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紙の本
礼儀正しく論争をするスピノザの姿勢に頭が下がる。ゲーテも絶賛した「愛と誠実の書」。
2007/08/29 12:07
5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:銀の皿 - この投稿者のレビュー一覧を見る
スピノザは「絶対的な神」を主張しているにもかかわらず、ユダヤ教会から破門されたり、「神学・政治論」はキリスト教会から売買禁止されるなど、なかなか不可解である。それでいて著書はすくない。この往復書簡集はそういったスピノザを理解するにはおおいに手がかりとなるものでもある。
手紙は、儀礼的な言葉なども当然入っていたり、学問的な主張とは関係のない家族の話題とかが入ったりして冗長なところもあるのだが、「相手に説明する」形で書かれるので具体的で分かりやすく、書物には載せなかった内容にも言及されていたりするので理解の深みも増してくれる。実際にスピノザの書簡にはそういった主著を補完するような文章もかなり見出すことができる。
また、(すべてではないが)「往復」であるのでどのような手紙をスピノザが受け取ったか、もわかる。当時からスピノザが随分とキリスト信者から「無神論者」と言われていたことは良く知られているが、往復書簡中にその具体的な内容を見ることができる。スピノザの論理を攻撃し、「あなたが悔い改めるなら神はいつでもお許しくださる」といった文章を読むと、宗教者は今の時代まで変わらないものだと妙な感心もしてしまう。
イギリス王立協会の初代書記長であったオルデンブルグとの往復書簡がかなりの数収録されている。協会の論文に意見を求められて自ら実験したことなども書かれているが、そこからはスピノザがいわゆる科学にも造詣があったこと(レンズ磨きをしていたことは有名)、そして科学はまだ真理を探究する哲学の一部であったことが読み取れる。書簡の往復が進むうち、スピノザは科学よりも神学と哲学に、というか神学から哲学を解き放つことに、力を向けるようになり、科学を推進するオルデンブルグらの方向とは少しずつ離れていった様子も見えてくるようである。
内容の本筋とはずれるが、当時の「人手をたよって手紙を送る」郵便事情についてもいろいろと書かれていてなかなか面白い。
スピノザを知る、という観点でこの書簡集からもう一つ読み取れることがある。スピノザが、手紙をくれた相手に対し、時にはあきれたり諦めかけたりしながらも、丁寧に真摯に応えている、ということである。理解不足で言葉足らずの質問、と思われるような場合にもスピノザは一つ一つ、問題点を明らかにするように説明をしている。特に宗教的な問題では、質問とはいいながら、自分の主張を綿々と書き綴り、説得をするばかりのような手紙もある。そういう相手にも、スピノザは半分諦めながらも、丁寧な言葉で手紙をかえしている。
ゲーテが「スピノザの往復書簡集は人がこの世において人間愛と誠実について読みうる最も興味ある書である。」と言ったというのも全くもっともだと思われる。「手紙とはこういうものであった」ということを読んでみる、というためだけにでも、この往復書簡は一読の価値がある、といいたい。
訳者の解説には、書簡を相手のリストがあり、どのような人物かが簡潔に示されていて背景を理解する手助けをしてくれる。
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