紙の本
「考える」とは自らを「分類」すること
2000/12/01 06:29
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:三中信宏 - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書はペレックの遺著であり、書名となったエッセイ《考える/分類する》は最後におさめられている。13のエッセイはそれぞれ題材が一見ばらばらで、都市論から料理論にいたるまで跳躍する。しかし、その底流には、「日常生活における分類」という共通のテーマが横たわっている。【考える/分類する】とはどういう意味か?−それは:「私は分類する前に考えるのか、考える前に分類するのか。考えることをどうやって分類するか。分類しようとするとき。どう考えるのか」(p.119)というペレックの言葉によく表わされている。
彼の考えでは、penser/classer とは不可分にして単一の動詞なのだろう。「自分流に世界を理解するために分類し、感じ方の習慣と出来てしまった序列をつねにくつがえしつづけた」(p.iii)ペレックは、きわめて実験的な本書の方々で「分類」に関する断片的な個人的コメントをばらまく:
・一つの規則によって、全世界を分類するというのは、じつに人をひきつけることであり、一つの全般的法則が現象全体を規定することになる。...残念ながら、そんな分類は、うまくいかない。かつてうまくいったためしがないし、今後もうまくいかないだろう。(p.120)
・分類のめまいというものがある。(p.125)
・分類に関して、問題は、つづかないことである。私が分類し終わったときには、もうその分類は時代おくれになってしまっている。(p.126)
散在するペレックの言葉をかき集めて理解することはけっして容易ではない。とどのつまり「分類」とはいったい何なのだろうか?:「結局、私は自分を整理するのだ」(p.126)。そういうことだったのか!
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【目次】
まえがき iii
私が求めるものについてのノート 1
住むという動詞のいくつかの使い方 5
仕事机の上にあるいろいろな物についてのノート 9
見出された三つの部屋 15
本を整理する技術と方法についての覚え書き 19
斜めに見た十二章 27
策略の場 41
マレ=イザックの思い出 51
初心者用料理カード八十一枚 67
読むこと−社会-心理的素描 85
理想的な都市を想像することの困難さ 101
眼鏡に関する考察 105
《考える/分類する》 117
初出一覧 139
訳者あとがき 141
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衣食住や都市生活、流行にかかわる日常卑近な“もの”の目録を列挙しつつ、収集‐分類‐整理という人間の習性についての社会‐心理的素描を試み、現代社会の考現学的考察を通じて、コンピューター時代における人間の思考法を予見する。
現代社会の考現学。
[ 目次 ]
私が求めるものについてのノート
住むという動詞のいくつかの使い方
仕事机の上にあるいろいろな物についてのノート
見出された三つの部屋
本を整理する技術と方法についての覚え書き
斜めに見た十二章
策略の場
マレ=イザックの思い出
初心者用料理カード八十一枚
読むこと-社会‐心理的素描
理想的な都市を想像することの困難さ
眼鏡に関する考察
“考える/分類する”
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☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度
☆☆☆☆☆☆☆ 文章
☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー
☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性
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[ 関連図書 ]
[ 参考となる書評 ]
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考える・分類する。この二つはそう、人間がすること。
「人間は考える葦である」パスカル
「人間は分類する動物である」アリストテレス
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日常的なものを列挙し、分類することで新たに組み立てようとする試み。
「清少納言は分類しない。彼女は羅列し、ふたたびはじめる」と、枕草子に言及あり。
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分類好きな人が「枕草子」を愛読するのはわかる気がする。仏語訳があるんだねーそっちは良いけど、視力いい奴が眼鏡を語るな、人の苦労も知らんと〜‼︎
愛書家の書斎の片付けは不毛過ぎて笑える。無理無理。
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レシピの章はミニマルミュージックのように、微差を増幅しながら反復されてゆく。興味深いが、読み進めるには退屈なところもある。
清少納言の『枕草子』への言及が何箇所かある。列挙趣味に通じるところがあるのだろう。
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読み始めても、一瞬、何の本かわからんくなる。
昨日までアリストテレス読んでたからってのもあるけど、考える、分類する、って、アリストテレスやん。
我ながらこういう読書の順番の偶然を呼ぶセンスはなかなか悪くない。冴えてる!
で、あ、こういう本?と思ったところで、次の章へといくと、果たしてこれは何を書いてある?となる
別に網羅的なわけでもない、徒然と。
「誰かが私に家はどこかときいたら、私はたっぷり一ダースある答えのなかから、答えを選ぶ」
こういうことは、みんな実はやってる。相手にあわせて、質問の意図を想像して答える。そういうのが僕は下手でよくトンチンカンになるが。
昔、自由が丘に住んでる友達が、この質問に、嫌味になるのを避けて、「東横線沿い」と答えてた。
家はどこか、に答えるだけで、色々な逡巡がある。
日本に住んでる、と言って、へー!と言ってもらえるときもあれば、当たり前やろ、と怒られることもある
それは相手との関係性次第
机の上にあるものの分類も面白い。ずっとあるもの、数分だけあるもの、いつか使うもの、すぐ使うもの、全く使わないもの
本の整理も面白い。松岡正剛のブックウェアなんかを思い起こしつつ。
マレイザックの思い出、ってのや、料理カードなんか、読み通すことを期待してないのだろう、文脈から切り離された情報の宙吊り
何かを添えれば料理になるだろうに、マグロぶつ、みたいなの
「読むこと」って章が一番面白かったのは読書家の端くれとして仕方ない。
マングェルの「読書の歴史」なんかとあわせよみたい。
読む本の内容だけでなく、読む姿勢、読む行為そのものへの注目。
トイレで読むことで、腹が軽くなることとテクストの間の深い関係なんて、内臓的なものと感覚的なものの出会いとして楽しい指摘と思ったらジョイスを引いてくる
眼鏡に関する考察、これも面白い
これこそアリストテレスばりに眼鏡のことを考える、分類する
最後の「考える/分類する」も面白い。
ここで清少納言を、分類しない、羅列し、ふたたびはじめる。として出してくるところなんかいいね。
「結局、私は自分を整理するのだ」
そうそう、書棚つくってるときだって、整理されるのは書棚じゃなくて自分なんだよなー
そして、この本こそ書棚でどこに置けばいいのか、なかなか整理つかない本になってる
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レシピが列挙されたり、著者が学生時代に学んだ歴史の教科書からの抜き書きが続いたり、本棚の整理法や『枕草子』からの引用が行われたり。とっ散らかっている頭の中身や生活空間をいくら分類して整理しようとしても完全に整理することはできないよね、整理し続けることが生きるということだし、ということを言いたいのかな?と思いながら読み終えました。