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建築を様式史の区分に沿って大判の写真で紹介するシリーズ。時代毎の建築のいわゆる最低限の知識を補充できる。そういう性格の書なので特に感想はありません。第七巻に当たる本書はバロック+ロココ、16〜18世紀らへんの建築について。
「…美術史上の一般的なことばとしては、バロック美術とは、端正なルネサンス美術に対して、17世紀の非古典的な、非構成的で動感が強く、「絵画的」(※1)で、官能に強く訴える美術を言う。その時代は、ほぼ1580年ごろから1720年前後までで、その初期はマニエリスムの後期と重なり合う。」
(※1:ヴェルフリンのことば。平面的という意味ではなく、「彫刻的」に対してのことばで、三次元の空間内の対象を、光が照らし出す減少として、奥行感をもって表現するヨーロッパの絵画の美術的特性を意味する。)
*バロックは他の様式に比べ、特にヨーロッパ内の地域ごとの時差が激しい。細部における差異もまた同様である。
「前期(〜1620)および盛期バロック(〜1680)美術は、カソリック教会の反宗教改革運動をバックに主としてローマで発達した。」
*この時代、美術の中心はローマであった。
「17世紀の後半から、美術の中心は、当時ヨーロッパ一の強国となった専制王政の国フランスの首都パリおよびその宮廷の所在地ヴェルサイユに移った。後期バロック(〜1720)の美術の主流は世俗美術で、それは専制王政と密接に結びついて発達した。」
*フランスのバロックは「イタリアやフランドルに比べれば、曲線の使用が少なく、より構成的であり、変形破風などを用いていないので、より均整な感じを与えるが、装飾性が強く、いちじるしい明暗の対比や力の相克を感じさせる豪華な壁面意匠や内部空間」をもつ。
*反宗教改革の時代でもあり、自然科学成立の時代でもある。
*人間を中心に据える人文主義への疑いから生まれたマニエリスムの克服。
「バロックの世界観は、自然的存在としての人間は、変転生成する大宇宙の中では虫のごとき、あるいは一茎の葦のごとき小さな存在と見るが、同時に人間は「考える葦」(※2)で、神から授けられた理性によって、あるいは神の恩寵によって世界に君臨する存在であると考えられた。」
(※2:パスカル『パンセ』内のことば。)
*幻惑、官能、陶酔。宗教的陶酔。