村の社会学 ──日本の伝統的な人づきあいに学ぶ
著者 鳥越皓之
日本の村々は、長い歴史のなかで工夫に工夫を重ね、それぞれの風土に根ざした独自の生活パターンと人づきあいのあり方をかたちづくってきた。そのしくみや特徴をつぶさに観察してみる...
村の社会学 ──日本の伝統的な人づきあいに学ぶ
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商品説明
日本の村々は、長い歴史のなかで工夫に工夫を重ね、それぞれの風土に根ざした独自の生活パターンと人づきあいのあり方をかたちづくってきた。そのしくみや特徴をつぶさに観察してみると、村を閉鎖的で前近代的なものとみなすステレオタイプこそ、むしろ古びたものにみえてくる。コミュニティの危機が叫ばれる今日、その伝統を見つめなおすことは私たちに多くの示唆を与えてくれるのだ。日本の村に息づくさまざまな工夫をたどり、そのコミュニティの知恵を未来に活かす必読書。
目次
- はしがき/第1章 村の知恵とコミュニティ/1 村の知恵/人間関係に迷う/知恵の発光体/コミュニティとは/2 コミュニティの構造/なわばりの否定/なわばりと居場所/他者への配慮となわばり/孤立化とあたたかみ/コミュニティの典型としての村/第2章 村とローカル・ルール/1 村とは何か/ふたつの村/地域経営としての村/2 ローカル・ルール/住民を強制すること/つとめ/作法という名のローカル・ルール/3 生活組織としてのコミュニティ/町内会/小学校区のコミュニティ/第3章 村のしくみ/1 村のタテの構造と関係/家格と年齢/目上・目下の判断/親分・子分/庇護と奉仕/2 村のヨコの関係/現実と幻想と/技と作法/ヨコの関係の強い村落構造/信仰的な講の裏のはたらき/3 人間と自然/採取から開墾へ/人間参加型自然/山が荒れる/肥料/村の空間的構成/村の山と水/自然と争わない/4 村での仕事と権利/トレードオフと話し合いの重要性/リーダーを悪者にしてもよい理由/村の生活維持/共同労働と共同占有/個的役割とリーダーシップ/文化型リーダー/利用権に対する配慮/フェイス・トゥ・フェイスの現場/第4章 村のはたらき/1 交換不可能性とエゴイズム/交換不可能性/エゴイズムを抑える/2 弱者救済/家族における弱者救済/三世代家族の長所/やわらかい三世代家族/村における弱者救済/弱者/に与える特権/子どもたちも働く/3 災害対応/地震への対応/村での水害/火事──許されない失敗/4 村の教育──平凡教育/平凡教育と非凡教育/カツオの変身/知恵としての平凡教育/学力とは/第5章 村における人間関係/1 あいさつ/簡便なコミュニケーションの手段/あいさつの型/呼びかけ/2 不公平を嫌う/損をしない/「不公平」という切り札/3 話し合いと意思決定/意思決定のかたち/寄り合い/全員一致制/第6章 村の評価と村の思想/1 村の意図的消滅論/個人の自由を束縛する/近代文学における個の自立論/2 村の自然消滅論/近代化のプロセスとして/民主主義と権威主義/村と資本主義的生産/近代技術のプラス・マイナス/過疎化の危機/3 Society 5.0と異なる方向へ/Society 5.0とは何か/自然を活かしたつきあい/当たり前の平たい人間関係/自由主義と共和主義/反君主制としての共和主義/村は共和主義か?/村の知恵を活かす/あとがき/注/参考文献
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読む側にゆだねた感じ
2023/10/24 10:05
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:とらとら - この投稿者のレビュー一覧を見る
社会学、という書名なので、もう少し学術的な本かと思ったけど、わりと軽めの読みものという感じの本だった。村イコール古い封建的なもの、というのではなく、生活者のコミュニティとしての基盤や知恵があるんだよ、ということ。現在、そういったものがなくなってきていること、行政へ頼るしかないようなところなどを、ちょっと憂いている感じだけども激しく批判しているわけでもなく。いろんなことを読む側にゆだねたような文章が多かった。本文のなかにあるお坊さんのような役割なのだろうか。
村は、日本の伝統的な人付き合いの場。
2023/03/28 21:07
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:おじゃもんくん - この投稿者のレビュー一覧を見る
親の実家が農村部なのだが。
子供の頃から街に住んでいる私にとっては、不思議な空間だった。
ドラマ等の物語によく出てくる、封建的閉鎖空間では無く。
田んぼやはたりが広がり、お祭りがあり夜は真っ暗で。
虫やメダカを観察して、楽しんでいたなぁ。
筆者は、日本の村落を長く研究し観察していて。
この本も、日本の隅々の農村・漁村を巡り巡ってたどり着いた結論が書かれていて。
村々が、長い歴史の中で工夫に工夫を重ねて。
それぞれの風土に根ざした、独自の生活の中の人付き合いのあり方。
それを詳細に観察して行くと、村は閉鎖的でも無く古いものでも無いと定義。
村を前近代的なものとみなす、社会のステレオタイプな部分が古びて見える。
村の作り上げたコミュニティーこそ、今の私達に必要なものを示している。
なかなか、目から鱗な事例が多くてびっくりでした。
本書は、村の知恵やコミュニティー・そしてローカルルール等仕組みについて解説して。
中頃で、村の働きや人間関係・思想について。
後半は、村の意図的消滅論や過疎化の危機について書き。
自由主義と共和主義は、個人主義と村社会として。
村は共和主義で、その村の持つ知恵を活かす時代に来ていると締めくくっている。
なかなか奥が深い「村の社会学」でした。
たわけ者
2023/04/11 16:00
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投稿者:とめ - この投稿者のレビュー一覧を見る
村=田舎と侮るなかれ。都会の砂漠の一粒の砂として生きる気楽さと束になって対応するという生き残り策との対比などから、生きるための知恵のうちの日本人の伝統的な人づきあいを考えている。