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窓を覗く、檸檬を握る。私も彼と一緒のようなことを人生でやったことがある。でも彼のようには感じなかった。注視すべき一つの体験として自分のなかに刻まれなかった。ここに小説家とそれ以外の人間の差があるのかもしれないなと思った。
ひんやりとしたのものや清浄なものが熱病に冒されていた彼に与えた安らぎ。幼い頃、喘息を患っていた私にもわかるような気がした。
また本書とは関係ないのだが、寺田農氏による「檸檬」や「ある崖上の感情」の朗読が素晴らしいので、聞いてみてはいかがだろうか。
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のっけから主語を広げるが、多分カフカやカミュを持ち出さなくとも誰もが生きていることに不安を抱えている。むろん、その不安を純度を高めて文章化したところにカフカたちの誠実さがある。梶井基次郎もまたそうした、「えたいのしれない不吉な」不安を抱えなければならず、その不安を愚直に見つめ孤独の中で書き続けたのだと思う。私自身なぜ自分が今死なないのかとまで思い詰めた状況で読んだせいか、彼の言葉が沁みて感じられた。意外とフェルナンド・ペソア『不安の書』の隣にこの本を置くこともできなくもないかなと思う(私はそういう読者だ)
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理不尽な病に生涯に渡って苦しめられるその惨めさこそ小説の本質であり、自分の運命と必死に格闘した梶井にとっては小説を書くしか生きる道がなかったのだと思う。