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紙の本
なぜ幽霊は現れるのか?
2009/01/06 14:18
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:PenPen草 - この投稿者のレビュー一覧を見る
大学教授である著者が、北海道大学文学部で平成10年度に行ったヨーロッパ民俗論という講義内容をもとに書き下ろした本だそうです。
第一章の見出しになっている「幽霊はなぜ現れるのか」をテーマとして、英国の怖い民話を材料に、死者が幽霊として現れる理由を追究しています。
「幽霊が出てくる理由なんて、別に要らないのでは?」と怖い話が好きな私などは思いますが、読んでみると面白かったです。これは怖い話として読むより、ミステリーとして読むべきかもしれません。
英国でも日本でも、死者が安らかに眠れない理由は同じです。
犯罪や事故に巻き込まれて命を失った者の無念、裏切り者への復讐、残した財産への執着。また、これはキリスト教圏らしい理由として、行き倒れて人知れず死亡し教会墓地に埋葬されない、残した家族があまりに嘆くので死衣が濡れて寒くて眠れない、などが1章では取り上げられています。
この本は、あくまでも幽霊がいる、死んでも魂は残る、ということを前提に書かれているので、「幽霊なんかいない」という方には、テーマ自体ナンセンスかも知れません。
しかし、読み進むうちに、人間とは肉体と精神で成り立っており、現代社会は肉体に比重を傾けすぎた異常な時代になっていることに気づかされました。
いまも昔も怖い話はありますが、現代は都市伝説ブームですね。
都市にまつわる伝説、それは肉体的快楽のみを保障する都市社会に適合できず、精神を安定させる安全弁として、人間が作り出したものなのかも知れません。
人間が、生きていくうえで精神的な面を必要とする生物である限り、幽霊はこの世に出現し、人々はその現れる理由を推察し、自分の生き方に反映させていくのでしょう。
この本が絶版・復刻未定なのは、まことに残念です。
版が重ねられることを期待しています。
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