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紙の本

井上ひさし全著作レヴュー29

2010/10/31 09:48

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:稲葉 芳明 - この投稿者のレビュー一覧を見る

 初出は「小説現代」1973年1月号~76年7月号。
 ストリップ劇場の進行係を辞めた後、井上ひさしは小さな出版社の倉庫番となる。夕方6時から翌朝8時までただボヤーっとしているだけの仕事だったので、副業として稼ぐべく放送局の脚本懸賞にせっせと応募する。2年間で145回応募(18回入選、39回佳作)という実績は当然の如く人目を引き、1958年(24歳)にNHKから注文脚本の依頼があり、これを契機に以後放送業界に足を踏み入れる。本書は、黎明期を経て新たなメディアとして台頭し始めたテレビ界における活動を、著者が振り返った回想記である。
 テレビに限らず映画もそうだったと思うが、海のものとも山のものとも判断しかねる新しい業界が誕生した時、そこで繰り広げられる珍騒動てんやわんや生き生きした人間群像ドラマは、もうそれだけで読む者の興味をひきつける。ましてや、青年期(二十代半ば)で意気盛んな著者のエネルギーと、勃興し始めたテレビ界の活力が重なるのだから、これが面白くならない筈が無い。錚錚たる作家陣に混じってコント書きに悪戦苦闘した挙句下痢と脂汗に苦しみ、放送局近辺の喫茶店を仕事場代わりの根城としため少なくとも五軒の店をつぶし、下宿屋を一ヶ月間空けざるを得なくなった際はNHKで寝泊りし、製作予算や時間の制約などものともしないディレクター達と一緒に少しでもいい番組を作るべく砕骨粉身する著者の姿は、滑稽で、みっともなくて、青二才的に高慢で、でも最高に輝いている。本書の前半は井上ひさしが物したエッセイの中でも最良最上の一つで、無鉄砲で規格外れの行動も許容された大らかな時代の中、そこで思う存分活躍した井上ひさしの姿に対し、読者は限りない羨望の念を抱かざるを得ない。
 しかし、後半になるとガラリと調子が変わる。テレビ界を去った理由は本書で詳らかにされていないが、テレビ局が総じて「管理」的になり、かつての伸びやかさやエネルギー、いい番組を制作するための拘りとプライドが消滅したことへの歯に衣着せぬ鋭い批判が、本の調子を重いものにしている。とりわけNHKに対する舌鋒は辛辣極まりなく、かつて数々の教育番組やバラエティ番組(「若いこだま」)や連続ドラマ(「ひょっこりひょうたん島」)を生み出したが当事者であるが故に、愛憎半ばする筆者の複雑な心境が吐露されている。客観的に読み解くと、ここでの非難の対象は、テレビだけでなくマスコミ(ジャーナリズム)、ひいては日本人のメンタリティであり、対象が大きくなり過ぎた点が作品のバランスを崩しているのが惜しまれる。しかし、作者はそれを承知の上でかつてのホームグラウンドに向け、声高の罵声をエール代わりに浴びせずにはいられなかったのであろう。

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