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紙の本
大杉栄がオムツを洗う話がなんとも、微笑ましく。
2009/06/22 13:23
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:浦辺 登 - この投稿者のレビュー一覧を見る
著者の父は大杉栄、母は伊藤野枝。
無政府主義者である大杉栄とともに憲兵大尉の甘粕正彦に殺された伊藤野枝の姓を継いでいる。
その著者自身は記憶も定かでない頃に両親を失い、母親の実家である福岡の祖父母のもとに引き取られて成長している。そこで過ごした幼い頃の思い出が語られているが、長じて知った両親の権力に対する闘いの姿をみて、彼女なりの権力との闘いを繰り広げている。
故なき差別に苦しむ者を救うために闘っている。
伊藤野枝が育った九州の福岡といえば保守的な、どちらかというと右翼的な土地柄と思われるかもしれない。それは、右翼の大物といわれた筑前玄洋社の頭山満を生み出したという背景があるかもしれないが、この筑前玄洋社も権力に対抗する反政府団体であった。頭山満も反政府主義者として大久保利通暗殺の嫌疑で牢獄に放り込まれ、拷問の日々を送っている。
大杉栄といえば、国内の治安維持を司る内務大臣であった後藤新平から活動資金を貰ったエピソードが有名だが、大杉に後藤を紹介したのが頭山満、杉山茂丸である。郷里が同じである頭山、杉山を伊藤野枝が頼ったのが真相だが、左翼の源流といわれる中江兆民と頭山満とは信頼を寄せた友人であったことからも右翼も左翼も紙一重という現実がある。大杉栄、伊藤野枝の葬儀のあと、骨箱が右翼に盗まれたというが、おもしろいことに筑前玄洋社の面々は葬儀の際の警備を受け持っているし、書生として伊藤野枝の実弟が頭山満の邸に住み込んでいたとも伝えられている。
右翼との関係については本書に書かれてはいないものの、背景を認めながら読み進むと、権力とは差別とはなんなのだろうと考えさせられる。
本書を読んでいておもしろかったのは、伊藤野枝の実家を大杉栄が訪れ、著者のオムツを洗っていたということだった。その大杉栄が娘に付けた名前がフランスの無政府主義者ルイズ・ミッシエルのルイズからとったものとのこと。
伊藤野枝は幼少の頃から作文がうまかったとのことだが、著者にもそれが受け継がれていて、言葉選びもしっとりとした趣があってついつい、引き込まれました。
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