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めちゃくちゃ分厚いです。
「父の詫び状」「眠る盃」「無名仮名人名簿」
が読めます。
分厚いですが、ひとつひとつがすぐに読めるので、私は少しずつ読み進めて、良い時間を過ごすことができました。
読んでいるうちに「ああ、向田邦子でもこうなんだから、私なんてこれ以上にダメダメで当たり前だ」と思うこともあれば、背筋をしゃんとしないと読んではいけないような気分になることもあります。
ただどれを読んでいても等しく感じるのは、生きていく上でも、生活しているニンゲンとしても、この人のように自分の身体や頭を使って感じたり考えることに億劫になってはいけないのだな、ということです。
今、生きていたら。
向田邦子はこの日本になんて言っただろう。
優しく私たちを包むように見えて、思い切り辛辣な言葉を投げかけるような気がして仕方が無い。
こっそりと怖い。
冷徹なまなざしがある。
それはあきらめ、ではないけれど、それはこの人が「向田邦子」という器の大きさを自分にしっかり分かろうと刻み付けていたからだと思う。
だからこの人は不必要に私たちを応援しないだろう。
誠実な人なのだ。
嘘っぽい、かりかりの言葉なんてつかわないだろう。
そして私たちが自分で自分を律していくことしか生きる道はないことを身をもって示すのだと思う。
本人は、示すなんて思うことはないだろうけど。
「父の詫び状」の頃は穏やかで、「眠る盃」の頃は少しとげがある。
何かあったのかな。
「父の詫び状」の頃、なんとなく彼女が幸福な恋愛をしていたようなきがするし、その後何かがあったような気がして仕方が無い。
この人の心の温度のようなものを、私は勝手に感じた。
向田邦子に今、出会えて良かったと思う。
全集、全制覇したいな。