、どうご自身のこころを守り、日々を生きたか。
どちらの作品も、『自ら望んだ人生の変化ではない』のに、それを自分で引き受けてゆかざるを得ない状態が描かれている。ザムザは、虫に���っても仕事が気になる。どこまでもこころは人間だからだ。実在の闘病する方々は、言うに及ばない。失うことの多い中、こころは確かに社会に在るままだ。
私達が、この生きづらい日々を切り抜けていく時、その描かれた有り様から、何を感じ、すくい取ることができるだろう。原典を読んでみようと思い至ったのは、こんなことをぽつぽつと考えたからだ。コロナ禍にしても、重い病や生活苦にしても、気がつけば捻れてしまった心にしても、懸命に生きているのに、まるでりんごが虫の殻を破るように、不意に私達を押しつぶす時がある。そこで、そのままになるか、ゼロ、いやマイナスからでも、新しい思慮によって生き直せるか。
本を読んだからとて、飛んできたりんごが、どくわけではないが、ついた傷に自ら手を添え
「まだ、もうちょっと。」
と言えるのか。何かの価値観の変換がないと、ひとりで生き方のギアを変えるのは難しい。そこのところを変える伴走者、渇ける人の隣を流れる伏水には、どの本もなってくれそうだ。
それと、余談であるが、このご本の中に、故・井上洋治先生の事が述べられている。若松先生は、井上先生に師事しておられたとか。道理で若松先生のお話ぶり、書かれる言葉が懐かしく、慕わしいはずである。ずっと、
「どなたを思い出すのかしら?」
と思っていた。井上先生だった。18歳からはたちの、まだ心のやわらかな時に、キリスト教学や人間学のお授業を受けた。いつも、誰に対しても、声を荒らげたり、不快な顔をなさったことのない先生で、慈しみに満ちた笑顔で学生に接してくださっていた。出席票の裏をコメントペーパーにして提出するのだが、どんな意見を記しても、そのお声の温かさは変わることなく、誰にも真摯に向き合ってくださっていた。
その頃は、何も思わずご一緒させて頂いたが、この歳になって、自分が新たに病を得たり、家族の支えにならなければいけない時、ふと先生のお講義を思い出すことがある。あのように接しなくては、と。自分のことや、ちいさな家の中の出来事など、コップの水の乱れのようなものだけれど、考えるのだ。
『投げ出してはいけませんよ』
と、きっとおっしゃるだろうと、自分にもう一度力をつける。不肖の学生で、当時ご心配もたくさんきっとかけた気がする。井上先生お一方だけでなく、あの頃出会ってくださった先生方に、それぞれ勉強だけでなく、普段から学ばせて頂いていた。感謝しかない。こんなところで思い出深い方と再会させていただけるとは……。
生きているのも、いいものである。
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『100分de名著』を観ていない。カフカ以外は読んだことがない。それでもこの本は面白かった。
伊集院さんは全く知らない状態で番組に臨むという。そして、番組での紹介を終えた後にその本を読み、もっと語りたくなってそれぞれのガイド役の先生方と対談した記録が、本書の内容である。本について語ることの楽しさ、さらに伊集院さんの直観的な表現(体現)と、それに対する先生方の反応が、新しい視野をグイグイ広げてくれる。特に若松英輔氏との対談は何度も読み返したい。もちろん「名著」もあわせて。
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名著3作の簡易説明後、素人と専門家の対談で紐解く本であった。
この本、万人に興味をひかせる為に「カフカ・変身」を表に持ってきてはいるが本当に推しているのは「生きがいについて」では?
とにかく、自分の解釈で楽しめば良いと気付かされました。
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カフカさん目当てで読んだら、「生きがいについて」にやられた。そもそも、そういう本なのかもしれない。有名なカフカさんで興味を持たせて、「生きがいについて」に誘導するという。それくらい「生きがいについて」のパンチ力が強い。
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100分で名著で取り上げた本のうちの3冊を対談集として本にしたものです。
カフカの「変身」柳田国男の「遠野物語」神谷美恵子の「生きがいについて」
テレビでも楽しく観ましたが、この本もさらに距離が近づいた感じでした。
またこの3冊を読み直してみたいです。
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本を自分に引き寄せて読む、本について誰かと語り合う、すると読みが深まることがわかる本。続編を期待。「生きがいについて」読みたい。
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伊集院光さんの深夜ラジオのファンです。100分de名著も録画して拝見しています。伊集院さんが番組後に名著を読まれて、解説の専門家の方に感想を伝えて、名著の理解が深まっていく。本というのは体験なのだと改めて感じました。国語のテストで「著者の意図は…」にたったひとつの答えがあるのに我慢ならなかったワタシが救われました。もっと他の名著でもやってほしいし、番組にしてほしい。
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伊集院さんの「名著素人としての発言」が、名著素人の私の心にすぅーっと入っていき、理解が深まる感覚がとても心地よいです。
そういえば、学生時代に『生きがいにいつて』読んだことあるかもと思い出し、、、
今度実家に帰った時に探してみようかなと。