紙の本
絶品短編集
2002/07/30 18:12
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:boogie - この投稿者のレビュー一覧を見る
文豪泉鏡花の短編を集めた短編集。
表紙には「現実界を超え、非在と実在が交錯しあう幻視の空間を現出させる鏡花の文学。その文章にひそむ魔力は、短編においてこそ、凝集したきらめきを放ってあざやかに顕現する」とあり、まさにその言葉に沿った名編が選ばれている。
以下、特に心に残ったもの。
「竜潭譚」
おさなごが山で出会った怪異・異界・異人を描いた作品。
擬古文で書かれた文章はさすが鏡花、とても格調高い。現実と幻想が入り混じった描写は夢にも似て妖しい魅力を持っている。
「薬草取」
薬草を探す登山の途中で出会った女性に過去を語り聞かせることになり……。
ラストは感嘆の声が出るほど美しい。
「貝の穴に河童のいる事」
不気味な妖怪が、しかし愛嬌のある姿で人間を驚かせる。滑稽でありながらも翳があり、どこか祭りのあとの寂しさのようなものを感じる。
もちろん他の短編も絶品。
紙の本
ここにも登場する妖艶な女
2023/06/01 10:45
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ふみちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
この作者の本を読むのは「高野聖・眉かくしの霊」「草迷宮」「外科室・海城発電」(いずれも岩波文庫)についで4冊目、「龍潭譚」は初期の作品だから文語体で書かれていて少々難儀なのだが話の筋が面白い、いつもの鏡花ワールドなので楽しめる、この作品の初出が明治29年で、私が大好きな「高野聖」が明治31年、この短篇に登場する母親に似た女に高野聖の女を見た、寂しい山間の村に住む寂しい女はこの作品の2年後に生き返ったのだ、「二、三羽-十二、三羽」という話も印象に残る、主人公が雀をなんとなく眺めているうちに亡くなった祖母の雀に纏わる逸話を思い出す、ほのぼのとしたストーリー、しかし相手は、あの鏡花、きっと何か起こるぞとびくつく、最後まで静か、でも、その終わり方がやっぱり私には怖かった
投稿元:
レビューを見る
存在と非存在の境が曖昧になる。そんな鏡花の世界。
何気ない日常の隣にある非日常。
この人の文章はとても好きです。
投稿元:
レビューを見る
短編小説だったりエッセイ風だったり紀行文だったり。でもやっぱり美しい女人・小動物への愛・奇妙な妖怪達・目を覚ませば忘れてしまう、夢のような経験――鏡花を構成する宝玉のようなそれらが、この短編集にちりばめられているんだぜ。龍潭譚よりは薬草取が好きだったなあ。貝の穴に河童のいる事、は河童の語尾が「〜でしゅ」なのが可愛かった。
投稿元:
レビューを見る
余韻の残る「竜潭譚」、幻惑的なラストの「薬草取」は素晴らしいですが、
それ以外は他の鏡花作品ほどの魅力は感じませんでした。
「国貞えがく」は新潮文庫の方で既読。岩波は解説が的を得ていると思います。
投稿元:
レビューを見る
文句のつけようのない短篇集。
この作品は現在読んだって一切
目劣りしないのです。
神秘的さも長編と変わらず健在です。
お勧めは雀のお話の
「二、三羽…」や河童が出てくる「貝の穴に…」
あたり。
空想生物が出てきても違和感がないのは
不思議なものです。
長編よりも短い分
まとまっていて面白かったです。
投稿元:
レビューを見る
時は明治。文明開化はしたものの欧化したのはまだ一部。自然は多く残り夜の闇は深い。現世と異界は黄昏時になると溶け合い混ざり合って此方の人間が彼方に引き込まれ、彼方のモノが此方に這い出てくる。句読点はあるのにつらつらと続いてるかのような文体は読んでるうちに自分まで彼方へと拐かされるかのよう。妖しくも美しい女性が出て来る「竜潭譚」「国貞えがく」が良かった。言葉自体も美しい。日本語の美しさを再発見した。
投稿元:
レビューを見る
【新歓企画】ブックリスト:「大学1年生のときに読んでおきたい本たち」
鏡花を読んでいない人は一番有名だと思われる「高野聖」から入るのも良いですが、やっぱり変な人なので変なところから入りたい人がいるでしょうが、他岩波で出ている変な本というと「海城発電」とかが入っているのがあって、そこから入ろうとすると根気だかが相当強くないとどうしても挫折してしまうことは必至、そこで紹介したいのがこちらの本で、「高野聖」風味の「竜潭譚」であるとか、これも幻想的な「薬草取」、鏡花の筆が奮いに奮っている「雛がたり」などなど小説から紀行文まで揃えてある中々良くできた短篇集だと思います。【S.Y.】
投稿元:
レビューを見る
すずめの話が本当に良くて、こっちもふっくらしてくる。今の小説よりこの頃以前の小説の擬音の方が珍妙でピンと来るのは気のせい?今のは定例が確立されすぎて、新しい擬音を使うなんて一般の人々(意識的な物書き以外)は思いもよらない。他は薬草取りと国貞えがくは他に好き。鏡花は妖しいイメージが強いけど、夫婦の紀行の話とか、すずめとか国貞えがくの織坊のとか、あったかいところも魅力。
投稿元:
レビューを見る
ブログに書いた
http://dayinthelife.at.webry.info/201203/article_2.html
投稿元:
レビューを見る
とにもかくにも優美で華麗、絢爛豪華な文章。格調高く古典的ながらドラマティックで現代的。戯作的怪奇譚でありながら上品で美しい幻想小説。解説もオススメ。
投稿元:
レビューを見る
小説だけでなく、エッセイのようなものも収められていた。ほとんどが古めかしい日本の怪異の話である。それら短編のなかで、自分はとりわけ薬草とりが好きだった。
投稿元:
レビューを見る
鏡花の本を読んでいると、この世とあの世の境目の「美しくも妖しい幻覚」のようなものを見ているような気がする。
幻想的なだけではない。気を許すと異世界に引きずりこまれてしまうような、そういう空恐ろしいほどの美がある。
この短編集の白眉は「雛語り」である。
きらびやかで華やかな雛たちが、鏡花の魔法の掌から流れ出でる。鏡花は言葉の贅をつくし、読み手を幻惑させる。
雛 夫婦雛は言うもさらなり。桜雛、柳雛、花菜の雛、桃の花雛、白と緋と、紫の色の菫雛・・・。
鏡花の文章は、桜や紅葉を混ぜた美しい錦絵や繊細優美な螺鈿細工を思わせる。
また、この短編の「貝の穴に河童のいる事」も面白い。
なんともけったいな河童が主人公である。鏡花は妖怪というか「人にあらざる」異界の住人を好んで描く。時として、生身の人間より生き生きとして魅力的である。
また、登場する姫神も物語全編を照らし尽くすかのように艶やかでコケティシュな魅力に富んでいる。
(夜叉が池、天守物語、多神教などの作品を鑑みても、美の化身としての姫神たちの存在は突出している。)
非現実という異界のベールを纏う時、登場人物たちは底知れぬ魔力を発揮する。その妖しい世界に翻弄されるのも心地の良いものである。
投稿元:
レビューを見る
泉鏡花の本はこれで3冊目。
鏡花の書く物語は妖しい魅惑に満ちていると改めて感じました。
文章そのものも美しく、うっかりしていると、その言葉の渦の中に吸い込まれてしまいそう・・・
解説にも「鏡花の文章には魔力がひそんでいる」とありましたが、まさにその通りだなと。
個人的には妖しいけれども優しくもある妖異が登場する『竜潭譚』と日常を書いたエッセイ風でありながら、意外な方向に展開していく『二、三羽ー十二、三羽』が好きかな♪
投稿元:
レビューを見る
情の深さ強さを思う本。怪異、と、現在では一括りに呼ばれかねないものへの尊敬がよく表れている作品集。愛すべき一冊。