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国を愛するということ 愛国主義の限界をめぐる論争 みんなのレビュー
- マーサ・C.ヌスバウム (ほか著), 辰巳 伸知 (訳), 能川 元一 (訳)
- 税込価格:2,420円(22pt)
- 出版社:人文書院
- 発行年月:2000.5
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紙の本
それは、ローティから始まった
2006/02/26 19:26
5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:半久 - この投稿者のレビュー一覧を見る
まずは、訳者のコミットメント(肩入れ)の深さを高く評価したい。
訳者解説が28ページある。訳者前書きと合わせると34ページにもなる。
豊富な資料に鋭い本文解説、日本の事情との対比など、読みやすい文章で綴られている。
解説と銘打つからには、これぐらいのボリュームは欲しいと、常々思っている。なので、これだけでも得をした気分だ。
本文中の訳注が豊富で、肝心の訳文も及第点だと思う。
・・・・・・
「あら、千さん、どうしたの」
「ああ、雅代さんか。それがねえ」
「あなたにとっての肝心要は、内容の紹介と評価でしょ。何を躊躇ってるの」
「それが『法学セミナー』さんの紹介が良くできているんで、これ以上書くことがないというか、筆が進まないんだよ」
「また、弱気の虫? 他人のせいにばかりするのは、いい加減になさいな」
「せい、にはしてないけど」
「同じことよ。あなたがどう考えるかだわ。言いたいことがあるくせに。私から言いましょうか。そうよ、アメリカの『知識人』にとっての愛国主義は、自由、民主主義、人権に第一の価値を置く『国家』に限ってのことだというのは分かる。家族愛・隣人愛の延長としての愛郷意識は、コスモポリタンも否定しない。この『論争』に、折り合いはつけられると思うわ」
「そうだね。ヌスバウムの最後の『返答』は、それを予感させるものがあるね」
「でも、問題は、それは一部の『知識人』にしか共有されていないのでは?ということ」
「広く一致したとしても、今度はそれを『絶対の正義』としやしないかという危惧もあるんだ」
「そうね。『普遍性』の怖さ。それが他国への過度な干渉に、歴史的にも結びつきやすい国よね」
「対外的にもベトナム戦争を始めとして、他国に公式に謝罪したことはあまりないしなあ」
「ここ最近に至るまでそうよ。これは2003年5月のギャラップ社の調査からだけど」
〔 もし合衆国が、イラクは大量破壊兵器を所有しているということの決定的な証拠を発見することが出来ない場合、イラクとの戦争は正当化されると考えますか、されないと考えますか?
正当化されると考える 79%
正当化されないと考える 19%
意見なし 2% 〕
「つまり、『民主主義』をイラクにもたらせばいいじゃないかという、アメリカ流愛国主義があるからこその結果だし、プライドは傷つかない。それに、相当の理由さえあれば、コスモポリタンも『普遍の正義』を正当化するかもしれないわ」
「ただ、この後の調査では、この戦争に価値がないという人も増えてきているようだ」
「ええ。でも、もっぱら自国民の『損害』と、事態収拾の遅れを気にかけてのことでしょ。彼らの愛国主義は、さほど揺らいでないでしょうね」
「認めないねえ。確かに論者の多くは、そこらへんの警戒感は希薄だったようだ。むしろ、訳者の指摘が鋭敏だよ」
「その希薄さが今日に繋がっているのよ。『現実』に向き合った時、世界市民と愛国者は手を結ぶのよ。ヌスバウムはそうでないことを祈りたいけど。ホロコーストからの《ユダヤ人を救うために死を賭した人物》を、世界市民精神の象徴に仕立てているのが気になるわ」
「ところで、本書の『論争』の端緒は、ローティの発言、セネットの言うところの『赤狩り的含意』なんだよね。訳者は《ほとんど恫喝としか言いようのない発言》と憤っている。最近出た『RATIO』という雑誌でも、ローティは『民主主義諸国による【非民主的独裁体制】への軍事介入』を擁護しているよ」
「変わってないわね。要するに『ブッシュを選んだことが悪い』に留めることで、己の『磨き込まれた真鍮』は曇らせないぞという算段ね」
「彼の言う『リベラル・ユートピア』とやらも、屍の上に『創られる』のか・・・気が重いな」
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