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紙の本

1970年代の名著に今を改めて見る。

2010/08/16 12:56

8人中、8人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:空蝉 - この投稿者のレビュー一覧を見る

スペインを知るのに読みやすい本はないか?
スペインに造詣が深い知り合いに尋ねたところ堀田氏の評伝『ゴヤ』を勧められた。
もともとゴヤの絵をそれほど好きではなかったに加え4冊という大長編、二の足を踏んでしまった私は代わりに同著者の、もっと薄く持ち運びしやすい文庫でページ数の少ない本・・・すなわち本書『スペインの沈黙』から入ることにした。 が、どうやらこの選択は間違いではなかったらしい。
本書はスペインの紀行文であり、国とその歴史の紹介文であり、かの地に長期滞在した著者自身のエッセイである。共和制やらフランコ独裁政治云々、キリスト教を始め多宗教と人種の闘争劇、貴族に軍に平民農民貧富の差・・・そうしたある程度の歴史的知識を必要とする部分はあるけれども、スペインという国を知るには、いや、一つの国を知ろうとするにはそれは避けられないパーツである。
だから、できることなら簡単な教科書か辞書でも片手に本書を読んでほしい。
フランコ?共和制?なにそれ? 
それすら知らずに読んでしまっては、あまりにもったいない指南書だからである。

本書は最初のインタビュー記事を別にすれば大きく3つにわかれている。
まず1977年からスペインに長期滞在した一人のゴヤ中毒作家による紀行文と案内文である。(スペイン便り)
1930年代の悲惨な内乱とその後40年続いたフランコ独裁政治を乗り越えようやく民主化の道を歩み進める複雑な国スペインを、民衆、ピカソのゲルニカ、階層、貧富など様々な観点から物語る。

次は著者の心血を注いだ評伝『ゴヤ』の前後と執筆中に書いたもの。(グラナダ暮らし) 
大画家ゴヤが著者にどれほどの影響を与えたか、そしてゴヤがいかにスペインを具象化した「怪物」であるかがある意味主観的に描かれている。

そして最後に「歴史について」。
中でも「世界・世の中・世間」の章はスペインの歴史から翻って現代日本にその矮小な世界観のほどを痛烈に指摘する。

少し長くなるが引用したい。
「しかし世界もまた世の中であり、世間であるにすぎぬと覚悟出来るためには、一つの必須の要件があると思われる。それは、自国の歴史を徹底的によく知ること、また相手国の歴史をも~より一層に深く広く知ること、である。」
「文化、文明に生粋なものなどはありえないのである。~歴史についての知が肉眼の裏打ちとなってくれたら、違和感のあるものについての、その違和の根源にあるところのものについて納得が行く筈である。」

つまり己も知らず他も知らず、その国を文化を培ってきた長い歴史を知らずにうわべだけを見て知ったかぶりをしている日本人には、何一つ歴史に裏打ちされたホンモノを知ることはできないということだろう。
続く著者の言葉が痛烈につきささる。
「それでは、世界は世の中にも世間にもならず、それは人生にすらなってくれない」

これが描かれたのが1970年代。日本は経済的にも商業的にも海外に対して「集中豪雨的進出」を続けていた。
情報が商品化され経済・資本優先となりつつある当時の日本をして、著者は日本の歴史の実体(彼はこれを生活感の充足、充実と置き換えている)がそれらに制御作用を働かせない限り廃墟化する危惧を呈している。

2010年、そのころから40年たった今にして思えば、まさしくそれはバブル崩壊と100年に一度と言われる大不況、それにあっさりゆさぶられる国民の生活観の推移である。
歴史にも何にも裏打ちされることなき空虚な日本という国は、アメリカ(ドル)をはじめとする外の波に対して、あまりにもひ弱である。 
日本にだって歴史はある、素晴らしい文化もある。
しかし、いったい日本文明なるものは、あるのだろうか?

スペインの過酷な歴史、怪物ゴヤ、国民の歴史と現代の姿がたっぷりと描かれ、むろんそれだけでも十分な読み物である。
しかし最後。それらすべてが日本の現状に痛烈なひと突きを与えていることに感服した。

著者が危惧した20世紀の世紀末をも過ぎ、いま21世紀を生きる日本人はどう生きるか?日本の歴史の実体・・・生活館の充足、充実はどれほど守られているのか?
答えは現状を見れば明らかである。

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2013/08/25 19:25

投稿元:ブクログ

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