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現代の「低所得層」 「貧困」研究の方法 中 みんなのレビュー
専門書 第72回日本学士院賞 受賞作品
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紙の本
「貧困」なんかもうこの国にはないと、あの頃ぼくらは思っていた
2002/11/09 01:31
2人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:くるぶし - この投稿者のレビュー一覧を見る
いまの日本で「貧困」などを口にする人は、世界に(発展途上国に)目が行ってしまっていて、まるで日本は豊かであって貧乏などとは無縁であるかのごとく考えていた。今は昔。やがてバブルがやってきて、それがはじけ、人々は今後まず間違いなく、自分たちの親の世代よりも「貧しく」なろうとしている。
ところが高度経済成長期とその前駆期間を通じて、日本の「低所得層」は増大し続けた。むしろその増大が、高度経済成長を準備し支えたとすら考えられるのである。
この上中下巻の3巻物で、合計で1500ページはあるというシロモノ。内容はまたすごいものだ。この豊かなニッポンで、貧困を研究するというのがまずすごい。日本中を敵に回すようなものである。だから江口氏はそれを徹底的に実証的にやる。分厚い本の大部分が実証に用いられるデータと、加えてその分析法である。結論を読まなくても、時間さえ有れば読者が自分で確かめることができるようにだ。自分が調査に関わったデータ以外に、国勢調査など誰でも手に入れることができるデータを----これはこのままつかっても「貧困」など出てこないように調整されている----いかに、他の統計データとつき合わせて必要なデータを抽出するか、その具体的作業もまたこの本のかなりの部分を占める。
要するに分厚いのには理由があるのである。
貧困は「ない」のではなく「見えない」のである。たとえば交際にはいくらかなりとも金が費用がかかり、低所得なほど交際範囲・行動範囲が縮小する。逆の立場からすれば「目にふれなくなる」。加えて低所得者ほど、転居が頻繁である(住宅供給と都市構造)。おかげでますます「目にふれなくなる」。
もっともっと知られていい本だと思うが(実際、触れられないだけで彼の方法はあちこちで用いられている節がある)、「貧困」を無いことにしようとする人たちは、この本ごと「無い」ことにしようとでもしているのだろうか。
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