投稿元:
レビューを見る
古墳の闇から復活した大津皇子の魂と藤原の郎女との交感。古代への憧憬を掲示して近大日本文学に最高の金字塔を樹立した表題作。『山越の阿弥陀像の画因』を併載。(裏表紙解説より)
読み終えるのに時間がかかった。古代についての知識がなさすぎィ!
ある意味、斬新な本ではありました。日本の(これまでの)文学(近大文学)とは毛色が違いすぎて。初めてだよこんな本。
象徴的かつ観念的な世界。信仰と奇跡と不思議と不気味が共存している。そこに含まれる人生論とか倫理は無いに等しい。
こわくて、ふしぎ。
感性で読む小説だな~
でもやっぱ読みにくい
投稿元:
レビューを見る
大学のときのぼくの先生は、これのことを「日本文学史上最高の小説のひとつ」と言った。そうかもしれない。
そして「この小説を読んで、自分は小説家になるのをあきらめた」とも言った。
すごい小説だと思う。
出だしが印象的。
投稿元:
レビューを見る
「彼の人の眠りは、徐(しず)かに覚めて行った、まっ黒い夜の中に、更に冷え圧するものの澱んでゐるなかに、目のあいて来るのを、覚えたのである。
した、した、した。耳に伝ふやうに来るのは、水の垂れる音が、ただ凍りつくような暗闇の中で、おのづと睫(まつげ)と睫とが離れて来る。」
これは、死者の書の書き出し部分だが、折口信夫の学者、作家、歌人という側面がみごとに結集し凝縮した文章である。川村二郎氏はこの本の解説の中で、『死者の書』は、明治以後の日本近代小説の、最高の成果である」と書いているが、まさに、日本文学更上ユーカラに匹敵する雄大な叙事詩ともいえる稀有な作品である。
死者の書は、政争に敗れた大津皇子復活の物語であるが、折口がこれを書いた理由の一つは、祖父造酒介が大和飛鳥座神社の神主であった事もあげられるだろう。
投稿元:
レビューを見る
難解をもってなる、折口信夫の『死者の書』を読み終える。なるほどジェームズ・ジョイスのような凝った文体と内容を持つ近代文学の傑作かもしれない。存在を知った20代のころだと、読み通せなかったかもしれない。
長くないので、今回は、通読するのにさほど時間は掛からなかった。日本の神仏習合の成立事情を、小説の形態で解き明かしたもの。折口民俗学・古代学にあまり深入りするわけにはいかないが、浄土思想関連で、何かいうことがありそうだ。
平安中期、なぜ浄土思想が広まり、さらに鎌倉仏教を成立せしめたのか→奈良仏教からその素地があった、といったことを折口の古代研究を使って書けないものか。
「おそらく日本で生まれた仏教画の中で、最も美しい図相を示しているのは、来迎の図である」(柳宗悦『南無阿弥陀仏』177)とまでいわれた、山越し来迎図、その画因を考察した論考を収録する。これが死者の書の執筆動機を示すものであるとか。