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紙の本
夢の裏側
2010/07/06 01:36
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:SlowBird - この投稿者のレビュー一覧を見る
新幹線、夢の超特急、高度成長時代の象徴だった。世界最高速鉄道を建設すること自体が夢であり、その便利さも経済に大きく寄与した。現代においてなお経済の大動脈として機能している。しかしもちろんその影の部分も存在する。たぶんしただろう。
発端は、一人のBG(ビジネスガール)の失踪事件に、あるルポライターが喰い付いたところにある。単なる自殺かというところになって、ふとした綻びから背後に組織の存在が見えて来る。彼女の勤め先は新幹線公団、その裏に蠢く大物、愛人関係。フリーで雑誌と契約して取材しているライターの、足と執念による追跡行の泥臭さ、汗臭さに、かつての梶山季之の体験が滲み出ているようで面白い。
ちょうど新幹線公団には警察も疑いを持って、秘かに捜査を進めていた。詐欺や汚職などの知能犯を追うのが専門。「東海道特急ライン」「新神奈川駅」予定地の土地買収に関わる疑惑だ。しかし敵も海千山千、足跡を残さないための手段には長けていて、容易に尻尾を掴めない。
それが失踪事件を取材しているるルポライターと鉢合わせして、両者の情報をつき合わせることで、ようやく真相への手掛かりが姿を現してくる。犯人の方も逃げ足は速い。一方で地を這うような捜査と取材、はたして敵に追いつけるのか、逃げ切りか。
ストーリーは、菊名の小さな不動産屋からスタートし、農地の買い占め、謎の美女、関係者を一人ずつ訪ねての聞き取り、旅館の確認と、どこまでも庶民の物語として進む。権力の向こう側にいる人間には手が届かないのか。
戦後、いくつもの疑獄事件が起き、権力者の犯罪が暴き出されることも幾度かあった。偶然の重なりが無ければ巧妙に隠蔽されたままの事件も多くあったのかもしれない。国民の税金が、不当に吊り上げられた土地買収額に吸い込まれて行くとしたら、そういう民衆の怒りの代弁者としてのジャーナリスト、作家として在ろうとしていた作者の姿勢の現れた作品のように思う。
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