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「表現の自由」を求めて アメリカにおける権利獲得の軌跡 みんなのレビュー

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紙の本

「表現の自由」を求めて、苦闘の歴史

2009/04/17 20:56

3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:半久 - この投稿者のレビュー一覧を見る

ひとくちに「自由の国アメリカ」というが、修正第1条が保障する自由のもっとも基底にある「表現の自由」でさえも、長きにわたる苦闘の歴史を刻みながら獲得されてきた。歴史が直線的に発展しないのはここでも同じだ。表現の自由も時代の影響をこうむるを避けがたく、なんども打撃を受け「退行」することさえあったのだ。

本書は、ほぼ二世紀半にわたるアメリカの「表現の自由」の歴史を一冊で通覧している。たいへんな労作だ。文章は平易で、憲法学の研究者でない一般の方でも、アメリカ史としておもしろく読めそうだ。
裁判所を主戦場とする、判例一覧にのっているだけで73もの表現の自由が争われた事件を取りあげている。ホームズをはじめとする裁判官たちがどのように各事件と向きあい、「法創造」をしていったか。なかには年月を経て認識を改める人もいて、その軌跡が興味深い。

圧巻のひとつが「スコーキ」事件。表現の自由を享受しようとする主体は、ネオ・ナチグループだ。よく知られているように、ネオ・ナチはユダヤ系市民への差別・憎悪をむきだしにし、反民主主義・独裁政治・人権無視を叫んでいる集団だ。この集団があろうことか、集会行進の自由や表現の自由を楯にとって、スコ-キ村側が条件をつけてきた当所でのデモ行進を、無条件で許可せよという法廷闘争に打ってでる。

ここで登場するのが「アメリカ自由人権協会(ACLU)」だ。過去にネオ・ナチと地方自治体とのいざこざがあり、そのとき以来、法律相談や裁判援助などをするという関係になっていた。ACLUはこの事件でも、ネオ・ナチグループをバックアップするという苦渋にみちた決断をすることになる。ACLUの会員は、かなりの比率でユダヤ系市民が占めていたため、多数の会員が脱会することになってしまった。
このような決断をACLUが下した理由は、過去に「市民的自由」の制限に迎合してしまったことへの反省があるからだ。「市民的自由」は普遍的におよぼさねばならないと考えるようになった。判決でもデモの自由に軍配があがることになる。そうまでして確保したいと欲する「表現の自由」というものについて、考えさせられる話だ。
原理・原則にこだわり、自分のところの会員にさえ非妥協的になってまで貫こうとするその姿勢は、「表現の自由」の原理主義であるともいえるだろう。

これは、「自由の敵には自由を与えない」という「たたかう民主制」の観念が薄い、アメリカン・リベラルならではのことといえる(日本の憲法学でも同じ)。
しかし、この事件以降は批判が増大する。ネオ・ナチの差別的な表現の自由は、ユダヤ人の人権を侵害していて許されないのではないかという考えが有力になっていく。こういった潮流が、日本でも人権擁護法案がとりざたされるようなこととつながっているのかもしれない。
私個人は、もちろんネオ・ナチの信条などまったく支持しないが、当時ACLUがとった方針には感銘を受けるのだ。

月並みな表現だが、先人の苦闘の歴史のうえにいま謳歌できる自由がある。しかし、それはいまなお完成されてはいない。「未完の体系」としての表現の自由を、これからも試行錯誤しながら守り育てていきたいものだと思う。

目次紹介

はじめに
第1章 ゼンガー裁判の歴史的意義(植民地期)
第2章 権利章典、合衆国憲法と表現の自由(独立初期)
第3章 州における言論規制(19世紀前半)
第4章 南北戦争下の抑圧と各種の表現規制
第5章 国家確立期における自由観の相克(19世紀末)
第6章 表現の自由の本格的展開(第一次、二次大戦期)
第7章 マッカーシズムという嵐(戦後初期)
第8章 ウォレン裁判所の挑戦(1960年代)
第9章 バーガー裁判所の性格をめぐって(1970年代)
第10章 現代の諸相
むすびに代えて--「表現の自由」の再編成に向けて
あとがき
判例一覧・主要参考文献一覧
索引

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