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紙の本

発生学の歴史を通して生物進化における異時性の意義を論じた名著

2002/05/21 19:01

3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:三中信宏 - この投稿者のレビュー一覧を見る

 本書は,発生と進化の関係を生物学的かつ生物学史的に切り込んだ勇敢な著作である.生物の進化は,受精卵にはじまる生物個体の発生過程(個体発生)と地球上の生命の連続性と多様性を生みだした祖先子孫の歴史(系統発生)との関わりの中で営まれてきた.では,個体発生は系統発生と因果的にどのように関係づけられるのか.この問題は,発生学と進化学にまたがる難問として立ちはだかってきた.

 19世紀のカール・エルンスト・フォン・ベアやエルンスト・ヘッケルに代表される生物学者たちは,生物進化の枠組みへの態度こそひとそれぞれだったが,個体発生と系統発生の関係に対して等しく多大な関心を寄せてきた.しかし,20世紀初頭の実験発生学の擡頭とともに,進化学的あるいは系統学的なアプローチは表舞台からいったんは退いた.実証的でない進化学や系統学に対する批判がこの時期に強まったからである.それでも,発生と系統との関係は進化発生学の「伏流」として,その流れは現在にいたるまで途絶えることがなかった.

 著者は,本書前半の第1部「反復説」では,幅広い生物学史の知見をふまえて,発生学の歴史を振り返り,進化思想がしだいに浸透するとともに,個体発生が系統発生の文脈でどのように捉えなおされていったのかを追究する.ヘッケルが1866年に提唱した「個体発生は系統発生を繰り返す」という反復説のルーツとその波及効果を著者は執拗に探る.続く第2部「異時性と幼形進化」では,個体発生過程の進化的変容を異時性(ヘテロクロニー)の観点から整理し,生態学における生活史戦略理論(r,K戦略)に則って,適応戦略としての異時性の系統発生を論じる.

 本書が出版されてからすでに四半世紀が過ぎ,異時性と生活史戦略とを直結させた第2部の内容そのものはすでに時代遅れとなっている点は否定できない.むしろ,最近の進化発生生物学(Evo-Devo)の急速な勃興とともに,個体発生と系統発生の歴史的に深い関わりを論じた第1部の科学史的内容がいまなお参照され続けているという事実は,本書の価値が永続的であることを証明している.

 エッセイストとして著名なグールドであるが,本書のようながっちりした本にも彼独自の持ち味がそこかしこに見られる.肺癌で惜しまれつつ亡くなったいま,後に残された読者は,彼の残した〈古典〉を再びひもとくことで,失われたものの大きさを痛いほど感じるにちがいない.

(三中信宏/農業環境技術研究所主任研究官)



■スティーブン・ジェイ・グールド氏が5月20日急逝されました。ご冥福をお祈りいたします。(bk1)
■追悼・スティーブン・ジェイ・グールドはこちら

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