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相変わらず司馬遼太郎独特の語りは読んでいて気持ち良い。徳川慶喜といえば鳥羽伏見の戦いで自軍を捨てた将軍とあまり良い印象をもっていなかったが、本書をよんでその印象が180度変わった。今の時代、過去の激変期を生きた為政者の本からは得るものが多い。
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燃えよ剣の侍側からは逃げ回ったように見えた慶喜だが、逃げに徹する理由が分かった。
幕府が倒れると分かっていながら無理やり将軍に押し立てられ、朝敵と見なされるという、時代の流れの1番の被害者だと思う。
徳川家の重要な人物でありながら洋風文化を好み、豚を食べる。
こういった枠にとらわれない所に好感を持った。
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この歴史小説は、同氏「司馬遼太郎」氏の目線で、江戸幕府第15代将軍「徳川慶喜」の数奇な一生が書かれています。それは、御三家でもあり講釈でも言われている「副将軍」(但しこの官職は、江戸幕府にはない。)や江戸在府から、同じ、八代将軍の徳川吉宗の子供と孫からの出目の御三卿に入ったなどや、幕府の終焉後も書かれています。
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単語の意味を調べつつつの読書は久しぶり。幕末は有名人がたくさん出てくるのでおもしろい。これを原作とした大河ドラマがやってたのはいつ頃だったか…それを見て以来の徳川慶喜。優秀で変人。歴史に名を残すような人が凡人であるはずがないけど、歴史上の人物も普通の「人」なのだなぁと思った。そして彼が亡くなったのは大正に入ってからなので、明治42年生まれのわたしの亡くなった父方の祖父は同じ時代に生きてたのだと思うとちょっと興奮する。
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慶喜といえば、鳥羽伏見の戦いののちの不可解な江戸落ちですが、作者が出した答えは、宮家には逆らえない、のようですね。慶喜がもし戦いを放棄せずに陣頭に立った場合を考えると大きな歴史の分岐点がこの人物にゆだねられていたとみるべきでしょう。
慶喜は相当な切れ者だったのだと、本書で改めて認識できました。他の幕末志士小説ではあまり慶喜像を描くことは少なく、貴重な一遍と感じました。
慶喜の闊達な晩年もとても興味深く読むことができました。なんでもよくお出来になる慶喜、結局は自己中なお人柄なのかも。自分を後世に語り継がせたくないが故に足跡を残さないようにしているなどはこの当時の人物らしいところを感じます。
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昔の日本史の教師が語る歴史上の人物のストーリーの出元は司馬遼太郎がほとんどだったと思う。知将徳川慶喜の話も然り。幕府が体制として機能せず崩壊寸前の中、この体勢を終わらせるために彼は将軍職を受ける。開国の考えを近いものにだけ漏らし幕府を終わらせる時の藩主や旗本たちの混乱を避ける策を考えた。しかし幕末は保身に走る保守派と口だけの革新派の争い。信念はないから皆んなすぐ寝返る。鎖国倒幕を謀る長州、開国佐幕で慶喜に近づきながら寝返り大政奉還後も朝敵になるよう策を弄した薩摩。西郷隆盛はやはり慶喜と面識もなく新時代のためには何もしていない。維新後の慶喜は華族になれず薩摩の謀略により朝敵の汚名を着せられる。薩摩人には悪いが薩摩嫌いになる話だ。真の協力者のない中で英断した慶喜は当時33歳。
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久しぶりの司馬作品。
多分、今年の大河ドラマ「青天を衝け」の種本の一つだろうと思える記載多数。
昭和41年出版って、自分が生まれる前の作品だということに驚き。
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司馬遼太郎による徳川幕府最後の将軍徳川慶喜を主人公にした歴史小説。
幼い頃から英傑と評され、周囲の期待とともに育つ。
頭脳明晰で未来が予測できるからこそ諦めが早く、ものわかりがよい。
私が持っていたこれまでの慶喜像通りの内容であり、特に驚きや新たな発見はなかった。
本書を読み、彼は生まれた瞬間から自分の役割を理解し、それを淡々とこなしたのではないかと思った。あまり感情移入できるタイプの人間ではない(=本書ではそのように書かれていない)
慶喜に関連する事柄に話が限定されるので、本書からは幕末のダイナミックさは感じられなかった。
司馬遼太郎の最初の一冊としてはオススメしない。
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司馬遼太郎さん、大河ドラマ好きとしていつかは読まねばならぬと、重い腰をあげてよんでみた1冊。
それなりに読みにくさはあったけれど、なんとか読めた。徳川15代将軍は幕末の脇役として登場するイメージだったので、主人公として半生を語られるのは新鮮だった。
慶喜の意見の二転三転を、全部頭の良い慶喜の計算というふうに描いてたが、ほんとにそうだったのかなぁと疑問が残った。
主人公にも肩入れしすぎず、淡々と色んな出来事を述べていくので、幕末がどんな時代なのか新たな観点で知ることができて良かった。
違う主人公で司馬遼太郎の本読んでみたい。なんにせよ歴史は面白い!
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冷静沈着とはこのこと。
計り知れない絶望的状況の数々に対しての対応。
根本には『自分を1番信じている』為、
決断が早く修正も早い。
なぜ薩摩側にいなかったのか、
なぜ崩壊側の陣営にいるのか、
そこが歴史に濃く残る要因ではあるが、勿体ない。
現代の世界で彼はどんな決断をするのか、
とても興味深い人間に映った。
プロップスではなく、行動、言動で利害関係の仲間を作る能力は絶大であり一種の自己啓発本のような感覚に陥った。
坂本龍馬の存在感も、
知恵だけの提供なのにここまで色が出るのかと脱帽。
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同じ時代を生きた坂本龍馬のような、誰からも愛されるヒーローではない。しかし誰に理解されることなく苛烈な「歴史」を走り切った最後の「将軍」であり、誰よりも聡い「政治家」、慶喜。
あとがきの一節
「徳川慶喜という私のこの対象には、素材そのものがすでに酒精度の高い、ひとを酩酊させるものをもっているがためのように思える。」
これに尽きる。