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来年があるさ みんなのレビュー
- ドリス・カーンズ・グッドウィン (著), 松井 みどり (訳)
- 税込価格:2,090円(19pt)
- 出版社:ベースボール・マガジン社
- 発行年月:2000.5
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紙の本
ドジャースOB野茂英雄にも是非読んでもらいたい、50年代おてんば娘の胸キュン回想録
2000/08/28 12:15
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投稿者:佐山一郎 - この投稿者のレビュー一覧を見る
老若男女に安心して薦められる本が少ない中で、ここまでの水準が保たれていると、本当に嬉しくなってしまう。表紙イラストレーション、装丁、訳業と何もかもがうまく行っている類い希な一冊だ。
主人公の少女は、熱狂的なブルックリン・ドジャース・ファンだった頃の著者自身。50年代アメリカン・ドリームの実相が程良い郷愁と共に語られていく。グッドウィンは83年の歴史を誇るピューリッツァー賞・ヒストリー部門を95年に『ノー・オーディナリー・タイム』で受賞した歴史学者。TV出演も頻繁な才女だ。行間から立ち上ってくるのは快活多感で弾けるような個性…。
試合のすべてを綿密に小さな赤いスコアブックに記録する最初のシーンからしてイケてる。6歳のときに父親がプレゼントしてくれたその真っ赤なスコアブックが長じて歴史学をライフワークにするきっかけとなるのだから、「家学としてのスポーツ」ということを考えずにはいられない。50年代ニューヨークの一少女の成長記録は、家族と地域をめぐる紐帯喪失と再生のドラマでもある。物語の背景がニューヨークのオールド・ファンが心底いい思いをした時代と重なり、それが作品を支える太い柱になっている。
1949年から57年までの9シーズンは、NYを本拠地とするドジャース、ジャイアンツ、ヤンキースの黄金時代。ドジャースは、ワールドシリーズで1度優勝、リーグ優勝を5回果たすが、シーズン最終戦の最終イニングで、2度もリーグ優勝を逃している。痛みと虚勢と祈りが込められたドジャース・ファンがうわごとのように繰り返すスローガンが、タイトルの「来年があるさ(Wait Till Next Year)」というわけである。
57年のシーズンを最後に、ブルーカラーの支持を集めたドジャースはロサンゼルスに移転してしまう。翌58年には病弱だった母がついに息をひきとる。最愛の母の死は、同時に少女期という名の黄金時代の終焉をも意味している。父は娘の反対を押し切り引っ越しを決意する。ブルックリン・ドジャース・ファンの例のスローガン<来年があるさ>が、わが家の役にも立つと綴られる箇所で、感極まる読者も多いはずだ。
これ以上の説明は、映画の結末を平気で語る愚に近い。共感されるべきは、ふだん気づくこともない生活様式の愛おしさと、ささやかな趣味=スポーツの偉大さ。<大リーグ野球>ということばに、以前のような魔術的なひびきが伴わないことは、今やアメリカも日本も同じだろう。しかし勝負事としてのスポーツの単純明快さは、どんよりした人生とは裏腹、いぜん透明感に満ちている。
スポーツが必然的に求める「公共」と「共同」の意識をこの本は間断なく刺激する。野球にめざめた少年少女時代を読みながら思い出す読者続出の☆☆☆☆☆Highly Recommended! (bk1ブックナビゲーター:佐山一郎/評論家 2000.08.28)
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