紙の本
うどんが好きでで集まると平和になるのかも。
2023/09/10 14:06
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投稿者:びずん - この投稿者のレビュー一覧を見る
蕎麦じゃなくてうどんだ。平和でいるためには、「まいっか」とか曖昧な部分がないとできない。でも平和だと、均一されてしまって、それに耐えられない人が飛び出して、より幸福とか優劣とかを求めていく。平和な人は戦うのが面倒なだけであって幸せを求めていないわけではないのだけれど、何故かどっちの味方だなんだかんだと巻き込まれがちだ。うどんが食べれれば良いです。
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表紙もうどん
2023/08/31 14:50
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投稿者:ぽんぽん岩 - この投稿者のレビュー一覧を見る
4年ごとに開かれる会社の代表選挙。こんな面倒なもんに『うどん』がどう絡む?春の味覚と秋の味覚が争う某チョコ菓子のような選挙?社食のメニュー?と不思議に思ってたら、ちゃんと社内政治だった。
決選投票にもつれこんだ代表選挙。誹謗抽象や精神的な揺さぶりなど卑怯な遣り口でいっぱいです。社内はもちろん業務後でもイヤな雰囲気ですが、緑山陣営の人たちがうどんうどん言ってるのがやわらかさをかもしだすからか楽しく読了。
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うどんが食べたくなる
2024/03/17 18:48
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投稿者:とりまる - この投稿者のレビュー一覧を見る
会社の代表を決める社内選挙にまつわる人間関係のあれこれ。
主人公は特に熱心な誰推しと言うことはないものの、美味しいうどんを提供してくれる緑山氏の会によく出席していた。
緑山氏は最初の選挙に敗れたがまだ最終の代表選挙が残っており、各陣営からの負けた陣営の票の取り込みや、対戦相手への醜聞工作がコソコソと横行し面倒くさいことに。
社内選挙というものの経験がなく良く知らないのですが、弱ってる人を数人がかりで取り込もうとしたり、相手の陣営の醜聞動画を社内メールでながしたり、こんな宗教くさい面倒くさいことをするものなのかなぁ?と知らない世界を覗いた気分になりました。
(フィクションだと思いますが)
話自体は普通かな?
そして主人公がうどん食べてるシーンが多いので、うどんが食べたくなりました笑。
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現実と少しかけ離れているかも
2023/11/26 17:38
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投稿者:ME - この投稿者のレビュー一覧を見る
会社の代表(社長)は社員の選挙でえらばれることはないと思うので、現実とは少し異なると思った。著者独特の温かい人たちに囲まれるというのはいいですね。
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会社の代表を選挙で決める会社の話。他の方が書いておられる、「津村さんらしいキャラクター像」はよくわからなかったが、なんだか現代日本の選挙を象徴しているような候補者と選挙運動で、「誰に入れてもなぁ…」感がおもしろかった。派閥はよく揶揄されるが、それをより誇張した選挙(しかも選挙運動は何で釣ってもOK)を描いた作品はなかなか無いので、ユーモアが効いておもしろかったな。
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1cmも厚みのない本で、スラスラ読める
社内派閥の緑党とか黄色党とかの話
主人公はただうどんが好きなだけで
派閥の動向にはそんなに興味がないあたり
津村作品らしくて好き
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会社内の勢力争いのバカバカしさをコミカルに描いた中編小説。
物語は、小林という女性社員の視点で描かれる。
◇
社之杜社は、20年前に現在の場所に進出し、地元企業の野乃花社を吸収合併した。
以後、民主的で公正を謳う社之杜社では会社の代表(社長)を4年ごとに選挙によって決めるシステムを採っている。
選挙は2回制で、1回目の予備選で候補者を2人に絞り、2回目の決選で代表を決定する。もちろん投票権は全社員にある。
今年が代表選の年に当たり、先頃行われた予備選で2人の候補者に絞られたばかりだ。
小林の支持している緑山は3位に終わった。けれど支持者たちは「残念また4年後に」と言ってひと息つくことができない。なぜなら、3位票を取り込むべく2人の候補者側の暗躍が始まったからである。
そんな受難の日々にうどん陣営と呼ばれる緑山陣営の面々は……。
* * * * *
社内での勢力争いの生臭さが、リアルにかつコミカルに描かれていました。
まず候補者たち。
現代表の藍井戸とかつての代表の息子である黄島。どちらも保守的です。
2人とも会社の業績の悪さを理由に上げて、藍井戸は減給を、黄島は旧野乃花社社員のリストラを掲げています。ただし自分の陣営の人間に損害が及ばないように画策している模様です。
小林がどちらの候補者も「くそだ」と思うとおり鬼畜の所業ですが、これこそ経営陣あるあるで、『半沢直樹』でもよくお目にかかります。
小林が支持する緑山候補はリベラル派です。
偏った給与引き下げやリストラには反対のスタンスで、旧野乃花社社員や現地採用の社員が支持していますが選挙では一歩及びません。こういう公正でリベラルな候補者が勝てないところも現実を見ているようで唸ってしまいます。
ここで主人公が「倍返し」とばかりに起死回生策を実行し、勧善懲悪を成し遂げれば、まさに『半沢直樹』の世界なのだけれど、そこは津村記久子さんです。結果がどうなるかは、読んでからのお楽しみということで。
ところで、タイトルになった『うどん陣営』について。
緑山陣営の人間には夜型の人が多いため会合が 23 時から開かれるのですが、その際おいしいうどんが夜食として振る舞われることが通例になっています。土地柄、地元社員にうどん好きが多いことが理由でしょうが、ここから「うどん陣営」と呼ばれることになったそうです。 ( みんながこのうどんを楽しみにしているというのが、何かほのぼのしていていいですね。)
うーん、「うどん陣営」。この感覚、好きだなあ。『水車小屋のネネ』の「鳥の世話じゃっかん」を思い出します。気に入りました。
藍井戸や黄島陣営の人間たちの恫喝や懐柔策など生々しい描写もありながら、胸くそ悪くなるところまで描かないのはさすが津村さんだと思います。
そして『うどん陣営』。
社内政治や権力闘争の陳腐さや面倒臭さをリアルに描いているのだけれど、津村さんらしい筆致で読みやすかったです。
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4年ごとに開かれる会社の代表選挙で、現社長は
手堅い保守層の支持を集め、対抗馬は過激な
スローガンを掲げる。両陣営の醜聞合戦、囲い込み
工作…。社内政治の面倒臭さをリアルにコミカルに
描いた中編小説。
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初めて読んだ「水車小屋のネネ」がとても相性良かったのでなにはともあれ読みたい。内容紹介で書かれた状況が、津村ワールドでどう展開されていくのかにとても興味がわく
#うどん陣営の受難
#津村記久子
23/7/7出版
#読書好きな人と繋がりたい
#読書
#本好き
#読みたい本
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感想
社内政治をどう勝ち抜くか。候補者同士の潰し合いは怨嗟を生む。それならなんとか協力できる道を探す。ゲーム理論の基本にして奥義。
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あなたは会社で、どの『陣営』に属しているでしょうか?
なんともきな臭い質問から始まった本日のレビュー。せっかくの趣味の読書が台無しになりそうですね。失礼しました。そもそも会社員でもない方にはなんのことだかわかりませんよね。
ただ、会社員であろうがなかろうが、例えばこの国の政治の世界に派閥というものがあるのは誰も否定できないことだと思います。派閥の領袖と言われる人をトップに据えるために、そこにはさまざまにきな臭い動きが繰り広げられていきます。派閥政治は良くないと言われはしますが、よくよく考えて見れば、会社組織の中にも派閥というものは間違いなく存在します。地域のコミュニティだって似たり寄ったりです。さらには、学校にだってグループという名のまとまりが存在します。今までの人生の中でそんなものとは一切無縁!という人生を生きてきた方はいないでしょう。人が群れの中で生きる生き物である以上、派閥、グループと名前を変えても、人が群れの中にさらに群れを作って…という習性は決して変えられないのだと思います。
さてここに、『四年ごとの会社の代表を決める投票』によって蠢く社内のあり様を描いた作品があります。『第一回投票』の結果が出た後から始まり、『決選投票もおそらく接戦だからね。ちょっとどうなるかわからない』という動きが描かれていくこの作品。そんな舞台に、表紙が揶揄する『うどん』が美味しそうに登場するこの作品。そしてそれは、『給料を減らさないでくれ、ということと、人を減らさないでくれ、ということ』を願う『うどん陣営』に属する人たちが受難する様を見る娯楽劇な物語です。
『その日は緑山さんの落選後の最初の金曜日だか土曜日だった』という日に『会社の会議室に出かけ』たのは主人公の小林。『議長の緑山さんの大学時代の友達の実家が、この近所で製麺所をやっているから、安くておいしいうどんを出してもらえる』という場で『食べるうどんはおいしい』という小林は、『第一回投票の直前に集まったのと同じぐらいの人たちが来てい』る会議室を見回します。『私たちは代表選で負けたし、もうばらばらになってもよかった』ものの緑山さんが『熱心に呼びかけた』ことから開かれた会合。『かき揚げはもうないんだって』、『あー今日もか』という会話の中に談笑する面々を見回し『今日はどのくらい現地採用の人がいるんだろうか』と小林は思います。『二十年前にこの土地にやってきて、地元にあった野々花社を吸収合併した』のが小林が勤務する『社之杜(やしろのもり)社』でした。『地域の伝統的な丸い帽子をかぶっていて、主食がうどんで夜型の人たちのうち、二十年以上勤務している人たちは、どの人も野乃花社で働いていた人たち』です。『穏当な買収だった』か、『敵対的なものだった』かについて今も分かれる社員の意見。そんな中、『先日、四年ごとの会社の代表を決める投票が』行われましたが、『この会合の議長である緑山さんは、四年前』に続き落選はしたものの『得票率24%で三位という結果に終わ』りました。『一位の藍井戸には4%、二位の黄島には2%という僅差』とは言え『決選投票である第二回投票に進む権利を失った』緑山。そんな緑山は『十五年前まで社食になかったうどんを導入する運動を』繰り広げるなど『主に元野々花の社員さんや現地採用の人々』などの『権益を代弁』してきました。『給料を減らさないでくれ』、『人を減らさないでくれ』という『お金も人もどちらも』というその考え方は『藍井戸や黄島の支持者たちから「お花畑ども」と謗られてい』ます。そんな全体像を冷静に見る小林は『この地域の出身者ではないけれども、夜型でうどんが好きだし給料は減らされたくないし…』という思いの中に『緑山さんを支持してい』ます。そんな時、『えーみなさん』と『緑山さんが話し始め』ました。『惜しくも選外という結果になってしまい、大変残念に思います』と始まった挨拶は、『あとたった2%』という残念な結果と、支援への感謝の思いが述べられます。そんな緑山は、『藍井戸氏にとっても、黄島氏にとっても、我々は大きな票田なのです』と『決選投票』に向けた分析を説明します。四位以下の票が双方に分かれ、『ざっくり足して両者共に38%の支持があるという』その分析により、『藍井戸氏、黄島氏の両陣営は、私たちの次回投票での動きを注視せざるを得な』くなっているというその内容。それに基づき、棄権せず、『より冷静な決断、より多くの社員の安定につながるような決断をしていただきた』いと訴える緑山。そして、会合は終わり、外に出た小林は急に降り始めた雨の中、『フチと持ち手が黄色』になったビニール傘を配る人々を目にします。『誰が私たちに傘を配るように差し向けたのかということは一目瞭然』というその状況。そんな小林が『決選投票』に向けた社内の動きに巻き込まれていく物語が描かれていきます。
“2023年7月7日に刊行された津村記久子さんの最新作であるこの作品。”発売日に新作を一気読みして長文レビューを書こう!キャンペーン”を勝手に展開している私は、2023年2月に町田そのこさん「あなたはここにいなくとも」、4月に近藤史恵さん「それでも旅に出るカフェ」、そして5月にも深緑野分さん「空想の海」…と、私に深い感動を与えてくださる作家さんの新作を発売日に一気読みするということを積極的に行ってきました。そんな中に、強烈な書名とかっ飛んだ表紙の津村さんの新作が出ることを知り、トキメキを抑えられなくなった私は発売日早々にこの作品を手にしました。
そんなこの作品は、“四年ごとに開かれる会社の代表選挙。一回目の投票は票が散らばったため、上位二名による決選投票が行われることになった。接戦が予想される中、両陣営共に動向を窺うのは、一回目で三位につけた候補の支持者たちであった。運動員の送り込み、ハラスメント手前の圧力、上司からの探り…。社内政治の面倒臭さを、津村記久子ならではの視点と筆致でリアルにコミカルに描く”と興味深い内容が紹介されています。このレビューをご覧になられているみなさんの中には、現役の会社員という方も多数いらっしゃると思います。そんな会社組織の中では、どこの会社でも多かれ少なかれ”社内政治”というものが存在し、そこに勤める以上はそんな政治を全く無視できる人も少ないのではないかと思います。残念ながらそれが組織に属するということでもあると思います。内容紹介にある通り、この作品では、そんな”面倒臭さ”を��村さんが鮮やかに描かれていきます。
では、まずはそんな物語の場を和ませる?かのように登場する『うどん』について見てみましょう。この作品の主人公である小林は『うどんが好き』という設定であり、また決選投票に進めなかった緑山『陣営』の面々は『うどん』をこよなく愛してもいます。『集まりで食べるうどんはおいしい』という理由で緑山『陣営』の集まりに参加する小林。物語では、そんな小林が目にする、食する『うどん』がさまざまに登場します。
・『社内メールで本日急遽うどんすきをやることになったという連絡が入ってきた。緑の会合に出ている人がうどんをもらいすぎて余っているので、有志で消費しようということだった。会費は三百円』。
→ 『社内メールで』『うどんすきをやる』という連絡が流れるというのも強烈な会社だと思います。皆さんの会社でもあるのでしょうか?私には全く想像ができないですがちょっと羨ましかったりします(笑)。
・『社食は正午ジャストから激混みだった。なんとか鍋焼きうどんとちくわ天、とり天をトレーにセットして席に着く』
→ 『社食』に『鍋焼きうどん』とは美味しそうです。冬であれば結構喜ばれるかもしれませんね。なんだかちょっとしたご馳走にも思え、うちの会社でも欲しいです!『十五年前まで社食になかったうどんを導入する運動を』された緑山さんの成果ということですね。
・『その日は無性にチゲうどんが食べたくて、豚バラが売り切れやしないかということばかり考えていた』、『スーパーに直行して、豚バラは無事買えたのだが、キムチ鍋の素で作るのか、でもコチュジャンを使いたい気もすると迷ったり』
→ 私生活でも『うどん』にこだわる小林が描かれます。『チゲうどん』って私は食べたことないですが、食べる意欲満々な中に買い物を楽しむ小林の姿が浮かび上がります。
まずは、『うどん』が出てくる場面をご紹介しました。これだけ読むとなんだかとっても微笑ましい作品という気がします。しかし、そんな物語がメインで描くのは微笑ましいの真逆なお話です。次はこの作品の中心的な話題とも言える『会社の代表を決める選挙』について見てみましょう。そもそも大統領を決めるかのように『会社の代表』を『四年ごと』に選ぶというのも面白い設定だと思いますが、その実はリアルです。選挙は第一回投票の後に、絞られた二名による『決選投票』が実施されます。そんな『第一回投票』に登場する面々についてご紹介しておきましょう。得票率順です。なお、これは作品冒頭に前提として説明されるものです。作品冒頭で『第一回投票』は終わっている前提ですので、これを知ったからと言って読書に影響はありません。ネタバレではありませんのでご安心ください(笑)。
・藍井戸(あいいど)、得票率28%: 『現在の会社の代表』、『末端の人間の気持ちを汲むことができない上、頭は堅くて、会社の業績悪化を補填するには減給しかないと考えて』いる
・黄島(きじま)、得票率26%: 『二十四年前に代表だった母親の跡を継ぐ形で現れた人物』、『野乃花の社員さんたちに退職を促し、改めて社之杜社としての一体性と結束を取り戻すことが肝要だと説く』
・緑山(みどりやま)、得票率24%: 『主に元野々花の社員さんや現地採用の人々』などの『権益を代弁』、『お金も人もどちらも』大切にする。『十五年前まで社食になかったうどんを導入する運動』を展開
・紫村(しむら)、得票率12%: 『黄島の母親の側近だった人間』、『野乃花の人たちを過剰に敵視』、『過激な方針を明らかにしている』
・桃野原(もものはら)、得票率10%: 『若くて穏健な中道派で、藍井戸の支持層から独立した一派』、『藍井戸に似た方針』、『社員よりは会社の利益を優先する考え方』
いかがでしょうか?名前の全てが”色分け”されているのはご愛嬌ですが、上記した通り小林が勤める社之杜社』は、『二十年前にこの土地にやってきて、地元にあった野々花社を吸収合併した』という経緯を辿ります。今の世にあっては特に銀行業界など派手に合併が繰り広げられてきましたが、そんな後には元のそれぞれの会社に繋がる派閥が出来やすいというのは言うまでもありません。しかもそれが対等合併でない場合には、吸収された側は狩り場にもされがちです。会社を維持していくためには仕方ないことだったという結果論の先に続く未来ではありますが、なんともきな臭い世界が現出してしまうものです。そして、物語はそんな『第一回投票』によって『決選投票』へと向かう『社之杜社』のドタバタぶり、もしくはきな臭さが描かれていきます。『決選投票』は、得票率一位の『藍井戸』と二位の『黄島』の二人によって争われます。そして、上記の通り『藍井戸』に近い『桃野原』、『黄島』に近い『紫村』という設定の妙により、
・藍井戸28%+桃野原10%=38%
・黄島26%+紫村12%=38%
という接戦が予想されるのが来るべき『決選投票』であり、そのいずれからも遠い緑山『陣営』が狩り場になるというのが物語の前提設定となっています。いかがでしょう。なかなかに面白い物語の舞台が見えてきます。
そして、そんな『決選投票』のありようを見て緑山は、決戦に臨む二人をこんな風に一刀両断にします。
『控えめに言って、どっちもくそではある』。
選挙に棄権しないで投票するよう促す緑山は、どちらの陣営にも賛意を示すわけではありません。さて、この結果はどうなるのか。物語は、そんな『決選投票』に向かう会社の様子を描いていきますが、上記したように急に降り始めた雨の中、『フチと持ち手が黄色』になったビニール傘を配る人が現れたり、『良心ある社員様各位へ』という怪文書ならぬ怪メールが届いたり…とさまざまな選挙工作がなされてもいきます。この作品は単行本104ページという、あっという間に読み終える文章量の作品でもあります。これ以上の説明は間違いなくネタバレとなってしまうためこれくらいにしたいと思いますが、”社内政治の面倒臭さを、津村記久子ならではの視点と筆致でリアルにコミカルに描く”という内容紹介通り、そこには津村さんのノリに乗った筆の下、きな臭くなりすぎないように添えられた『うどん』の絶妙な味付け具合のもとに、サクッと読める痛快な”社内政治”の物語が描かれていました。
『私自身はこの地域の出身ではないけれども、夜型でうどんが好きだし給料は減らされたく���いし、自分や知り合いがリストラされるのは嫌だ、という理由で緑山さんを支持している』。
そんな思いの中に主人公を務める小林視点で描かれた『会社の代表を決める投票』の様子が描かれたこの作品。そこには、会社員なら誰にとっても他人事では済まされない”社内政治”のきな臭さが描かれていました。美味しそうな『うどん』がきな臭さを中和するこの作品。それでいて、面倒臭さそうな人はどこの会社にもいることを改めて感じさせるこの作品。
極めて津村さんらしい、少し斜めに構えた視点からのサラリーマン痛快娯楽劇をそこに見た、そんな作品でした。
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これはもう、「うどん」でないと成り立たない小説だ。
ラーメンは熱すぎるし、そばはキレすぎる。
主人公や登場人物のゆるさを語るのに、「うどん」以外ありえない。
でもうどんにはうどんの誠実さと優しさがある。
「普通であることはなんと失われやすく貴重なのか」というときに、余計なうんちくやこだわりの要らないうどんのありがたさが身に沁みる。
「うどん陣営」が日の目を見ることはきっとないのだろうけれど、日々の「落胆」や「悲しみ」や「嘆き」を受け止めつつ、それでも前を向く人たちにエールを送る筆者にスタンディングオベーション。
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帯の煽り文句「控えめに言ってどっちもクソ」は少しミスリードというか、誤解を招く気がする。
実際はそんなに毒があるわけではなく、まさしく受難、という印象。
社内のある意味くだらない政治劇、ファンタジーと思って読んでいました。でも他の会社の常識ってわからないので、意外とあるあると思う人もいるのかも?とも思う。
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『うどん陣営の受難』、社内政治のめんどくさい話だけど、津村さんだし少し不思議な設定もあって重苦しくはならない。まあ弊社のことを思い出してあ〜〜とはなるよねwどうにもならないなかでどうにかやっていきたい。あとあったかいうどん食べたい
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この1篇だけさくっと書籍化の不思議本。装丁も不思議うどんちゃんでいい。小説もこれぐらいの気軽さがあるといいなと思った。そして期待を裏切らない津村さんのオフィスもの、うどんベースがぶれないから読みやすい。4年間は安心して過ごします。