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みんなのレビュー23件

みんなの評価4.1

評価内訳

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23 件中 1 件~ 15 件を表示

紙の本

実作者だからこそのファンタジー・児童文学・動物文学論

2011/10/01 10:47

5人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:本を読むひと - この投稿者のレビュー一覧を見る

 『闇の左手』や『ゲド戦記』が名高いSF・ファンタジー作家、アーシュラ・K・ル=グウィンの最新評論集である。「子どもの本の動物たち」と訳された本書中では半分近くを占めるCheek by Jowlは本書の原題でもあるが、このタイトルには多層的な含みがあることが訳者あとがきに語られている。
 さて、その「子どもの本の動物たち」は動物文学論というべきものだが、「動物文学」という項目が『集英社世界文学大事典』にもあり、読んでみると短いスペースのなかにファーブルの『昆虫記』などにもふれているところがル=グウィンと異なる。Cheek by Jowlというタイトルが示唆するように、ル=グウィンにおける「動物」は人間に密接につながった哺乳類が中心なのである。もちろんいくらかの例外はあるし、本書の別のエッセーでは、竜のような異界の動物を引き合いに出して、ファンタジーや児童文学を重要視しないこれまでの批評家たちをからかっている。からかわれたり批判されたりしているのはエドマンド・ウィルソン、ツヴェタン・トドロフその他である。トドロフには『幻想文学論序説』があるが、ル=グウィンによれば《興味深いことをたくさん言ったが、それらはほぼ、ファンタジーとは何の関係もないことばかり》である。
 ところで私は小学生時代に、この「子どもの本の動物たち」でも好意的にふれられているキプリングの『ジャングル・ブック』に夢中になりながら、その後ずっと読み返していない。シートンも好きだったし、「文学」とは言えないかもしれないが、ファーブルも読んでいた。
 大人になってからは本書が視野におさめている世界では、妻が読んでいたので『ゲド戦記』、また映画化されたので『指輪物語』といった数える程度しか読んでいない。
 それにくらべれば、ル=グウィンが何度か批判のターゲットにしているエドマンド・ウィルソンの批評のほうをずっと読んでいる(ただ邦訳されているという訳者の丁寧な注がある『指輪物語』批判は未読)。そのため本書に対する私の立場は微妙なものとなった。
 たとえば『ハリー・ポッター』だが、映画は全部ではないが観ていても本はもちろん読んでいない。「もちろん」というのは侮辱した言い方かもしれないが、なんとなくあの小説シリーズは、近年流行している人気ファンタジーや映画の安易なイメージを象徴していると思われるからだ。
 ル=グウィンにとって『ハリー・ポッター』は《はっきり言えば紋切り型で、模倣的でさえある作品》である。彼女はこの小説を多くの書評家や文芸評論家が独創的な業績だと思いこんだ背景に、ウィルソンたちによって「シリアス」以外のフィクションが批評から締め出され、ファンタジー文学への無知が文学の世界をおおったことを挙げている。
 そうだろうか、と考える。私はウィルソンを読みつつ、彼が排除する「ジャンル」フィクションもたっぷり読む。ウィルソンが面白いのは、たとえば彼がミステリー批判論を書くような人だからだなどと思いながら。
 『ハリー・ポッター』現象は、ウィルソンたちの批評とは関係がない。『ハリー・ポッター』が途方もなく売れた背景に書評家や文芸評論家の評価が少しはあったかもしれないが、もっと別な要因を考えるべきだろう。
 たとえば『大人のファンタジー読本』の鼎談のなかで金原端人は、こう語る。『指輪物語』に影響され『ゲド戦記』が生まれたように《ファンタジーというものがどんどん専門的なほうへひっぱられていった。子どもから離れていく傾向が強くなっていった。それを再び子どもの手に取り戻したのが「ハリー・ポッター」。それ以降のファンタジーは、たいてい子どもに読まれるように書かれてるでしょ。》
 このほうが分かりやすい。とはいえ一方で『ハリー・ポッター』を退けつつ、もう一方でファンタジー嫌いの批評を斬るル=グウィンに私は好ましさを覚える。

 ル=グウィンについて言えば、私は『闇の左手』が好きでいつか読み返したいと思っているが、今回本書と併読したのは短編集『風の十二方位』だった。そのなかの「オメラスから歩み去る人々」や「革命前夜」など素晴らしいと思う。最初におかれた「セムリの首飾り」もいい。こうしたSF小説は明らかに「ファンタジー」と言えるだろうが「児童文学」ではないだろう。また「動物文学」は「児童文学」とイコールにならない部分がある。
 ル=グウィンは文芸評論家ではないのでかっちりと行き届いた整理もしていないし網羅的でもないが、実作者ならではの豊かさというかふくよかさが本書の言葉にはあるような気がした。


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紙の本

著者の見解に賛同

2011/10/16 12:10

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:萬寿生 - この投稿者のレビュー一覧を見る

 作家と読者の両面からファンタジーを考察している、評論集である。8編の論考が載っている。スピーチを文書化したものもある。論理や見解は明快で、軽薄なところがない。幅広く深く考究している。学者一家の中で成長し生活している背景がうかがえる。ここに書かれているファンタジーや児童文学に対する著者の見解には賛同する。
 蛇足だが、SF小説『闇の左手』『所有せざる人々』『風の十二方位』などには、よく理解できないところもある。一方、ファンタジーや評論には理解し難いところはない。

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2011/10/19 22:03

投稿元:ブクログ

「メッセージについてのメッセージ」は、
実に素晴らしい文章。

物語とメッセージの関係をこんなに簡潔に、
わかりやすく書いている物はないのでは。

2012/03/26 22:32

投稿元:ブクログ

ル=グウィンはちょっと苦手で小説はあまり読んでないが、これは読みやすい。ファンタジーとは何か?について、はじめてわかった気がする。

ファンタジーには「本物の竜」がでてくる。それは映画の竜とはちがって、本当にあなたを殺すことができる。彼らは宝石をもっていて、竜と格闘すれば、手に入れることができる。それは「知恵」という宝石だ。

知恵は容易には手に入らない。森のなかにはあなたを惑わせる魔術師もいる。

ファンタジーは善と悪の戦いを描くものではない。善と悪の違いがわかる方法を教えるものだ。

アメリカ人は戦闘にとりつかれていて、「人生の戦い」やら「善と悪の戦い」を強調するが、それは常にいんちきな比喩であり、聞こえのよい表現で暴力を是認し、思考を停止させるためのものにすぎない。

つまりは、人はよく生きるためには、ビジネス書ではなく、また教訓話ではなく、ファンタジーを、そしてこの本を読むべきなのである。

2011/10/08 16:13

投稿元:ブクログ

ル=グィンがブックフェアなどで行った講演や、ファンタジーについての論評を集めた本。
動物擬人化ものに対しての論評は結構辛口。というか、どんな前人についても割と辛口。
個人的にはゲド戦記シリーズ全6冊の成り立ちについての文が興味深かった。
あと、『バンビ』の原作がそんなに素晴らしいものだとは知らなかった。ディズニーのもよく知らないけど。そのうち原作を読んでみたい。

2011/10/08 20:37

投稿元:ブクログ

(年齢にかかわらず)成熟していない人たちは、道徳的な確かさを望み、要求します。これは悪い、これは善い、と言ってほしいのです。子どもやティーンエイジャーは、確固とした道徳的足場を見つけようともがきます。彼らは勝つ側にいると感じたいのです。少なくともそのチームの一員だと思いたいのです。しかし(疑われることのない)善と(検証されることのない)悪との間の戦いと称するものは、物事を明快にする代わりに、ぼやけさせます。それは暴力についての単なる言い訳にしかなりません。それは現実の世界の侵略戦争と同じくらい、浅はかで無益で卑劣なものです。

ファンタジーと未熟さをごっちゃにするのは、かなり大きな間違いだ。合理的だが頭でっかちではなく、論理的だがあからさまではなく、寓意的というよりは象徴的 - ファンタジーは原始的(プリミティブ)ではなく、根源的(プライマリー)なのだ。

物語が「メッセージをもっている」という考えは、その物語を二、三の抽象的な言葉に縮小することが可能ということ、コンパクトに要約できるということを前提にしている。物語の意味というのは、言語そのもの、読むにつれて動いていく動きそのもの、言葉にできないような発見の驚きにあるのであって、ちっぽけな助言にあるのではない。

ファンタジーは子どものための物語の形として、子どもの本質に根ざした、もっとも自然なものだ。なぜ、そう言えるのだろうか?子どもたちはたいてい現実と非現実の区別がつかないからか?子どもたちには現実からの「逃避」が必要だからか?そのどちらでもない。現実からの意味を汲みとるために、子どもたちは想像力をフルタイムで働かせているから、そして、想像力による物語こそが、その仕事をするための最強の道具だからだ。

2013/01/19 19:32

投稿元:ブクログ

古今東西のファンタジーを挙げて論評しつつ、ファンタジーの効用と役割について語る。
ファンタジーは小さな子どものためのものだと文学の括りから外して語ろうとする世の批評家を、バッサリ斬っている。以前に「夜の言葉」のほうを読んである程度女史の辛口に耐性がついていたので、今度は平静な心持ちで読めた。
恥ずかしながら、挙げられているファンタジ‐作品に知らないタイトルが多数あったため、あまりぴんとこない箇所もあったけれど(これは自分の勉強不足の問題)、動物たちを描く小説に対する考察など、興味深かった。読んでみたいタイトルがいくつかあったのであとでチェックするつもりだけれど、邦訳されているといいなあ。

2012/07/07 03:40

投稿元:ブクログ

「ファンタジーの細かい設定不足を指摘すると怒る人がいるが、現実とは違うファンタジーだからこそ、きちんと設定説明をしてくれないと混乱する」という意見には超納得。
今まで誰に言っても小うるさいヤツと思われてきた(と推測)ので、グウィンのような巨匠に言ってもらえてかなり嬉しい。

あと、「『ハリーポッター』シリーズを、「とんでもなく新しく楽しいファンタジーだ「」と思うのは、
その人たちが今まで本を読んで来なかった証明だ」と言うのもかなり共感できた(『ハリーポッター』は好きですが、「とんでもなく新しいか」と問われるとその答えはYESではないと思う。

2011/11/19 17:25

投稿元:ブクログ

ファンタジーにかんする物が集められている。私は「内なる荒野」と「子どもの本の動物たち」が面白かったです。特に、シルヴィア・タウンゼンド・ヴォーナーの詩については瞠目しました。

2012/09/10 01:27

投稿元:ブクログ

ル=グウィン『いまファンタジーにできること』河出書房、読了。『ゲド戦記』の著者がファンタジーの力を緻密に論証する。ゆっくり育つ子供たちの持つ「センス・オブ・ワンダー」(カーソン)は、あらゆる慣習・規範・立場(サンカーラ)から自由にする。そこから本当の見え方が出て来る。お勧め★4

2011/10/01 06:02

投稿元:ブクログ

ファンタジー文学の書き手自らが語った、ファンタジーに関する考察。気づかされることが多かった。気になるのはページ数のわりに値段が高いことで、200ページ未満の本ならソフトカバーで1400円くらいにしていただけるとなおうれしい。

2011/12/31 20:36

投稿元:ブクログ

 ファンタジーというジャンルをこよなく愛し書き続けている著者による、講演やエッセイをまとめた本。

 ル=グウィンと言うと、学生の頃にSF『闇の左手』を読んでよくわからず、アニメ化された『ゲド戦記』を見てまたよくわからず、自分の中で評価が定まっていない作家だったが、本書を読んで本当にファンタジーを愛している作家であり、愛すべき一読者であることがわかった。

 著者は、ファンタジーというジャンルがこれまで不当に見下され続けてきたことに憤り、「はっきり言えば紋切り型で、模倣的でさえある作品」なのにハリー・ポッターシリーズが評価されている事実に驚き、「登場人物たちが白人で、中世っぽい時代に生き、善と悪の戦いを戦っている」という前提で成り立っている粗製濫造ファンタジーにいらいらしている。
 ある意味、ファンタジーというジャンルに入れ込みすぎ、という気がしないでもないが、著者の視点は意外にも狭窄的にならず、様々な観点から上手に読者をリードしている。ファンタジーの延長線上として、動物と人間の関わりについて書かれた動物文学(原作の『バンビ』など)や、ティーンエイジャー向けの小説が果たす役割、物語が持つメッセージ性について書かれた章はとても興味深かった。

2013/03/19 22:44

投稿元:ブクログ

『ゲド戦記』作者の評論集を翻訳したものです。講演も含まれます。ファンタジーは子供だけのものではないと強調しているのが印象的でした。私自身、ファンタジーの日本での扱われ方に疑問を感じており、これを読んで少し勇気をもらったように思います。物語を「紡ぎ、語る」ことの大切さを、あらためて噛みしめました。

2013/04/10 20:40

投稿元:ブクログ

魔法を使っていい。
ドラゴンだって存在していい。
動物と話をしてもいい。

物語になってさえいればね。

2011/09/12 22:59

投稿元:ブクログ

子どもの頃にあまりファンタジーを読まずに大人になり、そのまま食わず嫌い&苦手意識があった私のファンタジーへの姿勢を正してもらえたような気がする。

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