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有島武郎の「実験小説」

2001/02/15 23:26

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:オリオン - この投稿者のレビュー一覧を見る


 小説は言語によって書かれた作品、すなわち仮構である。有島武郎は、小説の仮構性を思想性としてとらえた。それは、出来合いの思想を小説によって表現したという意味ではない。また、小説を書くことを通じて新しい思想を生み出したという意味でもない。そうではなくて、思想が生まれる現場を小説の中に実験的に仮構することで、いわば思想の不可能性を表現しようとしたのである。

 このような意味で、有島の小説は実験小説であり思想小説である。彼の文学がリアリズム文学であるといえるのは、その叙述の技法や素材の選択といった様式のゆえではなく、自然や身体や社会あるいは他者との関係性のうちに、思想の生成と挫折──思想の「生まれ出づる悩み」──の現場をリアルに描写しようとした仮構性のゆえなのである。

 たとえば、『或る女』を前近代的な社会の中で自我の解放を求めた女性、早月葉子の悲劇的な挫折の物語として読むのは間違っている。少なくとも、そのような見方は皮相である。

 葉子は、決して女性や自我の解放という思想を生きたわけではない。かといって、「生の喜び」を男の肉体に求めずにはいられない「女」として生きたわけでもない。『或る女』の文体を際立たせる特異な身体表現によって仮構されるのは、肉の喜びや性的一体化による愛の実体的基盤としての身体などではなく、外部とのかかわりをおいては実現しえない欲望そのもの、「生きていたい要求」そのものが、「タクト」をもって外部との関係性を取り結ぶ場としての身体なのである。「妖力ある女郎蜘蛛」が四つ手に張った網とは、生の欲望の表象やその構造ではない。それは、欲望そのものが外部に対して仕掛けたわななのだ。

 思想とは、このようなわなを仕掛けたりわなに近づくことの中から生まれるものなのであって、逆ではない。「生きていたい要求」、すなわち有島のいう本能としての愛が、自然や身体や社会あるいは他者といった外部とのかかわりにおいて「惜しみなく奪う」ことを通じて、いいかえると外部との関係の不可能性の経験を通じて、思想は生まれる。

 このことを見誤ると、葉子の「挫折」を思想の挫折と取り違え、女性の身体性や経済的自立をめぐる論議、あるいは自我の心理的次元において霊肉二元の克服を云々する不毛な言説が、『或る女』の読解を通じて生み出されることになってしまうのである。

《しかし葉子はとうとう今朝の出来事に打っ突かってしまった。葉子は恐ろしい崖のきわからめちゃくちゃに飛び込んでしまった。葉子の眼の前で今まで住んでいた世界はがらっと変わってしまった。木村がどうした。米国がどうした。養って行かなければならない妹や定子がどうした。今まで葉子を襲い続けていた不安はどうした。人に犯されまいと身構えていたその自尊心はどうした。そんなものは木葉微塵になくなってしまっていた。倉地を得たらばどんなことでもする。どんな屈辱でも蜜と思おう。倉地を自分ひとりに得さえすれば…。今まで知らなかった、捕虜の受くる蜜より甘い屈辱!》

 ここで、葉子の「屈辱」を心理的次元においてとらえるべきでないことは、いうまでもないだろう。身心の錯綜をめぐる自意識の葛藤のドラマとして『或る女』を読むことは、ミスリーディンクなのである。

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