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紙の本

「語りにご用心!とりわけ女性が語るときは、語りがいつの間にか騙りになるから。」

2000/07/18 09:15

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:上野昂志 - この投稿者のレビュー一覧を見る

 角田喜久雄といえば、まず何よりも伝奇小説作家のイメージが強い。昭和10年代に書かれた『妖棋伝』、『髑髏銭』、『風雲将棋谷』などの長編が、そのイメージを決めた代表作ということになるだろう。それは、戦後に角田の作品を知るようになった読者にとっても、そうだった。とくに、子どもの頃は、これらの時代伝奇小説を読むと、登場する女性たちが色っぽくて、ドキドキしたものだった。

 だが、角田には、その一方で推理小説もある。これは、作家としてデビューして間もなくの大正の末年に、雑誌「新青年」などに発表したものから、戦後にまでわたっており、とくに戦後は、推理小説に意欲を燃やしていたらしい。本書『底無沼』に集められた作品群はその系列で、書かれた時期からいうと、大正15年から昭和38年に及んでいる。

 ただ、緻密なトリックを仕組んで、その謎を論理的に解き明かしていく本格推理小説かといえば、それとは、ちょっと趣が違う。伝奇的な味が勝っていたり、心理サスペンス的な色彩が強かったりと、いろいろだが、作者の興味は、謎解きよりも、謎そのものの提示に向かっているように思われるのだ。そして、特徴的なのは、その語りである。これは、実際に登場人物たちの会話なり、独白なりで物語が進められることが多いということもあるが、それほど明白でない場合でも、語り調が主で、客観的な記述ではきわめて少ないのだ。その意味では、伝奇小説作家としての角田喜久雄の本質は、推理小説の中にも生きているといえるだろう。

 一例を挙げよう。
「雨がまともに顔を叩く。
 耳が轟! と鳴る。
 一瞬、妾は飛び上がった。
 水が異常な引力で引き戻そうとした。数千貫の枷をはめられたように、身体が重いのだ。水を含んだ薄い夏着が海水着のように粘着して、くっきりと現れた乳房や下腹が怪しく波打つのを、妾は異様な気持ちで見つめた。・・・」

 これは、大正15年に書かれた『下水道』の一節だが、主人公の女性が豪雨の中、下水道に落ちた場面が、それこそ異様に迫力があり、それに較べると、推理小説的に作った後半部分のほうはボルテージが落ちる。ただ、戦後の作品には、そういう意味でのアンバランスなものは少なく、推理はともかく心理サスペンスとしては面白い作品が多い。とくに、『恐しき貞女』、『沼垂の女』、『悪魔のような女』、『四つの殺人』、『笛吹けば人が死ぬ』、『年輪』など女性を主人公にしたものは、読み終わったあとに、ふとそれらの女性の顔を振り返ってみたくなるような、不思議な味わいがある。 (bk1ブックナビゲーター:上野昂志/評論家 2000.07.17)

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