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紙の本
クリティカルな「視点」があってこそ読書の世界は広がる。あなたは自分の好きな作家を批評する本を読んだことがありますか?
2000/08/17 19:44
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:安藤哲也 - この投稿者のレビュー一覧を見る
本屋をやっているとこんな読者によく出くわす。「●▲さんの書いた本なら全部買う客」。小説ならまだしも、最近ひとりの“評論家”に傾倒する読者がやたら増えてきたと感じるのは僕だけか。例を挙げれば河合隼雄。彼がちょっとTVで喋ったりすると講談社+α文庫あたりの複数注文がよく入る。まあ売れれば書店は儲かるし、別に人様の嗜好に文句をつける気はないが、そんな“読書の仕方”はどうしたものかと思う。読書は両刃の剣。「信じ込んじゃアブナイよ」。そんな一声も掛けたくなるのだ。
本書は文芸評論として『季刊文科』に掲載された論文集。河合を始め、辻邦生、柄谷行人、加藤典洋、福田和也、『日』の平野啓一郎など、メディアや一部の信奉者が作り出したその道の“権威”を俎上に載せ「日本の知識人はなぜかくも純情に近代ヒューマニズムを信じていられるのか?」と彼らに素朴な疑問をぶつける。それはスリリングな批評で、読者としてはこの後本書によってどんな議論が生まれるのか興味が湧く。また本屋として思うのは、一つの論調に流される風潮の昨今において、本書のような“ブレーキの効く本”の存在は貴重だということ。そして自戒も込めて、いま“読者”に問われるのは、マイ・フェイバリットな“権威的著者”をコキ下ろす本を受け入れる度量なのではないだろうか。(bk1コーディネーター)
★関連書→『作家の値うち』福田和也著(飛鳥新社)、『乱読の極意』安原顯著(徳間書店) 。
※このレビューは『ダ・ヴィンチ』(メディアファクトリー)の「絶対読んでトクする20冊」に掲載されたものです)
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