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紙の本
奇妙な9日間
2000/09/28 08:22
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:コウ - この投稿者のレビュー一覧を見る
主人公の兼村国夫は、40歳。脱サラして翻訳家をしている。三歳年下の妻と二人暮し。歩いて10分程のマンションに仕事場を持っていて平凡な日常を過ごしている。つまり、よくいる平凡な中年である。
主人公はある日、思いつきで東京郊外の高尾山へ登る事にする。そしてそこで黒い箱を持って崖から空に飛び立っていく男を見る。「カタ、カタ、カタ」と音を立てて…。そこから始まる不思議な9日間の物語である。
黒い箱が何であるか。何で空を飛べるのか。わからない。しかし、この小説の本質は、黒い箱の中身ではなくて、その使い方であり、何が出来るのかである。そしてそれを受け入れて、うまく折り合いをつけて生きていくのが人生であると登場人物たちは語っている。
この小説のもう一つの魅力は、作者、阿刀田高の雑学の知識の広さ、話題の豊富さだ。ストーリの邪魔にならないように埋め込まれた会話が面白い。酒の席ででも披露してみたくなる。
全編に渡って奇妙な雰囲気がある。
阿刀田高の初の書き下ろし長編小説である。
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