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紙の本
井上ひさし全著作レヴュー28
2010/10/24 09:28
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:稲葉 芳明 - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書巻頭「涙ぬきで―まえがきにかえて―」で、井上ひさしは次のように述べている:「これら八十篇の笑劇はすべて、昭和四十年代のなかば、擡頭期にあった「てんぷくトリオ」(三波伸介、故手塚睦夫、伊東四朗)のために書いたものであり、ひとつ残らず彼等によってテレヴィで演じられている」(注:その後三波伸介も鬼籍に入った)。
井上ひさしが大学を休学し、ストリップ劇場の名門浅草フランス座で舞台進行やショー、コントを手掛けていた頃については、色々なところで記している。その経験と才能を十二分に活かして手掛けたのが本書に収録されたテレビコントであり、筆者も小学生時分、てんぷくトリオによる「テレヴィの笑劇」を爆笑しながら楽しんだ覚えがある。この「まえがき」で井上氏は、「そのころまでのテレヴィの笑劇は、下がかった笑いと湿っぽい涙を主成分とするものが多かったが、三人の役者もわたしも、下がかった笑いはとにかく、湿っぽい涙だけは嫌いだった」という理由で、「ここに収められた笑劇がすべて「涙ぬき」を意図している」と述べている。
あるパターンを執拗に繰り返し、巧みなフェイントを挟みながらテンションを次第に高めていき、最後にストーンと鮮やかなオチをつける。湿っぽさは微塵も無く、アナーキーさを内包した爽快な笑いが心地好い。座付き作者の作劇術と、それを血肉化する役者が正にガップリ四つに組んだ、幸福な出会いと言えよう。ただ惜しむらくは、本ではこの面白さ・ダイナミズム・興奮が十全に伝わらない。「笑劇」を本で読んだときの可笑しさが10とするなら、油がのりきっていたてんぷくトリオによる実演は100にまで笑いを増幅していた。この頃のビデオがもし残っていたら是非再見してみたい。それが叶わぬなら、こうして本で我慢するしかないのだが・・・。
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