映画とはかなり内容が違ってます
2024/10/03 11:47
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投稿者:ふみちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
ネタばれ
この本の原題は「The Zone of Interstは。もともと戦時中にアウシュヴィッツ収容所の一部を指す語として用いられたものだというが、「関心領域」という題はドルやメビウスといった登場人物が目の前のユダヤ人虐殺に目を瞑り、自分自身の関心領域(ドルにとっては酒)にばかり関心を傾ける状態になっていることへの痛烈な皮肉でもある、ハンナやトムゼンといった反ユダヤ主義に抗っていた人たちも戦後は深い傷をうけた、ハンナはトムゼンの求愛を「想像してみて、あの場所からの幸せな何かが生まれるなんて、どんなにぞっとすることか」と突っぱねる。作者、マーティン・エイミスは翻訳本が刊行された前年の2023年に永眠された、ご冥福をお祈り申し上げる、読むのは辛いけど、人として読まなくてはいけない本の一つなのだと思う
映画とはかなり違う
2024/09/08 21:10
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投稿者:BB - この投稿者のレビュー一覧を見る
映画を先に観て、アウシュヴィッツの被害者が一切出てこないドイツ人看守とその家族のあまりに「普通」な日常に空恐ろしさを感じたが、原作は一部の登場人物の設定以外は、映画と全く違う物語。
もちろん、関心領域という主題は同じだけれど。
好みはあるが、映画を先に見てしまうと、原作は複雑で煩雑に感じるかもしれない。
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映画のほうは見てないが、漏れ聞く限り、音響が素晴らしいが眠くなる、というものだったので、エンタメとしてはあまり面白くないんだろうな、映画だけじゃわからないところもありそうだな、と思って、原作を読んでみた。
予想よりは文学的でつまらないというわけではないが、わかりにくくてエンタメとしてもあまり。キャラがつらつら心情を述べてるの苦手。誰に話しかけてるの?神や自分自身や読者に話しかけ、作者の代弁であるのはわかってるが。
キャラの描写が自己欺瞞に満ちてて、会話の真意を読み取らなくちゃいけないのが疲れた。映画だと表情や音楽や撮り方でわかるだろうが、小説だと文字のみで、頭が疲れた。
愛国者を気取る、命知らずの軍人を気取る、心酔者を気取る、まともさを気取る。
トムゼンのハンナへの思いは赤と黒みたいで、なんか好みの女がいたらヤラなきゃもったいない精神から始まってて、最後まで、はあ?の気持ちだった。
パウルは最低すぎる。やばい。娘の扱いにもヒヤヒヤした。気持ち悪い。
シュムルの節は短いながらも端的で削ぎ落とされていて良かった。簡潔明瞭。
ところどころは良かったが、信用できない語り手、特にパウルやトムゼンの自己欺瞞に付き合うのがだるかった。
ボリスや周りの人との会話も。
ハンナは結構本音で直球だったのかな。
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アカデミー賞5部門にノミネートされ、国際長篇映画賞及び音響賞を受賞した、同名映画の原作小説。受賞に合わせて早川書房より邦訳版が刊行されたので、手に取ってみることに。
舞台は、第二次世界大戦下のナチスドイツ、とある強制収容所。飲酒に溺れ己の"正常"を保とうとする強制収容所の司令官パウル・ドル、上官であるドルの妻ハンナとの恋愛に執心する将校アンゲルス・ゴーロ・トムンゼン、生き延びるために同胞の死体処理に従事する特別労務班長であるユダヤ人のシュムル・ザハリアシュ。非人道的な残虐行為が横行する強制収容所に関わる三者の視点で描かれる、"非日常的"日常―――。
強制収容所(と、ナチス体制)の"異常性"から目を逸らすように、それぞれの形で己の「領域」からそれらを排除しようとする姿が印象的。歴史上、決して風化させてはいけないナチスによるホロコースト。それを後世に伝えるものとして大切な作品であることは間違いないが、作品に対する私一個人としての満足度はそこまで。
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ジャミロクワイの『VIrtual Insanity』でMVを監督したジョナサン・グレイザー監督がアウシュヴィッツ=ビルケナウ強制収容所の隣に住居を構える収容所の所長ルドルフ・ヘスとその家族の生活を描いた映画『関心領域』
そこに暮らす人々の生活が描かれているだけにも関わらずおぞましく、醜悪で、下手なホラー映画よりもよっぽど恐ろしい作品であった。
直接的な描写は一切映らないにも関わらず、わずかに聞こえる叫び声や銃声、塀の向こうの焼却炉がゴウゴウと音を立てて吐き出す黒い煙など、恐らく今こういうことが起きてると察することが出来る。
頭をガツンと殴られるかのような衝撃を受ける映画体験だったが、とても映画的な瞬間で作られた恐ろしさだったために、原作ではどんな描かれ方をしているのだろうかと気になって手に取った。
驚いたことに原作は映画とはまったく違っていて、映画で使われていたのはアウシュヴィッツ=ビルケナウ強制収容所の隣に住んでいる強制収容所所長一家という部分くらいだ。
ちょっと拍子抜けしてしまったのだが、考えてみると本作も『関心領域』というタイトルには間違いなくて、自分の興味のある、関心を向けている領域を外れた人、外すことが出来ない人が描かれている。
原作には原作の面白さがあるため、映画と比べてどうだって話ではない。
どちらもその媒体特有の表現で残酷さや恐怖を描いている。
そしてどちらもグロテスクなことが描かれているにも関わらず、ふと吹き出してしまいそうな瞬間もあったりする。
見比べてみるのが面白いタイプの作品だと思う。
映画から原作に入ると余りにも印象が違うため、ちょっと肩透かしを喰らう気もするので。
個人的には原作→映画から入ってみるのをオススメ。
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原作を読んでから映画を観て、なんか映画の方が怖いなと思った。どちらも人間の慣れや飽きの恐ろしさを描いていたように感じるけど、映画の方にはハンナやトムゼンのような存在は現れない。
強制収容所の痛ましい記録を見るに、どうしてそんなことになった?と思うけれども、私たちの日常生活の中で、なぜ誰も止めなかったの?と思うような出来事は起こっていて、そういうことの積み重ねの先に、ありえない出来事も起こり得る。
後から振り返って「あの時あなたが止めるべきだった」と言うのは簡単である。
上司が明らかにおかしな指示をしていているけど、周りの同僚は誰も異を唱えずに従っている。そんな場面で、おかしいと主張できるか?おかしいと主張した人に共感できるか?
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ナチスの強制収容所の柵の内と外
司令官は任務遂行に忠実でありながら酒と薬に溺れ、将校は欲愛に執心、ゾンダーはまともな感覚を失い同胞の死体を運ぶ
異常な環境でも(だからこそ)人は自分の関心領域の中に籠もることでやり過ごすのか
手こずったけど読み切った
原作に忠実であるほど読みにくいし、かといって読みやすくすると別物になってしまう?
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映画を観てから原作を手にしたけれど、少し映画の内容と違うんだな、と思いました。映画の方がやっぱり臨場感が伝わってきて良かった。
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ナチス政権下、歴史的にも醜悪かつ理解し難い、その行為とその周辺を舞台にして、収容所の司令官、連絡将校中尉、ユダヤ人の特別労務班班長の3人、それぞれの違った視点からの描写を交えながら、物語が進行していく。
あの場所から幸せな何かが生まれるなんて、どんなにぞっとすることか。
作中のこのセリフには、共感しかない。
この物語を哀切な悲恋で締め括ることは許されない。
著者の後書きも含めての作品だと痛切した。
現実に、ルドルフヘスが、己の行いによって酒と薬に溺れ、精神を病んでいたのかはわからない。
現実に、こういった中尉のような、都合の良い自己正当化で残虐行為を行っていた人たちもいたかもしれない。
けれど、どのすべても許されることではなく、このことについて、わたしはエンタメとして消化することに激しい抵抗を覚え、作中の登場人物の誰のことも理解したくはないしできない。
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「関心領域 (The Zoon of Interest)」とは、ポーランド、オシフィエンチム(アウシュヴィッツ)の一地区と付近の村の住民を追放して設けられた、40平方キロ㍍以上に及ぶ親衛隊の重要管理区域を意味する。その強制収容所の壁を隔てた敷地内に、収容所所長パウル・ドル(ルドルフ・ヘス)とその妻子が、被収容者たちに傅かれて優雅な生活を送っていた。・・・1940年から45年のナチス崩壊までの、血と狂気にまみれた悍ましき世界が描かれた、読む者の息の根を止めさせる驚愕の告発書。〝不愉快な真似はもう許さない。夫婦とも上機嫌で、我が家でのささやかな集まりに臨むのだ ...私は正常な欲求を持った正常な人間なのだから。私はあらゆる点で正常だ。誰もこのことを分かっていないようだが...パウル・ドルはあらゆる点で正常だ…〟〝信じられる? 史上屈指の大量殺人者と結婚していたなんて。 わたしが。 ドルはすごく野暮だった、すごく口やかましくて、いやらしくて、卑怯で、愚かだった…〟
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映画見て気になって原作も読んでみた。ってか原作?「アウシュヴィッツのドイツ人看守側の話」って設定は共通やけど違う話やん。映画は映像で見せる分事件は起こらず、一方小説はけっこう事件満載。個人的には小説の方が好きかな。
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★5 いい意味で二度と読みたくない本、強制収容所に関わる人間の狂った現実にあなたは… #関心領域
■あらすじ
第二次大戦のドイツ、強制収容所に関連する人々の物語。収容所の司令官、妻と子、将校、亡くなった下士官の妻、そして死体処理の労務につきながら生き延びているユダヤ人班長。ホロコーストの現実と関わった人間たちの日常を描く社会派小説。
■きっと読みたくなるレビュー
これが戦争、これが人間ですよ… 醜さと低能ぶりをたっぷりと味わえる本作、覚悟して読みましょう。
大戦中のユダヤ人強制収容所に関わる様々な人々、かの有名な何百万人も虐殺されたとされるあのホロコーストです。ただこの物語では、強制収容所内の虐殺描写がほぼありません。それなのに、ずっと死臭が漂っているんです。
登場人物たちのこの領域に関する会話、ユダヤ人への差別意識、すぐ近くにある絶望と大量の死。もはや腹立たしいというレベルは超えている。言葉の力だけで、こんなにも不快で拒絶を感じるものなのでしょうか。そして圧倒的な取材力と、事実を事実として力強く書いた意思が伝わってきました。
本作は主に三人の視点でストーリーが進行していきます。すぐ近くの施設では次々と人が殺されているとは思えない思考と行動なんですよ。これが現実なのかと…
・強制収容所の司令官
物事を見抜けず、自分の都合の良いように考えるバカ。プライドだけ高く、精神的に弱い。女性や他人に甘え、すぐに酒や薬にも溺れる。
・将校
生まれや立場にあぐらをかき、色情に溺れるサル。立ち回るのが上手で狡猾で厭らしい。大量虐殺の事実から目を背け、責任は取ろうとしない。
・死体処理を行うユダヤ人班長
肉体的にはもちろん、精神状態にも衰弱している。もはや生きている人間の体を成していない。
その他の登場人物も、まるで狂った領域とは思えない生活をしている。現代の価値観だととても考えられないんでしょうが、世界中が殺し合ってる時代であるなら、こんな人間にもなっちゃうわ…とも思えてくる。戦争や人種差別ってのは、どんだけ罪深いんだと。
いい意味で、二度と読みたくない物語。それでも我々はその事実を知らなくてはなりません。
なぜなら現代に生きる我々も同じだからです。災害があっても、戦争があっても、それこそ死にそうなほど困っている人がいても、見て見ぬふりをして生きていませんか? 自分自身が幸せになるためにも、そう感じられる環境であってほしいです。
■映画化もされてます
映像でアウシュビッツの現実を味わいたいのであれば、ぜひ映画も観ておきましょう。音が超怖かったよぉ… なおストーリーとしては原作と大幅にちがうので、両方とも楽しめます。
テーマや背景は同じで、強制収容所内の描写や虐殺描写は全くありません。ただ…大量の死を肌で感じる。自然あふれる街、大きなお庭のある邸宅、幸せな家族。しかしバックに見えるのは、強制収容所の見張り台や焼却炉の煙、そして時折聞こえてくる悲鳴、発砲音。
一見幸せに見える家族ですが、こんな環境で暮らしている��故の特異な言動が少しずつ見えてくる。この不条理な世界はなんなんだよ、これマジでホントにあったことなの?嘘と言って… そして自らの無関心さに絶望することになる。
ちなみに映画版も二度と観たくない、でも観るべき映画なんです。
■映画『関心領域』予告編
https://www.youtube.com/watch?v=oFaqgVl-TQ0
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映画も最低限のナチスの前知識いる感じでしたが、こっちはだいぶ必要でしたね。ナチス政権下の生活について書かれた本を一冊くらい読んでからにすりゃよかったとちょっと後悔。
著者のあとがきにある『何が起こったのか理解することはできないし、すべきでない』の引用を見て、映画を見た後からずっと感じていた「Why?」に対する答えをもらった気分になった。
ある人間・組織・政府が起こしたことを「理解しようとする」ことは「身のうちに取り込むこと」でありそうすべきではないとレーヴィは言ってる。
これは「別に理由を知らずに無関心になれ」と言うわけではなく、むしろその逆で。ホロコーストを主導した総統、政府、国家の行動を「なぜそうなったのか」と理由を理解しようと試みるのではなく、起きた事実から洞察を深めてすべきという。
原作は映画と違って、ドル(ヘス)の視点の他に、下半身で生きてる感じの情報将校のトムゼン、ゾンダーコマンドのシュルムの3人の視点が入れ替わって進む。
それぞれがそれぞれに壊れて狂ってるのだが、自分の関心領域に閉じこもって、国家の罪ひいては自分の罪から目を逸らし続けているところは似通っている。それぞれの立場は大きく違えども。
後書き含めて500P、映画も合わせるとボリューミーだが、多くの人に読んで欲しい作品。
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星に迷いました。でも、目を背けてはいけない。
観てから読みました。
映画もすごかったですが、原作もすごかったです…
ただ原作は想像力の入り込む余地があまりないように感じ、とてもきつかったです。
実は映画を観た時もそう感じていたのに、より原作はきつかった…
物言わぬ少年たちの時間
ゾンダーコマンドの存在
P302からのシュムルの章は、感情というものを捨て去らなければ読めないこの作品の中で、やはり涙が出る内容でした。でも、その自分の涙さえ欺瞞に感じる…厳しい話です。
主役はトムゼン。話の動くきっかけは、トムゼンが人妻のハンナに気もちを寄せたから…
でも、それは話を動かす装置でしかない。
あの時代にドイツを覆っていた狂気、その中で正気を保った人たちへの弔い…
でも。ゾンダーコマンドたちは…狂気の中で、さらなる狂気に包まれ…そのことを心に留めておきます。
著者あとがきで、生存者アントン・ギルの著書に集めらた言葉として紹介された「ほぼ全員が復讐を拒んでいる、そしてひとり残らず赦しを拒んでいる」という言葉も、心にしみました。
プリーモ・レーヴィ
原題THE ZONE OF INTERESTの意味2つ
読めて良かった。ただあまりの内容に、人に勧めにくい。でもできればたくさんの人に読んでほしいと思うのです。
追記(2024.8.21)
創作は現実とは違うので、もっと凄惨なことが行なわれていたと思います。
ただ現実をそのまま伝えることは当事者でも難しい…なので、このような作品の存在に手を合わせたくなるのです。
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この作品を原作とした映画が、アカデミー賞を受賞したとの事で調べてみると、ちょうど公開されていました。しかし、残念な事に公開しているのは、東京の劇場のみでした。映画も観れば、最も作品への理解が深まると思いましたが、関西での公開を待つ事にします。