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紙の本
日経ビジネス2000/9/25
2000/10/31 21:15
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投稿者:草野 厚 - この投稿者のレビュー一覧を見る
著名な経済評論家と、科学者の視点から日本軍を分析してきた研究者による日本陸軍の解剖である。対談は、1人の著者の書き下ろしとは異なり、ゴールに向かって議論が展開しないということがままある。論旨がつかみにくいのである。しかし、2人の会話のやり取りがうまくいくと、読者を飽きさせない知的論争となる。本書はそうした好例と言えよう。日本軍について、それほどの知識がない人にとっては、手に取る価値のある本だ。第1部陸軍の時代は満州事変から太平洋戦争まで6章を使って歴史を振り返り、第2部組織の本質は、決戦思想の組織と結果や、兵器の評価法など4章を割いている。
問題意識は鮮明で、これまで海軍に比べて批判的に捉えられてきた陸軍の見直し論である。日下氏の思い入れは「日本陸軍はすごい。集団降伏や集団脱走は一件もなく、兵は戦死と餓死を目前にしても命令に背かなかった」という言葉に明らかだ。他方、三野氏は、日下氏より陸軍に批判的である。しかし両者の議論は、次第に陸軍の無謀な戦争を遂行した理由の解明に進む。もっとも感情的なあら探しの議論でなく、数字に基づき分析しているのが特徴だ。確かに陸軍が太平洋戦争末期に、350万人もの兵員(国鉄職員が最大時で35万人)を抱えていた巨大組織であり、失敗の原因が急膨張したゆえの歪みであることは案外忘れられている。
驚いたことに、350万兵力のうち、最大時で百数十万の兵隊をアリューシャン列島から、インドまでに送ったという。面積で言えば、世界の20分の1である。この数字だけで、陸軍の無謀さが分かるとし、三野氏は、中国との戦争を終えてから、石油のあるインドネシアなどにのみ、進出すべきであったと述べる。結果的に、そうした決定は行えなかった。ここから、大きな難問が片付かないまま新しい分野に踏み出すのは、より大きな問題を抱え込み、失敗に至る可能性が高いこと、小さな成功を過大に評価し、自己の実力以上に手を広げるのは危険であるとの、現在の企業経営にも通ずる教訓を導く。
海軍と陸軍の組織間対立から不可能であったと断じつつも、三野氏は、航空機の標準化を英国軍のように両軍が進めれば、日本ははるかに生産効率を高めることができ、大戦争に挑むことができたとする。もっとも、本書が戦争賛美でないことは言うまでもない。
ただ、日下氏は義和団の乱の時など、陸軍は世界で一番紳士的な軍隊だと評価されたと言うが、なぜそうではなくなったのかという点については、もう少し深い議論が欲しかった。
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