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前半の構成主義と客観主義の哲学的考察は面白かったが、研究法でそれぞれ質的、量的とあてはめるあたりから、荒っぽい印象を受け、後半の事例分析はいまいちだった。本書は、第2章 教育理論の哲学的前提、第3章 構成主義の教育理論が素晴らしいから、☆4つ。構成主義の限界に触れていないのが残念。誤字もいくつか見られ、ちょっとダサイ。
・構成主義にとっての知識と学習
(1)学習とは学習者自身が知識を構築していく
(2)知識は状況に依存している
(3)学習は共同体の中での相互作用を通じておこなわれる
・ピアジェ:児童の発達において、自分と違った考えや前提をもつまわりの人に対し、自分の意見を説明したり、教えようと試みるうちに、自分自身でも曖昧であった知識が次第に明確になり、理解をすすめる(1970,構成主義)
・ヴィゴツキー:学習者をとりまく社会での他者の存在が必要であり、関心を共有するが、考え方の異なる他者とのやりとりが理解を深め、学習をうながす(1978,社会のなかの心)
・構成主義の理論は学習の社会的側面と学習者の主体的な関わりを強調している。教授上の留意点は
1.まちがうことを尊重する
2.探索することを奨励する
3.学習者相互のやり取りをうながす
4.教師の役割は援助であり、学習者みずからが知識を構成していくのを「助ける」ことが求められる(稲垣&波多野 1989,人はいかに学か)
・客観主義…再現性、信頼性、予測性。構成主義…協同性、自立性、内省性、やる気、関わり性、多様性。
・ピアジェの言葉を借りれば、思考の発展は、教育者や研究者の共同体の中で「同化」と「調整」を繰り返しながら、「間主観的なスキーマ」をより整合性のある洗練されたものに形成していく動的なプロセスであるといえるだろう。
・構成主義の前提。
*知識はその社会を構成している人々の相互作用によって構築される。現在私たちが理解している世界は、客観的な実在としての真理を写し取ることにあるのではなく、社会的相互作用の所産としてのものである。
*私たちが世界を理解する方法は、歴史的および文化的に相対的なものである。つまり、私たちの理解の仕方は、、おかれている歴史や文化に強く依存した形をとっている。
・EQは対人知性と心内地性。
・従来の「効率」「コントロール」「最適化」などをキーワードにした教授・学習モデルとは違った、「意味づけ」「価値観」「関係性」「一体感」をキーワードとした構成主義の学びのモデルが浮き彫りになってくる。
・構成主義の学習環境をデザインするためのガイドライン
1.学習活動を実際に解決しなければならない問題として、より大きな枠組みの中に埋め込む。
2.学習者が、問題や課題に主体的に取り組めるように支援をする
3.本物の問題状況をデザインする
4.現実の複雑な社会状況を反映した学習環境と課題をデザインする
5.問題解決に向けて取り組んでいるプロセスを学習者自身が自分のこととしてとらえられる環境をデザインする
6.生徒の学び���課程を支援し、多様なコミュニケーション・モードを活用する環境をデザインする
7.多様な視点を評価できる学習環境をデザインする
8.学習内容と学習プロセスの両方について内省する機会を用意する
・量的研究の4つの基準:内的妥当性、外的妥当性、信頼性、客観性
・遠隔教育だけに当てはまる独特の教育理論はない
・メディアの違いと学習効果の間には有意な差はない(Clark 1984)
・教員と学生双方に、遠隔教育のリテラシーが必要になる
・コンピュータなどの道具が透明になればなるほど、身体化してくればくるほど、道具を使う目的が明確に見えるようになる。つまり、道具の向こう側にいる人間とのコミュニケーションの重要性が増してくる。道具の使い方が透明になった分、メディアを通して相手とどのようにつながるかということが意識化されてくるのだ。
・「もの」メタファとしての情報は、限界がある。
・リテラシーの3側面:機能的(効率)、教養的(楽しむ、味わう)、批判的(エンパワーメント)