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本書は『行動学入門』『おわりの美学』『革命としての陽明学』の三部構成になっていますが、各部独立した内容です。
行動学入門というタイトルですが、学問というよりは著者の思った事や感じた事を述べているだけなので微妙でした。
感想としては、やはり戦後という時代から、死の意識が肉体にばかり向けられているんだなと。それが現在にまで受け継がれているんだな~と。それはつまり、宗教の衰退と、平均寿命の長さが関わっていると思います。霊的存在を伝える媒体や機会が少なくなっている、そして自身の寿命の長さがますます肉体に固執する……。
身近で「死」を感じることが少なくなっているんですよね。
『おわりの美学』では、離婚のおわりや童貞のおわりなど、やや突飛なものもありますが、とりたてて面白いと感じたものはありませんでした。総評として僕の評価はBにします。
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「行動」の持つ意義についての短い考察数編からなる「行動学入門」の他に、「終わりの美学」、「革命哲学としての陽明学」を収めた本。この本を読むことで、氏の作品の中に流れる思想のようなものの一部が垣間見える気がする。
氏が愛した、瞬間に消える「行動」の美しさは能楽、茶道、歌舞伎に始まり切腹、放火、破壊、へと広がっていき、それは最終的に、流れる時間を切り取って永遠のものとすることを試みる文学との相克に繋がっていったのではないだろうか。
三島由紀夫の深遠な思索の一端に触れることが出来る一冊。
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初参加でしたが、いろいろなジャンルの本が紹介されたので、視野が広がった感じです。
皆様ありがとうございました。
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陽明学の知行合一(本当の知とは実践をともなわなければならないということ)という考え方は、普段の氏の考え方の根本を為しているように思えた。また金閣寺はこの考え方を表現した作品だったのではないだろうか。全体的に他の作品に比べて物足りなさを感じた。
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三島由紀夫の作品は、ホンマ難しい!何度も諦めようかと思ったくらい・・・ただ、この本はホンマちゃんと読んで良かったと思うし、何度もちゃんと読み返す必要がありそうです。
世間一般的には三島由紀夫は右翼思想の人間として捉えられがちですが、この『行動学入門』で描いている三島の日本人像は、まさに今の「日本人」や「日本人の行動の規範」を作り上げている根源を述べているように感じる。
ニヒリズムなのは三島の特徴ではあるが、それ以上に文章の表現自体が機知に富む表現が多くクスっとなる。ホンマに文章上手いなーって感じます。
そして、内容が深く、実に濃い。
また読み返そう。
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異なる媒体向けに執筆されたエッセイが纏められています。
男性誌向けの「行動学入門」
女性誌向けの「おわりの美学」
オピニオン雑誌向けの「革命哲学としての陽明学」
彼の行動哲学が、別々のアプローチで描かれていると言っていいでしょう。
断然読み易いのは、おわりの美学。
最も日常生活に落とし込んだ短編であり、信じられないくらい平易で読み易いです。
「童貞のおわり」では、“おわり”は繰り返されるだけで永久に終わらない。
という、なんとも都合がいいような、しかし、三島の死生観にも直結するような論理が登場します。
また「個性のおわり」では、個性という逃げ道を、若いうちから作る真似はするなと説きます。
どんな内容にも、行動者としての規範がベースにあるので、一貫した主張を感じ取ることが出来ます。
かくあるべき美学を確立している氏から見れば、日常はなんとも醜いもんですね(笑)
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Ⅰ行動学入門
行動は迅速であり、思索的な仕事、芸術的な仕事には非常に長い時間がかかる。しかし生はある意味では長い時間がかかり、死は瞬間的に終るのに、人々はどっちを重んじるのだろうか。
待機は、行動における「機」というものと深くつながっている。機とは煮詰まることであり、最高の有効性を発揮することであり、そこにこそ賭けの本当の姿が形をあらわす。賭けとは全身全霊の行為であるが、百万円持っていた人間が、百万円を賭け切るときにしか、賭けの真価はあらわれない。なしくずしに賭けていったのでは、賭けではない。その全身をかけに賭けた瞬間のためには、機が熟し、行動と意志が最高度にまで煮詰められねばならない。そこまでいくと行動とは、ほとんど忍耐の別語である。
行動における計画は、合理性の極致を常に詰めた上で、ある非合理的な力で突破されなければならないというところに行動の本質があるのではないか。しかも、そこでいつも働くのは偶然・偶発性の神秘な働きである。
Ⅱおわりの美学
先生たちも何割か、学生時代のまま頭がヘンな人たちがそろっていて、こういう先生は学生たちとよくウマが合う。何千人という人間のいる学校のなかで、ほんの何人かの先生がこの秘密を知っていて、この秘密を決して洩らさぬように学校経営をやってゆく。いまさら東大生の何割かが精神病だなどと発表されて、おどろくことは何もありません。
個性とは何か?
弱味を知り、これを強みに転じる居直りです。鼻が大きすぎたら、世間をして「花が大きいほど魅力的だ」と言わせるまで、戦いに戦い抜くことです。整形美容の病院へ飛び込んだりするのは、個性のない人間のやることとして、恥ずかしいうしろめたいことと思われている。
「仕事がすんだ朝は、男なんか要らないという感じだ」
というのが印象にのこっている。男の作家なら、「女なんか要らない」と言い直すべきだろうが、「セックスなんか要らない」というのは、人生よほどの充実感というべきで、人間は九割九分まで満たされていても、あとの一分でセックスのたのしみを追う動物だからです。
ところで人間にも、自然に近い人間と、自然から遠い人間がある。悪いとわかっていながらやめられない、という人は前者であり、悪いとわかっていることは絶対に意志の力でやめる、という人は後者です。だいたい全人類の九十九パーセントが前者で、のこりの一パーセントが後者だと思ってまちがいがありますまい。
Ⅲ革命哲学としての陽明学
大塩平八郎はその非常な意志力と行動の決断力において、一学派を立てたほどの学者らしくもなかった。かれは東大の教授とはもっとも遠いタイプの学者であった。
「身の死するを恨まず、心の死するを恨む」
「山中の賊を敗るは易く、心中の賊を敗るは難し」
あとがき
もしこの三つのエッセイの共通点を、強引に引き出すとすれば、「何かによってしか証明されないものを、別の不適当な方法、すなわち言語手段によって証明しようとしたもの」と概括されるであろう。
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第三章の「革命哲学としての陽明学」を読みたくて買った。申し訳ないが一章、二章は軽く読み飛ばさせてもらった。三島の陽明学には偏りがある、知行合一という事にこだわり過ぎている。三島のとった行動が到良知だったのかを考える必要がある。
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これは三島の中でも名著だと思う。小説での三島がとっつきにくい人にはオススメ。人が行動を起こすまでの思考や目的意識、そのあり方を鋭い視点と多彩な表現を駆使して書かれている。
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革命哲学としての陽明学は難しかったが、調べながら読んだらとても奥深く、三島の真意が汲み取れる部分が多分に有った。
終わりの美学は読みやすく面白い
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I 行動学入門、II おわりの美学、III 革命哲学としての陽明学
の3部構成。
気軽に読めるIIに対し、晩年の三島由紀夫の政治色の濃さが滲み出る。
当時の時代背景を飛び越え、その先見性たるや作者が当時憂いていた通りに現在の日本がなってしまっていると思えてならない。あとがきが昭和45年となっており、かの三島事件の直前に書かれたもの。
頭脳明晰であるが故、他の人には分からない将来についていろんなものが鋭く見えてしまう分、その憂い、危機感が大きかったんだろうと思う。もう少し三島由紀夫を勉強してみたい。
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三島氏の文章は毎度のこと読みにくいんですけれども、これは著者があとがきにも述べていたように「軽い読み物」に分類される著作だと思います! ですので、割かし読みやすかったです…内容もあんまし色あせているとは思いませんでしたし、現代にも通用すると思います!
ヽ(・ω・)/ズコー
まあ、そんなわけでこのエッセイが書かれた時代よりさらに「頭でっかち」になっていると思われる現代にこの書物は打ってつけなんじゃないでしょうか…
ま、あらゆる情報で頭ん中を埋め尽くして身動き取れない…みたいなことにならないように、何事も行動が肝心ということで…さよなラーメン。
ヽ(・ω・)/ズコー
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学校とは、だれしも少し気のヘンになる思春期の精神病院なのです。これは実に巧みに運営されていて入院患者(学生)たちには、決して「私は頭がヘンだ」などとは気づかせない仕組みになっている。試験とは、この頭がヘンな連中に「私は正気だ」と確信させるための手続きであって、答案を書けば自分は正気だという安心をいだける仕組みになっている。学校では完全な羞恥心の欠如がゆるされる。本当の卒業とは、「学校時代の私は頭がヘンだったんだ」と気がつくことです。「大学をでたから私はインテリだ」と思っている人はいまだに頭がヘンなのであり、学校は一向に終わっていないのだというほかありません。
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〈われわれの肉体的行動は、男である以上戦いなしにはあり得ない〉
三島由紀夫が全力でエッセイ書いたらこうなった。マッチョすぎる。心臓に毛が生えてる。
Ⅰ 行動学入門
Ⅱ おわりの美学
Ⅲ 革命哲学としての陽明学
正直Ⅲは難しくて分からなかった。出直します。
Ⅱ おわりの美学 が傑作で、結婚、見合い、流行、仕事をバッサバッサと終わらせまくります。
童貞学校ってなんだよ……。
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明るい時の三島由紀夫・・・好きだー!読んでいて、なんだか興奮してくる感じが面白かった表題のエッセイ「行動学入門」も好きだけど「おわりの美学」が個人的には好きだった。文章の硬さと内容の軽さのバランスがちょうどよかった。