紙の本
69歳で!
2023/12/18 15:35
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投稿者:hid - この投稿者のレビュー一覧を見る
ミステリーズ!新人賞受賞、71歳で作家デビュー!
すごいな。
各作品個別でも、連作としても、しっかりハマってる。
見事です。
紙の本
若き日の乱歩
2023/12/10 17:34
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投稿者:咲耶子 - この投稿者のレビュー一覧を見る
乱歩の若き日、作家となってから、持ち込まれたり気になったりした謎に迫ります。
友人のため、弟のため、大切な人が巻き込まれる前に問題を解決。
何となくいつの間にか解決している感じなので、後から考えたら乱歩って凄いって流れですので、快刀乱麻のような爽快感はあまりない。「おお、そういうこと?」みたいな(笑)
紙の本
名探偵平井太郎の物語
2024/03/28 16:24
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投稿者:kapa - この投稿者のレビュー一覧を見る
江戸川乱歩こと本名平井太郎は、江戸川乱歩年譜によると、デビュー前の大正8年2月から翌年10月にかけ、二人の弟と「三人書房」なる古本屋を営んでいた。店は本郷区駒込林町の団子坂上にあった。書名にもなっている表題作「三人書房」は、そこに持ちこまれた「謎」を解く物語であり、第18回(2021年)「ミステリーズ!」新人賞を受賞作。本書はその続篇4篇が併録され、いわゆる連作短篇集の体裁になっている。続篇のうち3篇が書き下ろしであり、太郎が大正12年(1923年)に「二銭銅貨」でデビューして100年という節目の年に、乱歩へのオマージュとして出版された短編推理小説集である。
「謎」を解く、と書いたが、まだデビュー前で、本格的推理小説は書いていないので、「事件」を解決する、というストーリーではなく、いわば「謎解き」物語である。その謎も物騒で奇怪な謎というより、日常の生活でちょっとした違和感を覚える程度のもの。同時代の実在の著名人、松井須磨子「三人書房」、宮沢賢治「北の詩人からの手紙」、田谷力三「謎の娘師」、宮武外骨や横山大観「秘仏堂幻影」、高村光太郎「光太郎の〈首〉」が登場する。本当に接点があったどうかはわからないが、あってもおかしくない時代設定と雰囲気を漂わせている。江戸川乱歩年譜などを見ると、時代考証も正確だ。また、各編の語り手は、太郎の二人の兄弟、鳥羽造船所時代の同僚でこの頃三人書房に転がり込んでいた友人井上勝喜という実在の人物に、推理小説を好み、太郎と井上と推理小説談議を楽しむ青山梅という架空の登場人物が、語り手となるという工夫がされている。
ただ「謎解き」と登場人物の会話・行動を読んで楽しむこともできるが、本書は、謎の内容や登場人物とその行動が、後の乱歩作品につながってくるという仕掛けも巧妙で、それがどこにあって、どの作品に結実したかを推理する愉悦もある本だ。例えば、最初の「三人書房」、松井須磨子の遺書らしい手紙を発見するのは、彼女の隠れた恋人らしき人物の蔵書の中。その内容を平井兄弟・井上、梅は読み解こうとする。これは、まさに二つの割れた「二銭銅貨」からでてきた暗号の解読と同じシチュエーションである。井上は、太郎への敵愾心もあり、暗号を探し出し必至に解読しようとするが、これも「二銭銅貨」の「私」と「村松武」のやり取りを彷彿とさせる。そして最後は「二銭銅貨」と同じ結末、微笑ましい「冗談」で終わる。
その他にも、太郎が変装して探偵活動をする場面や「支那ソバ屋」を開業する場面などは、「怪人二十面相」を予期させるとしているが、むしろ「明智小五郎」ではないだろうか。明智小五郎の物語 (「明智小五郎事件簿1~12 」集英社文庫2016-2017)は大体読んだが、その他にも気付かなかった「仕掛け」もあると思う。
五編のなかでは、葛飾北斎とその娘お栄が関係する「秘仏堂幻影」が楽しめた。ホームズの名言「全ての可能性としてあり得ないことを除外して最後に残ったものが如何に奇妙なことであってもそれが真実となる」という推理方法どおりの展開。他の作品には、小説、日本画、彫刻という形で、太郎と謎解明との架空の接点が残されているのだが、この作品では、太郎の推理が正しかったかどうかの証明ができない結末。まさに100年前の大地震、関東大震災で焼失してしまったのだ。デビュー100年とシンクロする結末である。
電子書籍
実在の人物が登場
2023/10/03 21:45
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投稿者:エムチャン - この投稿者のレビュー一覧を見る
しかも、江戸川乱歩なんかは、まだ、乱歩が無名の頃のお話なんです。ありそうな……。他にも、高村光太郎の事件にしても、当時の、有名女優さんとか、盗作みたいなお話とか。短いけど、どれも、ピリッと決まっています
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若き日の江戸川乱歩を描くミステリ連作短編集
大正、昭和初期の東京の街が慕情を添え、時代に沿った驚く着想点の謎と推理が冴える、お勧めの良作品です
慌ただしい現代を離れ歴史の狭間にたゆたうような雰囲気が素敵です
小学校の図書室で乱歩の作品の数々をそれはそれは読み耽った懐かしい香りを思い出して嬉しく感じました
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大正八年東京・本郷区駒込団子坂、平井太郎は弟二人とともに《三人書房》という古書店を開く。二年に満たない、わずかな期間で閉業を余儀なくされたが、店には松井須磨子の遺書らしい手紙をはじめ、奇妙な謎が次々と持ち込まれた──。同時代を生きた、宮沢賢治や宮武外骨、横山大観、高村光太郎たちとの交流と不可解な事件の数々を、若き日の平井太郎=江戸川乱歩の姿を通じて描く。第十八回ミステリーズ!新人賞受賞作「三人書房」を含む連作集。
乱歩デビュー作「二銭銅貨」発表から百年の年に贈る、滋味深いミステリ。
いつだったかNHKのドラマで江戸川乱歩のやつを見たことあった。それは、江戸川乱歩の話だったのか明智小五郎の話だったのか忘れてしまったけど、あの大正から昭和初期の活力あるかんじと不思議なことが起こりそうな雰囲気が好きだった。そして、この作品でもそれを少しかんじた。
話の中で、「三人書房」をやっている平井さん三兄弟と居候の井上さん、それと「三人書房」を訪れる人々から語られるお話。2人の弟さんと井上さん、常連客が巻き込まれた少し不思議な事件や出来事を江戸川乱歩になる前の平井太郎さんが解いていく。
「謎の娘師」の中で、屋台を引っ張ってラーメン屋を始めた江戸川乱歩の姿は少し面白かった。生活のためなのか事件の調査のためなのか分からなくなってるところが面白かった。そして、この話の中で出てきた「女性だと思っていたら女装していた美男子だった」ってのが、NHKで見たドラマの中にも出てきたなぁと思った。そうやって経験が生かされているのかなと思ってみたりした。
他にも歴史上に出てくるような人物や出来事や文化も出てきて、それもそれで良かった。
2023.12.25 読了
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大正から昭和初期、江戸川乱歩や当時活躍した有名人を中心に綴られるミステリー作品集 #三人書房
■きっと読みたくなるレビュー
約100年前、江戸川乱歩の三人書房を営んでいた時代を背景に、当時関連した人物たちが日常の謎に挑むミステリー短編集です。
今までいろんなミステリーを読んできていますが、実は乱歩についてはあまり理解しておらず、作品自体も代表作しか読めていませんでした。また本作ではもちろんフィクションではありますが、実在の文豪や有名人もたくさん登場するのです。少しだけ歴史や文学史について、理解が深まった気がしますね。
また本作は大正時代の風景や社会情勢が目の前に広がる。まるで身近に起こっているようなんです。ミステリーとしても、様々な日常の謎が巧妙に絡み合って、実際に起こったような物語でした。
〇三人書房
乱歩デビュー前、三人書房、推理小説が好きな友人たちの物語。いつの時代の若き男と女が思い迷うテーマ、ほんわかした雰囲気が好き。
〇北の詩人からの手紙
浮世絵の贋作まつわる物語。当時のジャーナリストである宮武外骨や宮沢賢治にまつわるエピソード。なんとなく現代でも同じようなことがありそうで…
〇謎の娘師(むすめし)
浅草の舞台役者、淡雪あやめを巡った物語。当時の人気女優、松井須磨子の影響がわかる一節。本編は特に街並みや人物が生き生きと描かれているのがイイ!
〇秘仏堂幻影
浅草寺の秘仏に関する不可思議な物語。北斎や大観が登場する。芸術家たちの魂が垣間見れる作品。
〇光太郎の〈首〉
像の盗難事件に関する物語、高村幸太郎に関するエピソード。胸がぽっと熱くなる真相とラスト、優しい気持ちになれるお話でした。
■ぜっさん推しポイント
乱歩の人生や作品群、実在の人物たちを絡めてストーリーが綴られていきます。作者の文学や芸術に対する愛情がありありと伝わってくる作品でしたね~
本は大好きなんですが、あらためて歴史や文学について勉強不足ということがわかりましたね。先生は本作がデビュー作とのことですが、これからも厚みのある作品を期待しています。
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乱歩先生ファンの私としては、乱歩先生が古本屋を営んでいた時代を舞台にした作品ということで興味津々で読んだ。
実際のところ、乱歩先生の魅力全開というよりは、様々な有名人たちの登場と彼らにまつわる謎解きの話だったのだが、後に江戸川乱歩として多数の探偵小説を書くことになる未来を思わせるような内容だったので楽しく読めた。
「三人書房」
表題作は江戸川乱歩(当時は平井太郎)が二人の弟と共に営んでいた古書店の店名。
そこに持ち込まれたのは自殺した女優・松井須磨子の未公開の遺書。
「北の詩人からの手紙」
浮世絵研究の第一人者・神崎俊が起こした浮世絵の贋作事件の真相とは。
宮沢賢治も登場
「謎の娘師」
太郎の弟・敏男が夢中になっている力持ちの芸を見せる美女。一方で東京では『忍術泥棒』とも呼ばれる土蔵破りが横行している。美女が『忍術泥棒』ではと疑われる中、力持ちの芸の仕掛けがバレるのだが…。
「秘仏堂幻影」
個人的にはこの話が一番面白かった。
北斎の娘・お栄の死は何故謎のままなのか。
北斎と関係があるという円泉寺の秘仏堂に侵入した盗賊は何故何も盗らずに逃げ出したのか。彼は何を見て『化け物』だと言ったのか。
以前何冊か読んだ、北斎やお栄の物語を思い出してみると、とんでもない真相のようでどこかそうとも言い切れない感じもあって、楽しめた。
宮武外骨、岡倉天心、横山大観が登場。
「光太郎の〈首〉」
高村光太郎が制作したブロンズ像の〈首〉が三体も盗まれ、壊された事件が起こる。
犯人は何故首を盗んだのか。
盗まれた首の制作を依頼した一人、藤堂は何故引きこもってしまったのか。
この作品では既に江戸川乱歩としてデビューしている。そして最後は乱歩ではなく光太郎と智恵子がさらなる謎を解くという趣向になっている。
デビュー作らしくなかなかの力の入れようだったが、楽しく読めた。
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平井太郎、後の江戸川乱歩が二人の弟たちと駒込団子坂に開いた古本屋は「三人書房」
その二階に居候する、乱歩の会社勤め時代の同僚・井上を加えた四人の周辺では、奇妙な事件がいくつも起きた。
古本屋はわずか二年で閉店してしまったが、その後作家としてデビューしたあとも、乱歩の名推理は謎を解き明かしていく。
凄惨な殺人事件などは起こらないけれど、では「日常の謎」かと言われたら、全然日常とは言えない不思議の数々。
同時代の有名人たちも登場し、史実の隙間にお話を作るわけだけれど、証拠の消し方がまた上手い!
『三人書房』
古書の間から松井須磨子の手紙らしきものが見つかる。
島村抱月の他に男がいた?!まさか。
ミステリーの禁じ手ギリギリではありませんか!
ま、乱歩さんの優しさってことで。
『北の詩人からの手紙』
花巻から上京した宮沢賢治と、浮世絵贋作事件について話す。
故郷に帰った賢治から、あの事件のことを考えていたらこんな物語が思い浮かんだと「グスコーブドリの伝記」の構想が送られてくる。
『謎の娘師(むすめし)』
末弟の敏男(としお)は、見世物の怪力美女に夢中。
その頃、土蔵破りが世間を騒がせていた。
乱歩の嗜好もちょっと匂わせの、タネも仕掛けもあるお話。
『秘仏堂幻影』
円泉寺の秘仏を盗みに入った賊が、化け物を見た!と何も盗らずに逃走。
北斎の娘・お栄が、横山大観の師・岡倉天心が守ろうとしたものは?
『光太郎の「首」』
高村光太郎が依頼を受けて製作した頭部の肖像「首」が、立て続けに三作も盗まれ、無惨に破壊された!
乱歩はいたく興味を引かれ、謎解きに挑む。
レトロなおどろ感が出てきた!と思ったら、動機がちょっとユーモラスであった。
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江戸川乱歩が弟らと経営していた古書店「三人書房」を舞台として描かれる連作ミステリです。江戸川乱歩はそりゃあ名探偵としての素質もキャラ立ちも申し分なくありそうです。しかし乱歩だけではなく、彼を取り巻く周りの人たちも非常に魅力的です。そしてその時代背景や情景が生き生きとしていて、すべて本当にあったことなのではないだろうか、と思わされてしまいます。雰囲気にどっぷりと浸って読みたい一冊です。
お気に入りは「北の詩人からの手紙」。浮世絵の贋作事件を巡る謎の謎解きがとても綺麗です。そして乱歩のお茶目な姿と、それがあの名作に結びつくさまがなかなかに感動的。こんなことが本当にあったのかも、と思いたくなってしまいます。
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大正八年東京・本郷区駒込団子坂、平井太郎は弟二人とともに《三人書房》という古書店を開く。二年に満たない、わずかな期間で閉業を余儀なくされたが、店には松井須磨子の遺書らしい手紙をはじめ、奇妙な謎が次々と持ち込まれた──。同時代を生きた、宮沢賢治や宮武外骨、横山大観、高村光太郎たちとの交流と不可解な事件の数々を、若き日の平井太郎が解く。
言わずと知れた江戸川乱歩と彼を取り巻く人たちの物語で、とても楽しく読みました。
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【収録作品】三人書房/北の詩人からの手紙/謎の娘師/秘仏堂幻影/光太郎の〈首〉
実在の人物をモデルとしたフィクション。
宮沢賢治、高村光太郎らが登場し、松井須磨子や葛飾北斎らが話題に上る。
自分のなかにあるイメージと違ってしまうので、この類いのものは苦手だと再認識。
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平井太郎は三重県に生まれ、早大卒業後造船所勤務等を経て上京。二人の弟とともに東京の駒込団子坂で古本屋「三人書房」を経営。その後、様々な職に就くが長続きしなかった。失業中の1922(大正11)年に「新青年」に送りつけた「二銭銅貨」のあまりの完成度の高さで編集長を驚倒させ、翌年探偵小説デビュー。そう、日本ミステリ界の礎を築いた「探偵小説の父」こと江戸川乱歩その人である。
本書は、若き日の乱歩が「三人書房」の頃以降に遭遇した種々の謎を探偵役として解き明かす設定のミステリ短編集。
同時代を生きた宮沢賢治、横山大観、高村光太郎ら著名人も登場し、乱歩との交流が史実と虚構を織り交ぜながら描かれる。もちろん、本書の物語はフィクションなんだけれども、もしかしたらこんな交流もあったかもなぁと思わせ、あの時代に思いを馳せる奥ゆかしさがある。
また、「屋根裏の散歩者」や「押絵と旅する男」といった乱歩の名作が書かれたバックグラウンドが“さもありなん”な感じで微笑ましい。
しかしながら、全体的に謎の魅力、謎解きの論理性、意外性に乏しいので、物語の雰囲気は味わい深いけれど、ミステリとしては辛口採点となってしまった。あしからず。
ミステリーズ!新人賞受賞(2021年)(※)
(※)受賞作「三人書房」
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静かな佳品。デビュー前・直後の乱歩による謎の解決とそれらが関係者のその後の活躍に与えたかも知れないささやかな影響。あったかも知れない、と思わせる造りが気持ちよい。
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江戸川乱歩が作家になる前に古書店をやっていて、その店名が「三人書房」だというのを今作で初めて知った。2人の弟と一緒に経営していたから三人書房かぁ。
あと、土蔵破りのことを「娘師」と呼ぶのも初めて知った。時代劇ではよく出てくる表現なのだろうか。
古き良き探偵小説といった感じの連作短編集。横山大観、高村光太郎といった著名人も登場する。一番好きな短編は『光太郎の〈首〉』。一瞬ギョッとするタイトル含め良かった。
しかし、何より一番インパクトがあったのは、今作でミステリーズ新人賞を受賞した作者が、69歳の最年長受賞者というところ!その御年で小説家デビューするなんてすごすぎる。