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シンデレラの罠 みんなのレビュー
- セバスチアン・ジャプリゾ (著), 望月 芳郎 (訳)
- 税込価格:594円(5pt)
- 出版社:東京創元社
- 発行年月:1980
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紙の本
めくるめくミステリ
2003/06/14 20:59
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:PNU - この投稿者のレビュー一覧を見る
あまりにも有名で、興味かきたてられるカッコいい紹介文:
「私がこれから物語る事件は巧妙にしくまれた殺人事件です
私はその事件で探偵です
また証人です
また被害者です
そのうえ犯人なのです(以下略)」
で知られるミステリである。火事場に女が二人。一人の女が焼け死ぬ。もう一人の女、「私」は火事現場で顔と手に重症の火傷を負って倒れていた。記憶を失った「私」は若く美しく、億万長者の相続人であるらしい。死んだ娘は「私」のとりまきで、奴隷で、親友であったらしい。話は単純なのだ、記憶喪失の「私」はこの二人の娘のどちらかであるのは間違いないのだから。しかし、そこが問題で二択のどちらが正解なのか、読者はヒロインとともに悩むことになる。
愛憎半ばする、ヒロインともう一人の娘との関係は、〈女友達〉について実に考えさせられる。同性であるがゆえの崇拝、憧憬、嫉妬がリアルにえがかれていて胸を打つ。そこへ絡んでくる3人目の謎の女、ジャンヌの意図と気持ちが、私には最後までわからなかった。シンプルなようでいて、かなり深い物語なのである。そして罪深きは4人目の女、億万長者のミドラ伯母であろう。彼女のペットに対するがごとき偏愛と冷酷が、全ての犯罪の遠因となっているのだから。とにかく、これでもかと女がえがかれた小説だ。女たちに比べて、誘惑者や脅迫者、告発者である男たちの存在感は弱い。しかし、「事件の陰に女あり」が真ならば、その逆もまた真なり。「男」の存在がなければ、真実にたどりつくことは出来ないのだ。タイトルがオチでピリリと効いている、隙のない物語である。
紙の本
典型的な傑作フレンチミステリ
2002/03/01 00:03
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:キイスミアキ - この投稿者のレビュー一覧を見る
セバスチアン・ジャプリゾは、マルセイユ出身の才人で、若いころは純文学の作家として、または翻訳家として活動していた。ジャプリゾというペンネームは、本名ジャン=パティスト・ロッシのアナグラムであるという。
七十年代には多くの脚本を手がけ、七六年には『続・個人教授』を自らの脚本と監督によって制作するなど、映画との関わりあいが強い作家である。
代表作は、彼にとってのミステリー第二作にあたる『シンデレラの罠』。フランス推理小説大賞の受賞をはじめ、十三カ国で翻訳されるなど、古典的名作としての評価が高い。
包帯で顔面や腕をぐるぐるまきにされた女性は、自らが体験したできごとを語る。巧妙な殺人事件において、彼女は探偵であり、証人であり、被害者であり、犯人である、と。
ミイラのような姿で、ベッドでの療養を余儀なくされている億万長者の相続人、ミッキーの失われた記憶が蘇ったとき、奇妙な体験のすべてが明らかとなる。
一人四役という、これまでにないトリックを使用している本作は、《一人四役》と聞くだけでも十分に興味をそそられる上に、さらに魅力的なコピーをもって紹介された。
日本でも、島田荘司の紹介文が帯に踊っていると、彼の非凡さや作品への感心を伺い知ることができ、その作品を手に取ってみようという気分になるが、『シンデレラの罠』のコピーも本当に素晴らしい。
私がこれから物語る事件は巧妙にしくまれた殺人事件です。私はその事件で探偵です。また被害者です。そのうえ犯人なのです。私は四人全部なのです。いったい私は何者なのでしょう。
《いったい私は何者なのでしょう》この最大の謎が明らかとなるラストは、待ち遠しくもあり、知ることが恐ろしいことのようでもある。
パッと・マガーの『探偵を捜せ!』では、犯人が探偵を探すという逆転があった。また、刑事コロンボシリーズのように、冒頭で犯行のいっさいが明らかとされたうえで結末を迎える犯人捜しもある。これらは、一般的な、探偵が犯人を探すというミステリと区別され、倒叙ミステリと呼ばれている。
本作においては、上記二作の逆転された構造を同時に取り入れつつ、さらに螺旋状にプロットを組み上げ、なんらかの永久的な期間を作り上げたかのような現象が起こっている。探偵であり、証人であり、被害者であり、犯人であるという、一人四役をやってのけた才能には驚くばかりだ。
ベッドに横たわったまま、包帯によって自分の顔すら見ることができず、ぼんやりとした記憶を頼りに、自分が何者であるのかを思いだそうとする主人公。病室と、彼女の記憶とが交互に描かれ、最終的に明らかとなる本当の彼女と、その運命には、納得する他はない。
特に、運命についてのストーリーテーキングぶりからは、ややフランス映画のような印象を受けた。安易な幸福が待っているわけでもなく、絶望的なわけでもない、現実的なラストが描かれているように感じた。
謎解きばかりが小説のすべてではなく、ミステリーにおいても、真実が明らかとなったと同時に、最終的には、現実的で永続的な、日常という出来事が起こりうるのだ。この点からも、一人四役という大トリックの点からも、この作品は大きな成功を収めたと言えるだろう。
紙の本
昔は衝撃的だったとは思うんですね。でも、それ以降、このトリックのいくつかは変形されて使われ輝きを失った。むしろサスペンスの部分が色褪せません
2007/02/07 19:45
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:みーちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
知人が今でもうわ言のように繰り返すのが「それにしても、みーちゃん、ジャプリゾの『シンデレラの罠』は忘れられないよね」という言葉で、問い掛けられた私は忘れてしまった筋を思い出すのに精一杯で、たしか謎テンコ盛りのお話だったよな、でも似たような設定で都筑道夫が何かを書いていたような・・・でも、私にとってはやっぱりクイーンの『ギリシア棺の謎』であり、ロスの『Xの悲劇』なんだよな、なんて思うわけです。
で、その過去に囚われた友人が『シンデレラの罠』を何十年かぶりに読み返したよ、と言うのを聞いて、それなら完忘状態である私も筋くらい思い出せないとハブラレてしまうと焦ってこの本を手にしたのです。2000年に新版になって洗練されたカバーは嬉しかったのですが、本を開くと小さな活字が一杯で、せめて活字サイズだけでも今風にして欲しかったなあ、とため息をついた次第。
カバー写真●小川和夫
カメラ東京サービス
カバーデザイン●小倉敏夫
カバー裏の内容紹介は
私がこれから物語る事件は巧妙にしくまれた殺人事件です。私はその事件で探偵です。証人です。被害者です。そのうえ犯人なのです。私は四人全部なのです。いったい私は何者でしょう。ある朝目覚めると顔にミイラのような包帯を巻かれているのを知った私はミッキー、億万長者の相続人。失われた記憶、私はどうしたの・・・・・・?空前絶後のトリックで全世界の話題をさらった傑作ミステリ。
扉の案内文は
私は20歳の娘、億万長者の相続人です。私がこれから物語る事件は、巧妙にしくまれた殺人事件です。私はその事件で探偵です。また証人です。また被害者です。そのうえ犯人なのです。私は4人全部なのです。いったい私は何者でしょう。1人4役を演じる女主人公という空前絶後のトリックで展開する62年度の話題をさらった世界的な問題作。シンデレラの罠は、はたしてどこにあったのか?
で、出版社のWEB上の宣伝文句ですが
●井上夢人氏推薦——「茫然自失のまま本を閉じるときの絶望感は、30年経っても覚えていられる。」
【フランス推理小説大賞受賞】
私は20歳の娘、億万長者の相続人である。しかも物語は「これから私が物語る事件は、巧妙にしくまれた殺人事件です」という言葉で始まる。私は事件の探偵であり、証人であり、被害者であり、そのうえ犯人でもある。いったい私とは何者か? 1人4役を演じる空前絶後のトリック。1962年度推理小説界の話題をさらった問題作!
だそうです。正直、本当に読んだことあったのかなあ、なんて自分の記憶を疑いました。少なくとも衝撃は感じません(とうことは、やっぱり読んだのかなあ?)。でも、それはこの小説の設定が映画やテレビなので盛んに使われたこともあるのではないでしょうか。だから私などは、もう一ひねりあってもいいんじゃないか、なんて思ってしまいました。
でも、真実を見抜いた男が現れるあたりからのサスペンスは好きですね。小説で読まされると、脅迫者に対する不快感で頭の芯まで真っ黒になりそうですが、これを映画でみせられたら心臓がおかしくなっちゃうかもしれません。脅迫っていうのは、する人間もですが、される側までも狂わせちゃう、そこが、我が家の次女なんかは「ドキドキして心臓に悪い!」っていうところなんでしょう。
この小説のキモである一人四役より、ある意味、手垢のついた脅迫シーンだけが心に残ってしまった、というのが正直なところ。ちなみに、私の前にこの本を読み直した知人は、やはり感心したそうです。ふーむ、思い入れの違いなんでしょうか、それとも濫読ゆえの感覚の麻痺が私にある?とりあえず確かめてください。
紙の本
シンデレラの罠
2002/03/22 15:04
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投稿者:真 - この投稿者のレビュー一覧を見る
かなり古い作品。でも結構面白い。「私は事件の探偵であり、証人であり、被害者でもあり、しかも犯人でもあるのです。さて私は何者でしょう?」という変わった趣向がたのしい。ミステリファンなら読まずにはいられないだろう。いかにもフランスミステリらしい、トリッキーな一品だ。