大人社会の風刺は未だに効力を失わず
2001/08/20 06:41
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:呑如来 - この投稿者のレビュー一覧を見る
さすがケストナー、というべき作品で、戦争、紛争、革命をやめようとしない大人ヘの激しい風刺になっています。会議ばかりしていて戦争の犠牲となる子供たちに思いを向けようとしない政府の役人たちに業を煮やしたゾウのオスカールが、世界中の動物たちに招集をかけて動物ビルで動物会議を開くことにするのですが、その目的が「こどもたちを守るため」であるのは素晴らしい視点としか言いようがありません。しかもその会議がケープタウンで開かれる大統領会議と同じ日に始まるようにしたところなどもうまい。
いろいろなどたばたがあった後、ようやく動物たちが人間たちに提案した条約が承認されるのですが、その5か条の中でも素敵なのは、
4、役所と役人と書類だんすの数は、どうしても必要な最小限度にへらされる。役所は、人間のためにあるのであって、その逆ではない。
5、今後いちばんよい待遇をうける役人は、教育者とする。
の2つではないでしょうか。
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人間の子どもたちの将来を憂う動物たちが、人間の大人たち(各国のお偉いさんたち)に、戦争をやめるよう働きかけるお話。人間は、これまでの二つの大戦と、数え切れないほどの中戦、小戦で、たくさんの大切なものを失ってきたのに、どうしてまだ戦争をやめることができないのだろう。その愚かさにそろそろ気付いてもいいはずなのに、どうして止めることができないのだろう。世界中の子どもたちのために、戦争をしないという決断をするということは、そんなに難しいことなのだろうか。たくさんの人々が平和を願っているにもかかわらず、どうしてその願いは力を持つことができないのだろう。[2005.1.4]
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ぼくたちだって鳥だよ。でも飛べない……。ペンギンが小さな声で泣き、ライチョウは羽の間に顔を埋める。このシーンが一番好きです。すごくいい。
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平和と戦争についてと同時に、今の環境問題にもあてはまるような社会派小説。
高橋健二氏の翻訳が秀逸。
同タイトルのカラー絵本もあるが、翻訳者が違う。
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絵本版http://booklog.jp/users/melancholidea/archives/1/4001100428と読み比べ。
他に「腕ながアルツール」と「魔法をかけられた電話」収録。
動物会議は訳の違いが楽しい。こちらのほうがやや詳しい。
絵本で(多分ページの都合で)削られていたのは世界情勢の部分。
大事なところをけっこう削っちゃってたんだな。
演説部分は特に、こちらのほうがよい。
条約も、絵本だとそれはどうなんだと思ったけれど、こちらならわかる。
でも子供のころに読んだらきっと絵本のほうが好きだったと思う。
残り二編は教訓風味の詩。(でも普通の物語に見える)
道徳だけど、「動物をいじめちゃだめ」みたいな、イデオロギーによらない倫理。
教育のための本なのに、どことなくレオポルド・ショヴォーのナンセンスみたいな空気がある。
冒頭に”子どもと 識者のための本 / イェラ・レプマンの着想にしたがって”とある。
「子供の本は世界の架け橋」http://booklog.jp/users/melancholidea/archives/1/4772190376に『動物会議』がどのようにして生まれたか書いてあった。以下引用
" 『動物会議』も、ビーダーシュタイン・ハウスで誕生しました。このテーマは私の頭から離れませんでした。失敗に終わった会議の数は、月ごとに増える一方でした。憶えておくのに苦労するほどです。この先、どれだけ多くの不調に終わる会議が待っているのか、わからないのが幸い、というべきでした。
なぜ人は、今もって、理性によって政治を行うことができないのでしょうか? この美しい星、地球が、自分たちのものだというのに、人間がなにをはじめるのかといえば、戦争です! 子どもたちは、くり返し、戦争で撃ち殺される危険にさらされるのです! おそらく、ここで一度、動物たちにご登場いただいて、その本能と人間の理性とを対峙させてみてはどうでしょうか。ここまで考えたとき、私は、エーリヒ・ケストナーのところに行きました。
「では、それは、おとなの本、もしくは、おとなの本と呼ばれるものだね?」と、ケストナーは尋ねました。
「そうでもあり、そうでもなしです。子どもたちの向こうにいる、おとなにまで届けなければなりません。」
「簡単なことではないね。子どもは、しばしばおとなの本に手を伸ばすが、その逆はまれだからね。」
「でも、今回はそうなるはずよ。このテーマは、みんなに関係がありますもの。」
「そうだね」とケストナーはいいました。「まったく、その通りだ。」"(p124-125)
動物たちが「人間はあれだけいろいろできるのに、何をはじめるかといったら戦争だ」と嘆くくだりに“彼女は、いや、彼はいいました”とあるのを見ると、レオポルトはレップマンなのかもしれない。
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単純に、絵本としてのワクワクや優しさが感じられて、好きだなー!
会議に参加するため、絵本の中の動物達までが本から抜け出してきたり、子どもたちが動物と遊んでいたり!
夢がいっぱ〜い。いいなぁ。好きだなぁ。ケストナーさん。
そして。このお話は平和への想いがつめられた、社会的な内容でもある。人間に辟易した動物たちが、子どもたちの平和のために動き出すというもの。考えさせられるものたくさん。
多くの人に触れて欲しい作品だな。