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紙の本
なにげない言葉を重ね、これだけ人の心を打つ詩は、滅多にあるものではない
2000/07/09 17:17
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投稿者:安原顕 - この投稿者のレビュー一覧を見る
加島祥造の詩を初めてじっくり読んだ。好きだった詩人三好豊一郎(1920〜92)の無類の親友と知ったからだ。本書には、彼らの長年の交友から生まれた加島祥造の詩17篇、三好豊一郎の詩2篇、「ほおずき」「枯野抄II」など、三好の絵4点、加島の絵とデッサン4点、1975年夏、三好の令息が撮った2人の写真2葉から成っている。この2人の親友ぶりについて、三好夫人阿佐子さんが短文を寄せている。彼らは『荒地』同人時代から親しく、「あの二人」と言えば三好と加島のことを指していたようだ。その昔、加島祥造が信州大に勤務していた頃、三好は数回、彼を訪ねた。松本行が決まると、三好は一週間前からボストンバッグに着替えなどを詰めはじめ、「その後も毎日のように中のものを出し入れして落ち着きがない。まるで遠足を待ちかねた小学生のようで、とても滑稽だった」。そのことを後に加島夫人に話すと、「遠く松本でも同様に加島サンがそわそわしていたのだと聞いて驚いたことがあった」「人生の中で、どれだけの人達が心底心を許せる友をみつけることができるだろうか。私はこの二人を羨ましく思う」(98年12月)。加島の詩は19篇ともすべて好きだが、長いので全文引用はできない。「刑風」の一節だけでも引いておこう。刑風とは「すべてを枯らす刑に処すという意味で、秋風のこと。二人をテーマにした最初の詩」と、加島祥造の「解題」にあった。「ふたりの男は中田切川にそって/ゆっくり遡っていった。/紅らんだの葉のからむ林をくぐり/谷がせばまって、/高い堰堤の上に出た。(略)ふたりはしばらく黙って座っている。/ひとりは隣にいる男の/高血圧にうなされる禿げ頭が/なにを見ているのか知らない。(略)相手の男も、自分の隣の/低血圧になやむ白髪頭が/なにを見ているか知らない。(略)ふたりは握り飯を頬張り/足もとの水をすくって飲む。高血の禿げ頭が言う/「いい山だな、あれは」/低血の白髪頭が言う/「じつにうまいな、この水は」/ここでは/こんな常套句だけが適切なのある」(以下略)。なにげない言葉を重ね、これだけ人の心を打つ詩は、滅多にあるものではない。
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