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紙の本
政治過程研究のための道しるべ
2009/05/27 20:27
4人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:半久 - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書は2000年の発刊だが、いまでもこの分野のベーシックな教科書として評価できる。対象は中級むけになっている。入門編・最新刊としてなら、編者のひとりである伊藤氏による 『ポリティカル・サイエンス事始め 第3版』もおすすめしたい。
政治過程論とはなにかというと、政治学のなかでさまざまな政治的現実をダイナミックにかつ実証的に分析することを課題とする分野だ。
こんにちの政治過程論が志向するのは、以下の二つだ。
(1) 現実の分析や説明の手段としてできるだけ明示された共通の枠組み、モデル、理論を利用して政治現象を実証的に分析すること。
(2) 逆にそうした実証研究を通してそれらの枠組み、モデル、理論を発展、洗練さらには修正させていこうとすること。
基本となる研究アプローチは、行動科学主義の経験的・帰納的なアプローチだが、合理的選択論の数理的・演繹的なアプローチも使われる。
本書の特徴は、基本的な方法論を説明するとともに、こういった方法論的自覚にもとづく多彩な研究の「さわり=美味しいところ」を豊富に紹介してくれるところだ。解説はたしかに中級むけなのだろうが、それほど難解なものではない。図表は、適度に使っていて理解を助けてくれる。
個別のトピックから一点見てみよう。
たとえば、権力概念について政治過程論はどう考えているか。政治理論の分野ではよく言及される、フーコーの権力論はまったくでてこない。バクラッツとバラッツによる非決定権力論とルークスの3次元権力概念にはふれるが、これらの理論の評価は高くない。なぜなら、これらは権力の所在を客観的に確認するのが困難だからである(フーコーを取りあげないのは、たぶん同じような理由からだろう)。
経験的な政治過程研究には、観察可能な権力概念を基本とするのがふさわしい。これには批判もあるが、主に利用されるのはダールに代表される多元主義的権力概念であり、ついで場合によっては非決定権力概念が利用されるのだという。
けっこう難しいのでよき解説者に助けられてであるが、私はフーコーの権力論には魅力を感じている(それに、実証的要素が皆無というわけではない)。すぐれた思想・系譜学的研究は、世界を清新な目で見る力を私たちにあたえてくれる。
一方で実証主義的な政治学研究は、記述的推論を因果的推論で説明し、それを仮説として定式化する。この仮説は、法則、モデルや一般的な理論に高められるばあいもある。そして、仮説・理論を経験的に検証していくというステップを踏む。この流れは方法論的な制約ともなるが、だからこそ客観的な信頼性がより担保されるものとなる。
政治研究を目指す若い方には(若くなくてもいいですが)、できれば両方にチャレンジしていっていただけたらと思う。
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