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ヨーロッパのカフェ文化 みんなのレビュー
- クラウス・ティーレ=ドールマン (著), 平田 達治 (訳), 友田 和秀 (訳)
- 税込価格:3,080円(28pt)
- 出版社:大修館書店
- 発行年月:2000.5
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紙の本
カフェはもちろんコーヒーを飲むだけの場所ではなかった。快楽装置ヨーロッパのカフェのお話。
2000/07/10 20:50
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投稿者:牛尾篤 - この投稿者のレビュー一覧を見る
酒の飲めない大人が、町の中で落ちついた気分でくつろげる場所はどこか、それは喫茶店(カフェ)しかない。下戸の私は、カフェというタイトルが付いた本を見ると、つい手に取ってしまうようになった。
正面きって「ヨーロッパのカフェ文化」という題がついていると、これは買わずばなるまい。「今から、500年前、エチオピアの牧人がかっていた山羊が、草むらで赤い実を食べて突然、飛び跳ねだした。そこで彼等も、そのサクランボに似た実を食べ、心躍る気分を味わった。」
第一章は、こんな書き出しで始まる。コーヒーについては、色々な本を読んでいるつもりだったが、山羊がコーヒー豆の効用を最初に、人間に教えたとは知らなかった。第一章のサブタイトルに、「そこに足を踏み入れるのは恥ずべきことではない」とあり、これがこの本の全体のテーマともなっている。つまり、カフェでコーヒーを飲むと気分が高まる。気持ちの高まりと供に、コミュニケーションが生じ、様々な階層、職業の人間が出会うカフェは、情報交換の一大拠点となっていく。それを見た時の支配者は、カフェが反乱分子のたまり場になることを恐れた。当局の不安をよそに、カフェは魅力的な「黒い水」を提供する場所としてオリエントからヨーロッパに広まっていく。
もちろんカフェに集う人々は、コーヒーだけが目当てだったわけではない。カフェでは「恥ずべきこと」が大目に見られていたからだ。
ヴェニスのカフェでは、娼婦との出会いの場となり、ヴェニス政府は密告者によってこの事実を知らされるたびに、女性出入り禁止令を出すものの、それが守られたためしはなかった。当局はついに根負けして、女性も仮面さえつければカフェに立入るのを許したとか。いっそう風紀が乱れたのは言うまでもない。これは現代の風営法をめぐって、業者とお上のバトルにも似た面白いエピソードだ。
本書では、ヴェニス、チューリヒ、ウィーン、ブタペスト、ベルリン、ロンドンのカフェが次々に語られていく。自己申告の芸術家に割引きで食事を出すカフェ。成功した者とかけ出しの文士や画家を、部屋ごとに分ける店。中立国スイスのカフェでは、ナチのシンパと反ナチスの亡命者達が、テーブルをはさんで火花をちらす。こうなるとコーヒーを飲むのも命がけになってくる。
しめくくりは、ジョナサン・スウィフトも通いつめたロンドンのコーヒー店の話。三千もあったカフェは、十八世紀の初めにイギリスからほとんど姿を消してしまう。同業者同士で集まる会費制のクラブが発達したのが、カフェがなくなった原因だとか。 五十年間だけ、イギリスでもカフェ文化が花開いていたことも、この本で初めて知ることが出来た。
勉強になるなーという一冊です。 (bk1ブックナビゲーター:牛尾篤/イラストレーター 2000.7.11)
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