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紙の本
不遇な少女のサクセス・ストーリー前編
2005/09/29 10:30
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:銀の皿 - この投稿者のレビュー一覧を見る
竜と生きる人々の中世的な世界を描いたSFファンタジーシリーズの4巻目。4,5,6巻は1,2,3巻のと重なる時間を、少し立場の異なる人の目線で描いていきます。1,2,3がアダルト版というなら、4,5,6はジュブナイル版として出版されました。しかし、すっきりとまとまって大人にも充分楽しい。同じ登場人物、おなじ出来事が違う角度から描かれているので、読めばこの巻の主題だけでなく、1,2,3の世界に厚みを加えてくれる面白さも味わえます。作者は上手ですね。
この巻「竜の歌」は、2巻「竜の探索」にほぼ重なった時間を描きます。竜と共に戦う竜騎士と言う猛々しいものが中心だった前者とは違い、こちらは庶民が中心。主人公は漁師の子として育った「不遇な」少女です。「男には認められるが、女には許されない」ものがある、という状況は現代でもまだ引きずっている問題ですね。その少女が認められていくまで、のサクセス・ストーリーでしょうか。これでもか、というぐらい理不尽な親ですが、それもジュブナイルという設定上、極端に描かれてしまったのでしょう。この少女は3巻でも登場、それぞれの中での描かれ方を比較してみてみるのも楽しいです。
竜が飛び回り、大いに戦うという場面はあまりなく、小型版の竜、火蜥蜴が普通の人間の「かしこいペット」として飛び回ることが多くなる4,5,6巻です。
カバーのイラストが日本の方の手に変わっているのは、原作本のイメージが合わなかったのかもしれませんね。柔らかな歌声の聞こえてきそうなこの絵の方が私は好きです。
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