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紙の本
人間味あふれるおとうさんとぼくの物語
2005/07/17 06:56
5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:yukkiebeer - この投稿者のレビュー一覧を見る
ちょびひげ、太っちょのおとうさん。つるつる頭だけれどまだ38歳。そんなおとうさんとぼくとの毎日を数コマで綴った漫画。戦前のドイツで絶大な人気を誇った作品です。先日手にした「ドイチュラント ドイツあれこれおしながき」(山田庸子著/ピエ・ブックス刊)の中で紹介されていたため、読んでみることにしました。
おとうさんはあふれるほどの愛情でぼくを愛してくれますけど、たまには子ども相手には大人げないほどムキになってしまいます。チェスのマッチでは負けた腹いせに、ぼくのお尻をお仕置きでペンペン。
連載初期の頃の「サザエさん」や「フクちゃん」を思わせる素朴な画風。セリフが全くないので、国境を越えて人々をクスリとさせる力を持っています。
巻末に作者e.o.プラウエンの履歴と連載された頃の時代背景が記されています。
_ 児童文学者ケストナーとも親交のあったe.o.プラウエン。ナチス政権はこの「おとうさんとぼく」の人気に目をつけ、作者の意に反して登場人物二人を国家キャンペーンに利用していきます。ナチに抵抗した彼は最後に獄内で自死する道を選びます。
痛ましい最期を遂げたプラウエンは妻にあててこんな遺書を残します。「息子を人間に育ててくれ」。
怒り、笑い、泣く。そんな当たり前の感情を、人を傷つけることなく思い切り表現できる人間になることを息子クリスチャンにプラウエンは望んだのです。そんな彼らしい、魅力あふれる漫画作品集です。
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