紙の本
作品世界にどっぷりと浸かる心地よさ
2001/08/18 22:41
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投稿者:読ん太 - この投稿者のレビュー一覧を見る
表題作ほか2編の短編集。
澁澤作品には、いつも戸惑いを覚えてしまう。読んだ後に、「あぁ、そうだったのか!」という感覚も起こらないし、何らかの行動を起こそうとするパワーを蓄えられるものでもない。エロスがあり、社会批判のようなものもあり、反哲学的であったり、また哲学的であったり…。
結局のところ、何も理解していないのではないか?と言われればそれまでであるが、とにかく、浮かび上がってくるものがない。それでも、私は、澁澤作品が好きだ。こんな感想しか書けない自分が、我ながら情けないが、各編のあらすじを少し紹介して終わりとしよう。
『犬狼都市 キュノポリス』は、狼と生活する麗子という女性を描いたもの。狼と生活すると言っても、見た目は犬を飼うように、庭に小屋を置き柵をして餌を与えてという関係だ。麗子とファキイル(狼の名前)の秘密の世界が幻想的に描かれている。
『陽物神譚』は、玉ねぎを崇める若き皇帝のお話。日夜、巨大な玉ねぎを彫り続ける彫刻師の語りに始まって、次に切開手術で両性具有となる皇帝の語り、そして、皇帝付きの奴隷の語り、殺された哲学者の霊魂の語り、高級将校の語りと様々な人の語りによって物語が進んでいく。
『マドンナの真珠』は、生きていた頃の悪事によって、死後、成仏することなく海の上を船でさまよう亡者達を描いたもの。ある日、亡者達の船に、海で遭難した若い女性3人と1人の赤ん坊が助け上げられる。果たして、永遠に満たされぬ亡者達の欲望を、これら生身の人間たちが満たすことができるであろうか?
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澁澤はドSM作家と勘違いしている方に読んで頂きたい(笑)
ダイヤモンドのような研ぎ澄まされた文章は秀逸。でも、万人ウケはやっぱりしないか、と3ツ星。自分の中では5ツ星なんだけど。
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360
宝石凝視のなかで、誇り高き犬狼貴族との婚姻を幻想的に描いた表題作のほかヘリオガバルス帝の物語を小説化した「陽物神譚」、彷徨える幽霊船の苦悩を警抜な着想で捉えた「マドンナの真珠」の3篇を収録――超硬度の明晰な文体で織りなす澁澤文学不朽の名作。
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2012年05月25日記事編集。
「犬狼都市」「陽物神譚」「マドンナの真珠」の3編。
丸ごと『澁澤龍彦初期小説集』に
吸収されてしまったけど(泣)
解説として倉橋由美子のエッセイが収録されているので、
もったいなくて処分できない。
表題作は、継母はおろか父親まで軽侮する美しい娘と、
愛するコヨーテとの秘密の交信の物語。
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初澁澤作品。
私は短編が好きなので丁度良かった。
物事の表現と内容が絢爛で(それでいて糜爛した)宝飾品のよう。冷たく熱い、豪華な言葉がぎっしり敷き詰められているのに、装飾過多どころか空虚な印象を受ける。
陽物とか姦淫とかそんな単語も多いのに、全っ然生々しくない。性の本質は神秘的で輝かしいものだから。
これはファンが多いのも分かります。
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犬狼都市
女が、愛する犬ファキイルと。ダイヤモンドに閉じ込められて。妊娠。
陽物神譚
ヘリオガバルス統治下の、数名の独白。
マドンナの真珠
幽霊船の、幽霊たちの立場から。
「実在する赤道」へ。
あー。夢見心地。よきかなー。
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犬狼都市/陽物神譚/マドンナの真珠
三編を収録。
犬狼都市は処女と狼が交わる話しながら、
なんだか古代神とか出てきてしまって
一気に陳腐な香りに変わり果ててしまった。
エジプトの犬神アヌビスの子孫が
「世界中の水族館をぶち壊して歩くこと」
が唯一の情熱だなんて。
独自の雰囲気を持つものの、
その世界は私を誘ってはくれなかった。
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20140822 玉ねぎの話でなんか笑ってしまった。三つとも綺麗なお話で、ラストに倉橋由美子の文章がある。
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2017年、12冊目は澁澤龍彦の短編集、3編収録。
各々簡単に触れておきましょう。
犬狼都市:エジプトのアヌビスの末裔のアメリカ・コヨーテと、それを飼う女の物語。独特のエロティシズムも漂うファンタジー。オチは思わず、笑ってしまった。
陽物神譚:ローマ帝国の少年皇帝、ヘリオガバス帝の物語。それを、彫刻家、皇帝、皇帝付きの奴隷、彫刻家に殺された哲学者、兵士の複数視点で紡いである。
マドンナの真珠:幽霊船に救われた三人の女と赤子の物語。ホラー・ファンタジーの体裁だが、ホラー<ファンタジー。ホラー要素は設定のみ。
そして、倉橋由美子による『澁澤龍彦の世界』と題された解説。この解説が抜群にイイ❗文庫解説では、屈指の名解説。読み物として(エッセイ的に)充分に成立している。澁澤龍彦好き、倉橋由美子好きのドチラも是非読んでいただきたい。
耽美派に敬愛される、澁澤龍彦。その片鱗は充分に知るコトは出来る。表現や、文字は昭和30年代的なモノを多分に含んでいるが、読み難さはソレ程感じないだろう。スマホ片手にググりながら読むのも、アリ。
一方、短編集故か、物足りなさを感じてしまうのも否めない。また、現在、入手も容易でない。その辺を考慮して、総合評価は★★★☆☆としました。
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澁澤龍彦の作品を初めて読んだ。
以前、犬狼都市に遺書を挟んでいるという子を見かけたので、遺書を託したくなる様な本とはどんな本だろう、と興味があった。
すごい下世話な感想で申し訳ないが、エロがここまで直接的な言葉を使わず表現され、しかもファンタジーっぽくなることに驚いた。いや、すごいよ。官能小説なんかで、ありとあらゆる比喩を見かけることはあるけど(あれもすごい)、文学としてのエロってこんな感じか〜!となった。いやらしくないし、グロくないし、下品じゃないというか。
あと麗子の『自分の前で、父親がこんなに陽気になってよいはずはないのだ。』というワンフレーズが痺れた。父親対する嫌悪と、麗子の勝気な性格や自己愛を表しているように思えて、個人的にはかなり好きなフレーズだった。
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「犬狼都市」「陽物神譚」「マドンナの真珠」の3編と、巻末ESSAYは倉橋由美子の「澁澤龍彦の世界」。このサイズの本持ち運びもしやすいし好きでした笑
内容はどれも澁澤龍彦!という感じで好きだったし、「ダイヤモンドの超硬度」に達している文章で読むともう参ってしまう。
「犬狼都市」美しい娘麗子と、彼女が愛するコヨーテのファキイルの宝石の中での婚姻。倉橋由美子、よっぽどこの作品が好きだったんだなあ笑笑
誇り高き犬狼貴族のファキイルが「…おれは大ロッキー山脈のほとり…」と語りだしたときはゾクゾクしました。エピグラフはエドガア・ポオ「リジイア」より、「デモクリトスの井戸よりも深く、わが恋人の瞳孔のうちにひそむもの」
「陽物神譚」一番好きだったし、自分が一番好きだろうな?とよくわかる作品。「虚無はどこの次元に棲むのか。空虚はついに実在たり得ぬか?お前がこれに答えられぬうちは、孔雀神よ、まだおれの負けとはいい切れぬぞ…」享楽と頽廃と美と神と。作品に流れる雰囲気が好きすぎる。エピグラフはプリニウス「博物誌」より、「余は玉ねぎの崇拝されている東方の一地方を見た」
「マドンナの真珠」三作品の中では一番不思議な作品だった。固い鉄の感じの赤道を歩いていく二人っていうのがインパクトが強くて、幽霊船で云々の前半を塗り替えられる笑。エピグラフはワグナア「トリスタントイゾルデ」より、「おお疾風よ!、この夢みる海原の惰眠を揺り醒ませ!」とイゾルデの台詞でした。このエピグラフ最初に見て、テンションが爆上がりしました。
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犬狼都市(キュノポリス) 澁澤龍彦
ついに足を踏み入れた!!
澁澤龍彦ワールドだぁ!ヽ(*゚∀゚*)ノ
何という想像力……(ღ*ˇ ˇ*)。o♡
美しい表現でも、している事はとてもグロテスク。
とても好きな世界観(º﹃º )♡
【犬狼都市(キュノポリス)】
生物学博士の娘、麗子はアメリカ狼(コヨーテ)であるファキイルに、深い愛情を抱いている。
婚約者との結婚を控えるも、男勝りに野鳥を撃ち落とす姿は父親を困惑させる。
ある夜、婚約指輪を嵌め床についた麗子は、ファキイルと共にダイヤモンドの中に囚われる夢を見る——。
ファキイルの焔の剣に笑ってしまった笑笑
相手が獣というだけで、基本的には幻想的な純愛物語。
ファキイルが『犬狼都市』や先祖の話を、ダイヤの中で語る描写が2人の間に流れる理想的な空気感を創造させる。幸せなひとときだっただろうなぁ。
ファキイルが人間だったとしたらどうだろう。
それでも充分幻想的な話ではないか!と思った。
【陽物神譚】
ローマ帝国の23代皇帝であるセウェルス朝、ヘリオガバルスを題材にした小説。
ヘリオガバルスは『孔雀神』を信仰している。
孔雀神はバクトリアの翠緑玉を嵌め込んだ丸い魚の眼と、尖った紅い嘴と、めもあやな玉虫色に輝く蛇紋の尾羽根と、豊麗な女の乳房をもつ生殖神で、その二つの乳房は左側が昼を宰領し、右側が夜を宰領する。右の乳房は殺人と男色を禁止し、左の乳房は自殺と異性の交媾を禁止する。(本文より)
ヘリオガバルスには異常な性癖を持ち、女装癖がある。
美貌の彼は、現代でいうトランスジェンダーであったと言われているらしい。(Wiki)
陽物を玉ねぎと例えているところが何と申して良いのやら…面白い笑
玉ねぎの彫刻を彫るって(^▽^;)
陽物=玉ねぎ=神。
【マドンナの真珠】
航海中の船に、3人の女が連れ去られてきた。
彼女達は服を脱がされ、部屋に閉じ込められる。
船員達は女の他に1人の赤ん坊がいる事を知り、殺すべきか育てるべきかを話し合う。
この話が1番好きです♡
3人の船員達は、全員どこかかへん。
生身の人間と違い、通常の人間のいとなみをするふりをする。
船員達同志のやりとりや、過去の話もおもしろいが、成長した赤ん坊の存在が及ぼす影響が独特の視点だ。
そこ?!とツッコミたくなる笑
なんといっても、ラストがいい。好き♡
澁澤龍彦作品は他に『快楽主義の哲学』と『高丘親王航海記《たかおかしんのうこうかいき》』を購入したので楽しみです(^-^)
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奇書だね。
犬狼都市…愛してやまない主人公の狼と一緒に指輪の中に取り込まれる夢を見る。その夢、その後の結末にもびっくりした。
陽物神譚…これはギャグと思って良いの…?
マドンナの真珠…いやいや、これもギャグ?でもこんなふうに育てられてらそう思ってしまうんだろうなあ。
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澁澤龍彦の初期短編集ということで、彼の小説で卒論を書いていた、大学在学中に読みました。3つの物語が収録されているけれど、やっぱり最も衝撃を受けたのは「犬狼都市」、これが本当に好きだった。序盤に麗子が裸で表に横たわり、コヨーテのファキイルを抱きしめている場面、強烈すぎて忘れられない。どの短編も、澁澤のエロティシズム全開という感じがします。彼の好きなものも色々詰め込まれていて、文章も筋も整いすぎず、ちょっと混沌としているのがよい。